式子内親王私抄: 清冽・ほのかな美の世界

著者 :
  • ミネルヴァ書房
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623060504

感想・レビュー・書評

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  • 著者がいかに式子内親王に傾倒して愛しているのかにじみ出ている本。

    外国文学を専攻された先生が書かれた本だが、実に良く先行の国文学専門書や論考にあたっておられる。

    おろそかにしない・きちんと読み込むっていうのは、このぐらいやっていなきゃダメよね…と尊敬のため息が出た。サッフォーなど西洋の女流に詳しく、和泉式部にも造詣が深い著者だけに式子への理解も深い。

    式子と山川登美子を比較されているところも、膝を打ちたくなる気持ち。私自身は,式子は、「両思い」の状態で誰かを愛していたのではなく

    「初めから、私はあのひとを愛せない。ほかの誰かであったとしても。私とかりそめの睦言にでも比翼連理の誓をくれるひとはいない。」

    「私は、死ぬまでの時間を、生きなければならないと定められた。孤独をのみ傍らに置くものだ。」

    という絶望と、同じだけの重さの

    「本当は、誰かと心を通わせたかった。しかしそれは夢幻の果て。闇の惑いにのみ叶う、私の儚いひとりがたりなのだ。」

    という意識を持って詠歌に向かっておられた歌人だと思うので沓掛先生の式子像は、賛同するところが多かった。最新の式子にまつわる論考の一つとして
    大事にしたい1冊である。副題に全てが凝縮されている名著だった。

著者プロフィール

1941年長野県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。文学博士。東京外国語大学名誉教授。専門は西洋古典文学。
主な著訳書
『サッフォー—詩と生涯』(平凡社、後に水声社)、『讃酒詩話』、『和泉式部幻想』(以上、岩波書店)、『陶淵明私記—詩酒の世界逍遥』(大修館書店)、『西行弾奏』(中央公論新社)、『エラスムス—人文主義の王者』(岩波現代全書)、『式子内親王私抄—清冽・ほのかな美の歌』、『人間とは何ぞ—酔翁東西古典詩話』(以上、ミネルヴァ書房)、『古代西洋万華鏡—ギリシア・エピグラムにみる人々の生』(法政大学出版局)、『ギリシアの抒惰詩人たち』(京都大学学術出版会)、『ピエリアの薔薇—ギリシア詞華集選』(水声社、後に平凡社ライブラリー)、『ホメーロスの諸神讃歌』(ちくま学芸文庫)、エラスムス『痴愚神礼讃—ラテン語原典訳』 (中公文庫)、オウィデイウス『恋愛指南—アルス・アマトリア』(岩波文庫)、『黄金の竪琴—沓掛良彦訳詩選』 (思潮社、読売文学賞受賞)、『ギリシア詞華集』全4冊(西洋古典叢書、京都大学学術出版会)、など

「2021年 『オルフェウス変幻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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