チェスの話――ツヴァイク短篇選 (大人の本棚)

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制作 : 池内 紀[解説]  辻  関 楠生  内垣 啓一  大久保 和郎 
  • みすず書房 (2011年8月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622080916

チェスの話――ツヴァイク短篇選 (大人の本棚)の感想・レビュー・書評

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  • この間、図書館へ行ったときに見掛けて、

    児玉清さんが大好きだったツヴァイク、
    特にこの「チェスの話」がお気に入りだったと書いてあるのに
    心惹かれて!

    四つのお話がおさめられている。

    「目に見えないコレクション」
    盲目の版画コレクターを骨董品屋が訪ねる話。

    「書痴メンデル」
    あるカフェに一日中居座って、
    本の事なら何でも教えてくれる名物おじさんの話。

    この二編はどちらも戦時中、
    何も疑うことなく、
    好きなものと向き合って
    楽しく暮らしていた人が、

    戦争と言う大義名分のもと、
    その人生が無残に打ち砕かれる運命が描かれる。

    読んでいて、自分も「その他大勢」になって
    暗黙のうちに、この純粋な人を
    押し退けて傷付けた気がして、
    暗澹たる思いに見舞われる。

    「不安」
    ある美しい人妻は、
    若い音楽家との秘密の逢瀬を楽しんでいたが、
    あるとき、その音楽家の元恋人にみつかり、
    強請られるが…

    非常に意外な展開になり、
    そうするとあの時も、あの時も…と
    なんだか余計に恐ろしい気持ちに…

    「チェスの話」
    ナチスの圧政下、
    何もかも取り上げられ軟禁されたオーストリアの名士は
    ある日、一冊の本をなんとか手に入れることが出来た、
    その本はチェスの名人の棋譜の収録であった!

    極限の環境のもと、「自分でいる」と言うことは
    とても難しそうだ。
    (だからこそ、こう言う状態にして
    思いのまま操ろうとするのだろうけれど)

    どのお話も人間が人間にする残酷な行為が
    共通のテーマの様に感じて、

    いつものように「ややや、面白い本を読んだぞ!」と
    なる様な読後感ではないけれど、

    何かあるごとに折々に
    自分の身に起こったことの様に思い出す気がする。

  • 素晴らしい本。時に狂おしく、時にグロテスクになる人間の心理に迫りながら、物語の面白さもダントツ。
    さすが、ツヴァイク。百年近く前に書かれた、こういう本を読むと、今ある有象無象の小説の存在する意義がわからなくなるほど。
    昔はツヴァイクは通俗小説で、学者からは相手にされなかったと解説にあったが、昔の通俗小説はなんと立派であったことか。
    「目に見えないコレクション」「書痴メンデル」も素晴らしいが、表題作は本当に傑作で、本好きでこれを読んでない人はものすごく損をしていると断言できる。
    ああ、本当によかった、と読み終わって時間がたっても思える本は少ないけど、これはそれ。時間があったら何度も読み返したい。
    みすずの本は高価で、これも3000円近いけど、他では読めないから買うべき。

  • ひたすらに文章が、話が面白い。人々の息遣いやきらめきが伝わってくる。引っかかるような部分もない。
    4つ目の「チェスの話」が好き。狂気と時代背景と熱い展開に心が躍った。チェントヴィッツの最後の一言がしみるし、味があるし、切ない。

    時代背景もあわせて考えると面白い。(そうでないとここまで面白くはなさそう。)

  • 閉じ込められた空間で棋譜集を一冊ひたすら繰り返し読んだだけで、世界チャンピオンレベルになれるのかという疑問はさておき、チェスの世界にどっぷり浸れる一冊。

  • 「マリー・アントワネット」は10代の頃からの愛読書で何度も読んだけど、それ以外のツヴァイクは何故か読んだことがなかったなと思い、手に取った。極限状態の中でも人としての尊厳や善意、それ以前に正気を維持できるのか…。さすがでした。

  • 全集読みたい。

  • 四篇収録の短篇集。「目に見えないコレクション」と「書痴メンデル」は再読でしたがやはり良かった。いずれも、戦争で激変する時代に対して、愛書狂がまったく無関心であることの滑稽さと物悲しさとで、心が激しく乱れる。また、表題作「チェスの話」がこれに輪をかけて素晴らしかった。ゲシュタポによって、「無」の状態に追い込まれた人物が、唯一、チェス(の本)だけを与えられ、貪るようにゲエムに打ち込んでいくさまや、チェスのチャンピオンと対峙する展開がとてもスリリングで、興奮しっぱなしでした。傑作である。

  • 2011年頃に読了。最近この話のことをよく思い出すので。監禁されて無為に過ごすうちに自分は何を考えるのだろうか。

  • 何かにとりつかれた人の心の有り様を丹念に描き、それがいつかやりきれない結末を迎える。その様を冷徹に、あるいは諦念をもって描いている。4つの短編いずれも素晴らしいが、特に「不安」の最後の1頁の皮肉な結末には、語りのうまさを感じた。

  • 表題作「チェスの話」はもちろん面白かったが、それよりも底本では表題作だった「目に見えないコレクション」の人情話的なところが好き。芸術の意味や価値といった根源的な部分も考えさせてくれる。

    その他作品を現在の文芸作品として位置づけるならば、チェスはの心理サスペンスドラマだし、不安は自己崩壊していくヤンデレ主人公のレディスコミックだろうし、書痴は見ようによっては愚昧で無責任な大衆の滑稽さを嘲笑する戯画だろう。

    いずれも書かれた時代の状況やそこに存在した現実を十分知っていなければ単なるミステリー小説としか捉えられないし、それではツヴァイクの意思を軽んじることになってしまう。

    「疎外された連中、冷遇された連中、怨恨を抱いた連中の軍団」という、ナチスの私兵について書かれた一節が警句としてとても印象に残った。

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