- Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622083412
作品紹介・あらすじ
「この本の内容は空間、ことば、死、まなざしに関するものである」人間科学の医学的基盤とは何か。18〜19世紀の認識論的切断を問う。初期の代表作。
感想・レビュー・書評
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フーコーの歴史記述は、フランスを中心とした中央ヨーロッパの、特に18世紀付近を得意としたもので、無数の史料を縦横無尽に駆使して執筆する姿は圧巻だが、われわれ日本人にとっては全くなじみのない歴史資料を用いて描写された、他文化の歴史である。けれどもそれは、不思議と知的興奮をかきたてる。
この本は『狂気の歴史』より後に書かれたもので(1963)、『狂気の歴史』よりやや広範囲にわたる「臨床医学」をテーマとしているが、『言葉と物』のように広範すぎて対象が茫漠としている印象もない。
ここでもやはり、18世紀末頃のフランス革命の時代をターニングポイントとして、人びとの知のパラダイム転換が起きたことを例証している。
「西洋医学」なるものの近代以前の姿は、今のわれわれには滑稽でもあるが、どのような知的枠組みがそれを支えていたのか、とフーコーは私たちに考えさせる。
『医学というものはおそらく、ルネサンス以来、ある一つの学問をたった一つの知覚野の上に築こうとした最初の試みであり、ある実践を、まなざしの行使のみの上に築こうとした最初の試みであろう。」(P.158)
この本はまさに医学的な「まなざし」を主題としたものだ。
そして、死体解剖の再認識により、近代医学は「死」から逆に「個人」を発見していくことになる。こまりこれは、医学に留まらない、おおきな文化史的な転回点を示している。
相変わらずフーコーは刺激的だった。何か読み返したくなった。詳細をみるコメント0件をすべて表示