著者がいかに式子内親王に傾倒して愛しているのかにじみ出ている本。
外国文学を専攻された先生が書かれた本だが、実に良く先行の国文学専門書や論考にあたっておられる。
おろそかにしない・きちんと読み込むっていうのは、このぐらいやっていなきゃダメよね…と尊敬のため息が出た。サッフォーなど西洋の女流に詳しく、和泉式部にも造詣が深い著者だけに式子への理解も深い。
式子と山川登美子を比較されているところも、膝を打ちたくなる気持ち。私自身は,式子は、「両思い」の状態で誰かを愛していたのではなく
「初めから、私はあのひとを愛せない。ほかの誰かであったとしても。私とかりそめの睦言にでも比翼連理の誓をくれるひとはいない。」
「私は、死ぬまでの時間を、生きなければならないと定められた。孤独をのみ傍らに置くものだ。」
という絶望と、同じだけの重さの
「本当は、誰かと心を通わせたかった。しかしそれは夢幻の果て。闇の惑いにのみ叶う、私の儚いひとりがたりなのだ。」
という意識を持って詠歌に向かっておられた歌人だと思うので沓掛先生の式子像は、賛同するところが多かった。最新の式子にまつわる論考の一つとして
大事にしたい1冊である。副題に全てが凝縮されている名著だった。