- Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622081838
作品紹介・あらすじ
生命の芽生えから人生の終章まで、ひとのこころの歩みを、その一歩一歩をたしかめるように、丁寧にたどっていく。人生への愛情と洞察にみちた静かな言葉の数々。悩み、迷う人々のかけがえのない人生の書となるだろう。新資料として、著者が第一子の乳幼児期に丹念に記した「育児日記」を収録。
感想・レビュー・書評
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難しい内容のはずなのに、実に易しく書かれている。もしかして途中で諦めてしまうのでは…と言う思いは杞憂に終わり最後まで興味深く読み進められた。あらためて生きてきた人生を振り返りやがてやって来る死をも意識しながら…。まさに私達はこころの旅をしている。宗教家の書かれた物とも違う精神科医ならではの医学に裏付けされた点は大きいなと感じた。
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精神医学を専門とする著者が、「人生とは生きる本人にとって何よりもまずこころの旅なのである。」という認識に立って、人の一生の中のこころの歩みを辿っていく。
一、人生への出発
二、人間らしさの獲得
三、三つ子の魂
四、ホモ・ディスケンス
五、人間性の開花
六、人生本番への関所
七、はたらきざかり
八、人生の秋
九、病について
十、旅の終わり
「育児日記」つき
子育てをしていたら前半部分も読みたかっただろうけれども、今はとりあえず第七章を中心に読んだ。
141p
あまりにも能率よくすらすら生きてしまうよりも、生命をひとこまずつ、手づくりでつくりあげて行くような骨折りを重ねて生きて行くときのほうが、こころのゆたかさというものも現れやすいのだろう。
『遠い朝の本たち』で気になっていたサン=テグジュペリやリンドバーグ夫人の著作が引用されていて驚いた。やっぱり読んでみたいな。 -
大学生のころに始めて読んでから何度この本を読み、何度救われたことでしょう。
子供を産んでから、仕事を始めてから、悩んだときには必ずこの本を読んできました。
読むたびに心に響く言葉があります。私の一生の友です。-
「悩んだときには必ず」
何となく敷居が高くて、手に取り難い本だったのですが(単なる読まず嫌いを隠してるだけです)、、、きっと優しさに満ち溢れ...「悩んだときには必ず」
何となく敷居が高くて、手に取り難い本だったのですが(単なる読まず嫌いを隠してるだけです)、、、きっと優しさに満ち溢れているのでしょうね。。。読んでみようかな、、、2013/08/20
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神谷美恵子著作集は、自伝・日記・ヴァジニア・ウルフの病跡研究以外は、学生時代にほぼ読んでいます。
神谷美恵子の読者は、多少なりとも人生の意味に関心のある方が大半だと思いますが、私も中年になって「俺の人生って何だったのか」、「これまでの生き方でよかったかどうか」を自問し、この本に手がかりを求め再読しました。ところが次のような箇所に出会いました。
「自分の過去についてこそ、エポケー(判断停止)が必要とされているのではなかろうか。……自分の過去の歩みの意味は自分はもとより、他人にもどうしてはっきりとわかることがあろう。その時その時を精一杯に生きてきたなら、自分の一生の意味の判断は人間よりも大きなものの手に委ねよう。こういうひろやかな気持になれれば自分の過去を意味づけようとして、やきもきすることも必要でなくなる」
要するに「まぁ、ええやん(それより今を大切に)」ということでしょうか。
ありがたい「期待外れ」の、しかも深い答をもらった気がしています。 -
神谷美恵子 「 こころの旅 」精神の健康を保つのに役立つ本。老年や死について 名言も多い
「冒険なしの人生はありえない。人生のあらゆる曲がり角に選択という冒険が待ち構えている〜冒険を避ける人はただ萎縮するほかない」
「安らかな老年〜生かされている一日一日を楽しんで〜それまでやりつけた仕事、趣味を自分のテンポで続ける〜愛されることを求めるより 愛することに喜びを感じること」
「20年かけて大人になる人間は 20年かけて死ぬ準備をしてもよい〜生も自然なら 死も自然のものである〜静かに 最後の旅の道のりを歩んでいく」
「充実した生涯を送ったと確信する人ほど 死の不安は少ない〜自己を知ることができた人は 安らぐことができる」
「人間には時折〜野の花のように 素朴に天を仰いで ただ立っている という喜びと安らぎが必要」
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最近、成人になった息子は、「人間性の開花」の時期だろうか、「犯行と憎悪」を感じているようだ。
中年の私は、「働き盛り」から「人生の秋」に向かっている。
老年の父は、「旅の終わり」を過ごしている。
このように人は生まれてから死ぬまで、こころの旅を続けていく。いつの世でも、人はいろいろな悩みを抱えて生きていく。悩みの種類や対処の仕方は人それぞれであるが、悩みや苦しみの無い人生なんてありえないだろう。
この本は、現代(1970年代)の平均的な人の一生での体と心の成長の様子を広い知識と深い洞察で探っている。心の旅の良心的なガイドブックとも言える。何かで悩んだ時に、このような本をゆっくりと読んで視野を広げてほしい。 -
矢倉紀子先生 おすすめ
10【教養】143-K -
このレビューは私の書いた神谷美恵子著作集(3)レビューの続きです。
あまりにも能率よくすらすら生きてしまうよりも、生命をひとこまずつ、手づくりでつくりあげて行くような骨折りを重ねて生きていくときのほうが、こころのゆたかさというものも現れやすいのだろう。(はたらきざかり 人生の旅路なかばに)
老いつつある人間もまた生命あるかぎり、未来にむかって歩んで行かなければ、いたずらに過去をふりかえる、ぐちっぽい、同じことばかり話す存在にしかなりえないだろう。(人生の秋 老いと時間)
人間は青年期いらい、自己を実現することに精一杯の努力をふりしぼって生きてくるが、それはからだの成熟の随伴現象ともいえる。ところが壮年期いらい、からだのエネルギーは下降してくるのに、こころは依然と上昇をつづける。文明の進歩とともに、この心身のずれはますます大きくなった。これは心理的に必ずしも望ましいとは言えない面がある。(旅の終り 老いのこころ)
生命の流れに浮かぶ「うたかた」にすぎなくても、ちょうど大海原を航海する船と船とがすれちがうとき、互いに挨拶のしらべを交わすように、人間も生きているあいだ、さまざまな人と出会い、互いにこころのよろこびをわかち合い、しかもあとから来る者にこれを伝えて行くようにできているのではなかろうか。じつはこのことこそ真の「愛」というもので、それがこころの旅のゆたかさにとっていちばん大切な要素だと思うのだが、あまり大切なことは、ことばで多く語るべきことではないように思われる。それでこれはヒトのこころの旅がかなでる音楽の余韻のようなものにとどめておくことにしたい。(旅の終り 旅をかえりみて)