カフカ自撰小品集 《大人の本棚》

  • みすず書房
3.50
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本棚登録 : 63
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622080800

作品紹介・あらすじ

約20年の作家活動の初期・中期・後期に、カフカ自身によって編まれた三冊の小品集『観察』『田舎医者』『断食芸人』。刊行当時「潔癖きわまるドイツ語散文によって統御された幻想」と形容された作品世界の言葉づかい/息づかいが、透き徹った訳文でよみがえる。

感想・レビュー・書評

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  • 理不尽ながら、だから?笑ってしまう。人間とはそういうものだよなぁ、と感じる。カフカワールドはまた帰ってきたくなる。

  • 『観察』、『田舎医者』、『断食芸人』とカフカ自身が編んだ短編集を一冊にまとめた本。選り抜き版ではないので印象が薄い話もあるが、時系列で作風の変化を追えるところが面白い。今回まとめて短編を読んでみて、戦後のカフカブーム(訳者の吉田さんによると「カフカ論は巨大な山の上にさらに巨大な山を築きつつある」)が分かるような気がした。どの話も不安感を引き起こすし、不安と無縁な現代人なんていないのだ。「なんだか落ち着かない気持ちになっちゃったけどこれはなんだろう」ということなのではないか。

    好みだったのは以下の四作。「断食芸人」の凄みはとてもよい。

    インディアンになりたい
    掟の門前で
    ある学会への報告
    断食芸人

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      カフカは、どの作品も意味深だけど、「掟の門前で」の思わせ振りが、何とも言えず好き。
      カフカは、どの作品も意味深だけど、「掟の門前で」の思わせ振りが、何とも言えず好き。
      2014/04/14
  • 高科書店からでていたカフカの自選短編集『観察』『田舎医者』『断食芸人』を一冊にまとめたもの。当時のあとがきが合間に入っている。
    もとは原書の形に似せて大活字であったそうな。
    見本としてはさまれている大活字の原書と日本語版はたしかに迫力がある。目に文字が飛び込んでくる。高科書店版も見てみたい。

    この三冊はちょうどカフカの初期・中期・後期にあたるものということで、順番に読むと変化が見て取れる。
    終りに近づくにつれてカフカらしい世界になるけれど、初期のしょうもない感じもやっぱりカフカ。
    なにかに似ていると思ったらちょっと太宰治っぽい。
    わけのわからない流れも狂気ゆえのわからなさではなく、けむに巻かれる感じ。
    p60にある訳者の言葉(最初に出版された当時のあとがき)の「カフカ特有のやっさもっさ」ってぴったりの表現だ。

    パソコンで執筆するのが普通の時代になってから、本の厚さが変わったと以前に読んだ。
    手で書く文章とタイプする文章と画面の中でいじれる文章はきっと違う。
    カフカの文章は、読む、口に出して朗読することを意識して書かれたものだという。
    そういうのを知るとちくしょう原語を理解したい!と思う。
    原語の美しさは私にはきっとわからないけど、それに近づけようとしているこの訳の人は好きだ。
    高科書店版のあとがき(?)は、しおりをはさみこむ形式だったそうだ。理由は「よけいな解説が紛失しやすいように」。愛だなあ。


    「小さい女」は何度でも読みたい。“出口”が必要だ。

  • だます側のペテン師を見事手玉にとる事が出来る私。


    温い日常から抜け出す為の意義ある秘策を知っている私。


    居もしない<自分を助けてくれる者>の居場所さえ実は

    知る私。


    何かの拍子にあふれ出た思想を

    さらさらメモに書き記し、タイトルつけてパチンと

    止めた紙切れのような短編集。


    世界で最も価値ある紙切れ。

  • はじめてカフカ読んだ。小さい女、11人の息子たち、突然の散歩がおもしろかった

  • 3時間

  • 文学

  • この本はカフカ的、という概念を捨ててほしいというコンセプトでもって書かれているのであるが、私はもともとカフカを掴み切れていなかった。
    「乗客」の『-彼女が自分自身のことをふしぎだと思って驚いたりしないし、口をとざしたまま、そんなふうなことをなにも言わないのはどうしてだろうか、と。』これを読んで、ああ。カフカは誰の中にもふとよぎる繊細かつ奇妙な感情を文章にすることに成功したひとの一人なのだなと思った。

  • カフカの作品というと"不条理・難解・暗い"と、いつも深刻に捉えられがちです。しかし、カフカ自身、審判の冒頭部を知人に笑いながら読み聞かせたそうだし、『変身』の虫になった主人公と家族の噛み合わないやりとりはまさにコントです。本書は"カフカ的"という偏見から解放された"楽しいカフカ"の小品集です。

    お気に入りはやはり『掟の門前で』。たったの3ページに、人生が凝縮されているような作品で、何度も読み返してしまいます。ほかにも、「ペテン師の正体を暴く」「走り抜けていく二人」「ある学会への報告」「断食芸人」などなど、楽しい驚きに満ちた作品ぞろい。

    現在、手に入りやすいカフカの作品は池内紀さんの翻訳ですが、どうも僕は癖の強い池内訳が苦手で…。そんな僕にとって、うれしい翻訳作品でした。

  •  『変身』で有名なカフカの自選作品集。
     数ページのつたないまでも短くぐわりとくるものからちょっと冗長に感ぜられる作品まで。小粒づくしとでもいいましょうか。

  • 読んだ時の感覚は「夢日記みたい」だと思った。
    現代でいう「ブログ小説(SS)」のテンションなのだ。
    それを一般小説の型で「さあこれぞかのカフカだぞ」と読むと、違和感がある。
    『〈カフカ的〉という難儀な観念を早く脱け出してはいただけないか』
    と訳者は語る。本当にそのコトバのままだった。

    これは、カフカ自身が選んだ短編集。の、ちょっと改正版。
    カフカの意向により文字の大きさなど色々指定があり、一般的には読みにくいものを改訂したんだと思う。冒頭に改正前のサンプルがあった。
    それをみておもったのが、カフカ指示の文字サイズでドイツ語のがいい。
    (それがどんなに読みにくくても、不都合があっても。)
    そういう内容。なにしろ散文ですしおすし。

  • 借本。
    (但し、借りたのはこの本ではなく、高科書店発行の「カフカ自選小作品2」発行1993.5.6の方。この本はこの3冊を1冊にまとめた本なのでこれで登録)
    アニメになった田舎医者が読みたくて借りたけど、どう書いていいやら。
    まず、読んでみるのをおすすめします。
    凄い。

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著者プロフィール

1883年プラハ生まれのユダヤ人。カフカとはチェコ語でカラスの意味。生涯を一役人としてすごし、一部を除きその作品は死後発表された。1924年没。

「2022年 『変身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

フランツ・カフカの作品

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