知と学びのヨ-ロッパ史: 人文学・人文主義の歴史的展開 (MINERVA西洋史ライブラリー 73)

著者 :
制作 : 南川 高志 
  • ミネルヴァ書房
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感想 : 1
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623048472

作品紹介・あらすじ

大学の制度面での変化は、人文学に様々な次元での対応を求めている。背後には、グローバル化した現代の、「知」と「学び」に関する認識の変化という問題が横たわっている。本書は、人文学の長い伝統を持つヨーロッパを素材とし、その歴史のなかで人々が人文学の研究と教育にいかにかかわってきたのか、また人文学的な教養がいかなる意義を持ち、評価を受けてきたのかを検討して、人文学の本質と可能性を追求した研究である。わが国と世界の「知」と「学び」にかかわる現今の状況を深く理解し、今後のあるべき方向を考えるための糸口を与えんとする試みである。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、ヨーロッパが蓄積してきた人文学の歴史と伝統を概観し、それをどのように教育・研究してきたのかを明らかにしている。これは、今日の教養教育を考える上で、大切なことと信じている。

    商人と人文学とは、関係が薄いという先入観を持っていたが、本書によりそれは修正された。フランスをはじめとするヨーロッパで、絶対主義体制の維持を目的に、国富増大のための「重商主義」がとられた。ここで重要な役割を果たした、いわば特権的な商人は、子息を育成するために、読み書きそろばん、丁稚奉公、複式簿記、為替手形の実務を学んでいく必要性があった。加えて社会的上昇を目的としてコレージュに通わせ修辞学を学んだ。教養のある商人は、好みによった文化活動を行っていった。エリート商人は、ミュゼ・ド・ボルドーを設置にかかわり、語学・人文学・自然科学教育・演劇・音楽の教養を身に付けた。それは貴族や官僚とは異なった世界だったという。結果的に、教養を身に付けた商人は、知識人と交流し政治にも加わっていくことになったという。


    後学のために目次を引用しておく。

    序 人文学と人文主義のヨーロッパ史(南川高志)  

    一 人文学と人文主義のダイナミズム 1 大帝国統治と教養(井上文則) 2 実業家と教養(君塚弘恭) 3 学びを支える社会と力(金澤周作)  

    二 人文学と人文主義のリアリティ 4 古典の復興と人文主義のリアリティ(藤井 崇) 5 人文主義と宗教改革(藤井真生) 6 歴史叙述とアイデンティティ(服部良久) 7 啓蒙主義と人文学(佐々木博光) 8 人文学の受容とその葛藤(橋本伸也)  

    三 教育の発展と人文学の行方 9 専門と教養(川添信介) 10 宗派化と大学の変容(小山 哲) 11 古典人文学の伝統と教育改革(上垣 豊) 12 近代の大学改革と人文学の位置(安原義仁)

    結 人文学の未来のために(南川高志)

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著者プロフィール

京都大学大学院文学研究科教授
1955年 三重県生まれ
1984年 京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学
    京都大学博士(文学)
1996年 京都大学助手、大阪外国語大学助教授、京都大学文学部助教授、教授を経て現職
主な著訳書
『ローマ皇帝とその時代』(創文社)
『ローマ五賢帝』(講談社学術文庫)
『海のかなたのローマ帝国』(岩波書店)
アエリウス・スパルティアヌス他『ローマ皇帝群像1、2』(2は共訳、京都大学学術出版会)
『人文学への接近法──西洋史を学ぶ』(共編、京都大学学術出版会)
『新・ローマ帝国衰亡史』(岩波新書)

「2014年 『ローマ皇帝群像4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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