幸せな秋の野原: ボウエン・ミステリ-短編集2 (MINERVA世界文学選)

  • ミネルヴァ書房
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本棚登録 : 19
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (337ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623043507

感想・レビュー・書評

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  • その後も引き続き読んでいる、エリザベス・ボウエン。

    後ろに載っている翻訳者の方の
    一話ごとの解説のおかげで、
    より一層理解が深まったり、腑に落ちたり。
    時には登場人物に苦言を呈してあったりと面白い。

    この作品集の中では、

    「バレエの先生」
    若く美しいバレエ教師の女性、
    でも彼女はとっても疲れている…。

    「ワーキング・パーティー」
    村の女性だけが集まって裁縫道具を持ちよりお茶をする会、
    会場は持ち回りで、今回は初めて若きミセス・フィスクのお屋敷に。

    自慢をしたい、褒められたい気持ちでいっぱいのミセス・フィスクは
    興奮状態で会の進行を取り仕切っていくが、
    そこにあるとんでもない事態が…。

    「よりによってこんな時にこんなことが!」と言う
    念入りな嫌がらせのようなことって、本当に起こりそう。

    あの人には申し訳ないけれど、だんだんおかしくなってきて
    笑ってしまった!

    「幸せな秋の野原」
    時を超えて、ある人の人生にのめり込んで、
    まるで自分の身に起こったことの様に夢中になる、あの感じ。

    ある人と地面を挟んで足の裏同士合わさっていて、
    今は私が地上、
    クルンと回ると地上へ出るのがあの人に入れ替わる、
    前世と言うか縁の深い魂と言うか、そんな風なことを
    「わたし、時々こんなこと考えているな」と
    改めて思い出した。

    そして一番心に残ったのは
    「そしてチャールズと暮らした」

    この話、本当に恐ろしい。

    自分の経済力や権力を振りかざして
    周りの人をらくらくと踏みにじる人、
    そしてそれを受け入れ、
    見て見ぬふりをするしかない立場の人たち。

    心がどんよりとして、しばらくこのお話について
    気が付くと考えてしまうほど。

    でもどんなに辛辣で恐ろしくて意地悪でも、
    清潔で洒落ているボウエンの作品。

    次は長篇だ!

  • ボウエン・ミステリー短編集の第2巻。
    1巻はミステリというより幻想小説色が濃い短編を揃えていたが、2巻ではより心理小説的な、つまりボウエンの普段の作風に近いものが多かった。
    どれも人間関係の歪みを描き出す切れ味鋭い短編で、ミステリとして読むならサスペンスに近い味わい。

  • 前作『あの薔薇を見てよ』よりもさらに言葉が削ぎ落とされた印象の作品集。自分の読みが至らず、解説を読んで初めてどういう話か知る作品も多くあり。もったいない!
    真綿で首をしめられるような「そしてチャールズと暮らした」「バレエの先生」と、緊張と気負いがある瞬間から解放的な狂気に変わる「ワーキング・パーティー」が好き。

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著者プロフィール

Elizabeth Dorothea Cole Bowen (7 June 1899 – 22 February 1973)

「2012年 『なぜ書くか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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