子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から

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  • みすず書房 (2017年4月19日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622086031

子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所からの感想・レビュー・書評

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  • 託児所や学校は社会の縮図である。日本でイジメが問題になっているのは、自分とは違う立場、容姿、弱い生命力(障害など)などを持った他人を思いやることができないからだと思うが、その原因を作っているのは明らかに大人たちである。社会の排他主義的な思想はそのまま子どもたちに受け継がれてしまう。著者はインクルージョン教育について述べているが、著者の勤務していた「底辺」託児所には、様々な人種、障害のもった子供などがたくさんいて、よいインクルージョン教育の場になっているようだ。ただ、親たちの思想まで変えられているわけではないので、卒業後はどうなるのかと危惧する。

    この本では、託児所内の人間模様が非常に面白く描かれていて飽きずに読み終えられたが、その大きな理由が、著者の深い洞察力と卓越した文章力だと感じる。以下の文章は特にそれを実感する。

    「決断力。クリエイティヴィティ。ディベートする力。私が日本にいた20年前から現在まで日本人に欠けていると一般に言われている事柄はちっとも変わっていないように思えるのだが、こうした能力が欠如していることが本当に民族的特徴になっているとすれば、それは人間の脳が最も成長する年齢における環境や他者とのコミュニケーションのあり方に端を発していないだろうか。少なくとも英国の幼児教育システムは、言われたことを上手にやる天使の大量製造を目的にはしていない。」

  • 政府の緊縮財政がもたらしたイギリスの無料託児所の変化。保育士として働いた作者の体験記。
    底辺の中でさらに分断と格差が進む(そして固定される)厳しい状況でも消えそうで消えない共同体の矜持や目の前の人を見捨てないDIY精神(さすが生協とパンクを生んだ国)。作者はそれを「アナキズムと呼ばれる尊厳」とし、薔薇に例えてきっとまたふてぶてしく咲き始めると書いた。
    多寡や有無なんて問題にしない「ある」という前提の強さ。モリッシーがうたった「決して消えずにある光」みたいだと思った。

  • とても面白かった。よその国の救いようのない話と思えばそれまでだけれども、翻って考えるきっかけになるでしょう。ブログをそのまま本にしたような内容なので表現はどうかなと思うところもあるけれど、自分と近い感覚(年齢?)なので違和感なく読めた。保育士をめざす学生にも読んでもらいたい内容だと思いました。

  • 端々で共感できる本だった。子どもの境遇とか,どんな気持ちでいるんやろとか,考えると端々で泣けた。この人の各ものは本当に好きだなと思う。

  •  怪物みたいな暴力的幼児たちの肖像がずらりと描かれ、それがイギリスの貧困層の光景をくっきりと浮かび上がらせる。私はアリスが忘れられない。「プリティ?」きっと大きくなったらその特異な容姿でモデルにでも...そうはいかないのかもしれないが。三原順や中村明日美子あたりの絵柄で漫画化してほしいような、どこか寓話的雰囲気漂うルポタージュ。おすすめ。託児所が消えて食料配布所に変わる流れ、生殖の保証から個の生命維持へ、でじりじり余裕がなくなっていく様子があるね。これから世の中、どうなってしまうんだろうね。

  • 国が変われば教育も何もかも違うって、わかっていても知らない事だらけ。え?未就学児がこんな差別用語連発するの?ひぇぇー。
    兎に角、驚き。日本でもあるのかな実際。言葉遣いとかって親が言ってると真似しますしね。
    いやはや、日本国内のことも詳しくないけれど、イギリスも日本と変わらないじゃない。格差問題は、むしろイギリスの方が酷いか?どちらも言えるのは、金や食べ物だけ与えて生かされても人間って真の意味では生きていけないのだなと思った

  • 県立

  • SL 2017.10.25-2017.10.31

  • 第16回 新潮ドキュメント賞(新文化より)。著者は英国の託児所で働く保育士。

  • 様々なマイノリティに対する差別意識には敏感なつもりだったけれど、私はアンダークラスな人に対する差別意識はあるんやと気付かされた。イングランドにおける、チャブといわれる人達、日本でいうところのDQNな人達、に対する偏見や嫌悪感をなくすチャンスは、今後訪れるだろうか。

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子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所からの作品紹介

「わたしの政治への関心は、ぜんぶ託児所からはじまった。」英国の地べたを肌感覚で知り、貧困問題や欧州の政治情勢へのユニークな鑑識眼をもつ書き手として注目を集めた著者が、保育の現場から格差と分断の情景をミクロスコピックに描き出す。
2008年に著者が保育士として飛び込んだのは、英国で「平均収入、失業率、疾病率が全国最悪の水準」と言われる地区にある無料の託児所。「底辺託児所」とあだ名されたそこは、貧しいけれど混沌としたエネルギーに溢れ、社会のアナキーな底力を体現していた。この託児所に集まる子どもたちや大人たちの生が輝く瞬間、そして彼らの生活が陰鬱に軋む瞬間を、著者の目は鋭敏に捉える。ときにそれをカラリとしたユーモアで包み、ときに深く問いかける筆に心を揺さぶられる。
著者が二度目に同じ託児所に勤めた2015-2016年のスケッチは、経済主義一色の政策が子どもの暮らしを侵蝕している光景であり、グローバルに進む「上と下」「自己と他者」の分断の様相の顕微描写である。移民問題をはじめ、英国とEU圏が抱える重層的な課題が背景に浮かぶ。
地べたのポリティクスとは生きることであり、暮らすことだ──在英20年余の保育士ライターが放つ、渾身の一冊。

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