吉田松陰:身はたとひ武蔵の野辺に (ミネルヴァ日本評伝選)

著者 :
  • ミネルヴァ書房
3.83
  • (1)
  • (3)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 32
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623039036

作品紹介・あらすじ

幕末の思想家・教育者、吉田松陰。下田踏海、投獄、刑死という劇的で短い生涯を辿り、松下村塾から幕末維新の人材が輩出した理由、そしてたえず揺れ動いてきたその人物像について、松陰研究の第一人者が迫る。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 吉田松陰の教育論は確かに今の時代、次の時代においても大切なエッセンスが詰め込まれていると感じたし、昨今のYouTube等ネットでの「学びたいものを学ぶ」に通ずるところがある。しかし、今のネット教育において松蔭のように「導いてくれる人」という観点は欠けているのだなと読みながら考えていた。一方通行でなく、同級生のように共に学ぶというのは松陰だからできた方法であり、簡単に真似できない代物であるなと感じた。

  • この1月から始まったNHK大河ドラマ「花燃ゆ」は吉田松陰の妹文が主人公だが、この機会に松陰を勉強してみようと松陰関係の本を読み出した。最初に読んだのは、前から買ってあった、奈良本辰也の『吉田松陰』。これは戦後初めて出た新しい松陰像を描いたものだそうだが、時代背景の描写ばかり多く、松陰という人物が今一彷彿としてこなかった。マルクス主義の歴史学者が書く松陰像とはこのようなものかと思った。それに対し本書は松陰の生涯を事細かく描写する。本書を読んでいると、松陰という人は、牢に繋がれているときはおとなしく学問にいそしみ、人に教えようとするが、自由な身のときは東北へまた九州へと動き回るし、あるいは禁が解けたときは、人に教え、上に対して臆さず意見書を差し出す。ペリーの船に乗り込む前に彼はロシア船にも乗ろうとして長崎までかけつけるが、ロシア船はすでに出港したあとだったとか。なにしろ、なにものも恐れず、すかさず行動に移そうとする。たいした人と言えばたいした人で、最後に殺されることになるのも、老中暗殺計画を堂々と披露したがためで、自分が信ずることは人の心を動かすと信じて疑わない性格が自らの死をまねいた。ぼくが本書で印象に残っているのは、ペリーの船にのりこむくだりとか、自ら名乗り出て、伝馬町に繋がれ、さらに国元に送り返されるときのかごの中の状況。とりわけいっしょに密出国をはかった金子は身分が下であったから籠も扱いもひどいものであった。また、松陰が最後白州で首をはねられる場面の回想記も鬼気迫るものがある。

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

京都大学名誉教授

「2016年 『近世の学校と教育【オンデマンド版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

海原徹の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×