精神医学から臨床哲学へ (シリーズ「自伝」my life my world)
- ミネルヴァ書房 (2010年4月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
- / ISBN・EAN: 9784623057511
感想・レビュー・書評
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医学
歴史 -
登録番号:26
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木村敏の自伝ということで、単行本にもかかわらず、飛びついて買った1冊。買ったのは正解。やはり伝記(とくに自伝)はおもしろい。学生時代には音楽家になることまで本気で考えたという著者。いたるところにクラシック音楽についての記述がある。フルートの河合隼雄、チェロの村上陽一郎との共演なんていうのが実際に行われていたというのは感動的。ドイツ留学時の話とか、ヨーロッパ各地をめぐられた話は、先日読んだ米沢先生の伝記とあいまって、うらやましい限り。さて臨床哲学という言葉、かっこういい響き。養老先生とか、鷲田先生なんかも以前から使われているが、頭の中だけで考えている哲学から、外に出て実際に悩みを抱えた人々といっしょに考えていく姿勢、こういうものが現在いたるところで必要とされているのだと思う。極力哲学者の名前など出さずに語り合う。ふと気付くと昔の人も同じようなことで悩んでいたんだなあと感じる。そんな雰囲気がちょうどいい。さて、著者自身は精神医学の道に進まれたわけだけれど、病気ばかり見て人を見ない医学の現場に抵抗を感じ、昔から精神医学とは親和性の高い哲学の思索に入っていかれる。もちろん患者との人間的なつながりの中で。そこで臨床哲学。読み逃している木村先生の著作や翻訳書をもっと読んでみたい。そして、西田幾多郎にも挑戦しなければ。時間がほしい。
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現象学的・実存分析的精神病理学の学習者にとって、この先生の自伝ほど貴重なものはないかもしれない。臨床と哲学の解のない世界をあえて選択し、それを追求し続けた強靭でしなやかな思考の基盤にあったのは宗教ではなく音楽である。
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読みものとしても面白いです。
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本が本を呼びテレンバハやブランケンブルグを借りることに
数十年来の読書会を通じた地道な研鑽に学者としての凄みを感じる -
著書からだけでは知ることができない木村臨床哲学成立の伝記的背景を知ることができる。臨床の仕事に戻りたいと思った。
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木村敏の自伝。自伝にしては非常に面白かった。
木村敏の生い立ちだけではなく、木村敏の思想の道程まで、わかりやすくよくまとまっている。
あくまでも臨床に拘る木村の姿勢に好感が持てる。
テレンバッハやブランケンブルグと交流があり、ハーバーマスとヤスパース賞を競い合った(!)という凄い人物。
実は世界で最も知られた日本の思想家なのかもしれない。 -
2010.04.18 日本経済新聞に紹介されました。