- Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622081852
作品紹介・あらすじ
「私は失敗ばかりしてきたような気がするが、その苦悩のなかで、ほんの少しばかり自分の頭でものを考えることができるようになったような気がする。それというのも、自分の頭でというよりは、多くの「精神的恩人」が心に残していってくれたものによるのだろう」結核療養期を支えてくれた「恩人」マルクス・アウレリウス、一生を決めるほどの「電撃」をうけたプラトンをはじめ、人生の折々に神谷美恵子を助け、つくりあげた本、そして人。新編集で贈るエッセイ集。
感想・レビュー・書評
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著者の文章は読み返すたびに新鮮な驚きがある。一見やさしい文章の背後に、読み手の思考や生き方を問わずにはいられない厳しさがひそんでいる。
神谷美恵子という少女が、どのような人びとや本との出会いから、しばしば「聖女」と呼ばれる人格へと成長を遂げたのかを考えるうえで、この見事に編集された一冊はじつにいろんな示唆を含んでいる。さらには中井久夫による解説が、この本の最高の読み方を示していて、至れり尽くせりの一冊に仕上がっている。
当然だけど、著者の人格は「聖女」と一括りにできるほど単純ではない。著者の成長の背後には、幼いころからの、深く、透徹した苦悩があり、それを乗り越えることによって、著者の人格は磨かれていった(レナード・ウルフの本にはさまれたメモ「クリーネックス、コーヒー、やさいジュース」の写真は、著者も具体的な日常を生きていたことを確認させてくれ、読者を妙にほっとさせる)。
中でも僕が印象的な出会いだと思ったのは、著者がふたつの文章を捧げている新渡戸稲造だ。新渡戸が、たいへんな精神的苦しみとたたかいながら、なお、(内村鑑三とは異なり)そういう心には苦しみの種だらけの世間に棲むことを選んだことに、おそらく同じように生きた著者は共感以上の深い絆を感じている(中井さんが解説に書いているけど)。
また、X子さん、グラジオラスの花束をくれた患者さん、視力を失いながら最後まで詩を書き続けた患者さんなど、患者さんを綴った文章には、まるで冬の朝の空気のような純粋な、透明なものを感じた。特に「蔦の話」という短い一文は、美しい名文だと思う。
最後にまったく私的な話。ここ数カ月の間に僕自身に起きたある経験ののち、この本をある一文を読み返したら、それが突然、経験後の自分の世界認識とぴったり重なるというおそろしくなるほどショッキングなことが起きた。もしかしたら、共鳴する人がいるかもしれないので、その一節を引用のところに書いておく。 -
【「教職員から本学学生に推薦する図書」による紹介】
風間俊治先生の推薦図書です。
<推薦理由>
「静かな部屋で、是非、紐解いてください.」
図書館の所蔵状況はこちらから確認できます!
https://mcatalog.lib.muroran-it.ac.jp/webopac/TW00316752 -
面白い。神谷美恵子はめちゃめちゃ読書家。
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「生きがいについて」などの著書で有名な精神医学者の神谷恵美子氏のエッセイや書簡などをまとめたもの。
章立てはあってないようなものだが、
気になったトピックは
・ヒルティの恩
・ミシェルフーコーとの出会い
・らい病診療所にて
・新渡戸稲造先生と女子教育
・マルクス・アウレリーウス
・ヴァージニア・ウルフについて
個人的には新渡戸稲造とマルクス・アウレーリウスが気になって購入した。
神谷氏の本を読むには初めてだったが、非常に聡明で知的探求心が強く、哲学的な生き方をする人物だったのがうかがえる。
特に当時の社会はハンセン病患者に対し、隔離政策を取られており、そんな彼らと共に過ごす精神科医の心労も並みの物ではなかったと思う。
しかしそんな荒波も人とは何か、生とは何かを問い続けることで過ごされたようだ。
かといって堅物というわけでもなく、素晴らしい感性と優しさユーモアも持ち合わせていたようだ。
(本当に点は二物以上を与えるなあと。。)
特に目に見えて、人生訓めいたものはないが、先生の空気感をのんびり感じられた本でした。
・厳しい現実の中で理想に従って生きることの大変さ
・そもそも人間は社会に役立たなければ生きている意義がないのであろうか
・自分は何も損害を受けなかったと考えよ。そうすれば君は損害を受けなかったことになる
・革命という手段よりはユーモアを取る
・家庭という温室の中で平穏無事に生きているだけだったら、見失われそうな、孤独な苛烈なものがここにはあります。 -
「生きがいについて」を読んで、神谷美恵子の人生とその読書傾向に関心をもって、読んでみた。
やはり、驚異的としかいえない読書量。
そして、スゴい人間関係。
なによりも、覚悟、決意の人であったのだ。
それらが、実に淡々と清々しく軽々と書かれている。
ので、ふと読み飛ばしてしまいそうだけど、実に深い、重い言葉も沢山埋もれている。
ということは、とても丁寧な解説を読んで分かったこと。 -
[ 内容 ]
「私は失敗ばかりしてきたような気がするが、その苦悩のなかで、ほんの少しばかり自分の頭でものを考えることができるようになったような気がする。
それというのも、自分の頭でというよりは、多くの「精神的恩人」が心に残していってくれたものによるのだろう」結核療養期を支えてくれた「恩人」マルクス・アウレリウス、一生を決めるほどの「電撃」をうけたプラトンをはじめ、人生の折々に神谷美恵子を助け、つくりあげた本、そして人。
新編集で贈るエッセイ集。
[ 目次 ]
「存在」の重み―わが思索 わが風土
生きがいの基礎
ヒルティの恩
『ポリテイア(国家)』今昔
ミッシェル・フーコーとの出会い
V.ウルフの夫君を訪ねて
癩園内の一精薄児
島の診療記録から
蔦の話
心に残る人びと〔ほか〕
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