ごみと日本人—―衛生・勤倹・リサイクルからみる近代史

著者 :
  • ミネルヴァ書房
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623073764

感想・レビュー・書評

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  • ごみ問題の誕生は、日本の近代化・産業発展と表裏一体の関係にある。本書は、この問題を通じて日本近代史を読み解くものである。開国で江戸の街はどう変わったか? 松方デフレがごみ問題に与えた影響とは? 与謝野晶子はなぜ廃物利用を批判したのか? 東條英機がごみを視察した理由とは? ごみにまつわる詳細なデータと象徴的なエピソードで、幕末から敗戦に至る日本の歩みを描き出した意欲作、ついに刊行。



    [ここがポイント]
    ◎ 日本の近代化の裏側で、ごみ問題がどうなっていたか、独自の視点から描き出す。
    ◎ 森鴎外、与謝野晶子、東條英機など、近代史を彩る人物と、ごみの意外な接点が面白い。

  • ↓利用状況はこちらから↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00533188

  • 江戸時代後期から終戦前までの日本のごみ、衛生、リサイクルを追った本。当時の世相や政治、文化レベルも絡めておりなかなか読みごたえがあった。

    農村では循環型の経済が成り立っていたのが、都市化と工業化が進むにつれてそのバランスが崩れて来て、都市部のごみが郊外に出されてそれが差別意識も生み始める。また廃棄物は感染症の原因ともなり、特に第二次大戦中の物資不足や政策の失敗はより国民の衛生環境を悪化させている。

    戦時中の金属の回収政策には結構頁を割いている。自主的に国民から国へ金属類を「売り渡す」ような運動がされているが、実質的に強制であり、本来の価値から不当に安く差し出させたゆえにその差益を掠めとるブラックマーケットも存在していたというのは興味深い。そして倹約を国として呼び掛けるための「隣組」の制度は隣近所からの監視の目(空気、といった方が良いか)として大いに活用されたそうだ。

    戦時中の話とは言え、現代日本にも通じるところが散見される。急ごしらえの政策は、そのドサクサで儲ける悪い奴らを生み出す。と同時に毎回ゴミの日に大量に出る家庭ゴミを見るにつけ「どうやったら減らせるのだろう?」と反省。

  • 歴史

  • スローガンや心性、民族性、文化に還元されがちな行為の背後にある、需給や価格の変化を丁寧に描き、その重要性を提示する著作。日本人は小汚かったし、教育啓蒙よりも経済合理性のほうが人を動かしたし、戦争という危機のもとでは町内会(隣組)の相互監視が機能した。

  • 江戸時代は屎尿までが再利用されていた超循環型社会と呼ばれており、大量生産大量消費の現代とは比べ物にならないほど勤倹に優れた時代だというイメージがあったが、この本を読んでそのイメージが覆された。当時は別に意図してそうなされていた訳ではなかったのだ。屎尿が肥料として使われていたのは実際に効果が発揮されていたからであるし、廃品回収が盛んであったのもそれを再資源化する技術がなかったり、衛生面を配慮しての結果であったのだ。そうであれば、安易に現代と江戸時代を比べて考えるのは良くないであろう。環境倫理という概念を持ちながら豊かさに苛まれ資源化・再利用・使用減に四苦八苦する現代と衛生面に配慮したり、経済的な利益のために回収を行っていた江戸時代とは種類がまったく違うのだ。ただ、やがて不衛生が公害にまで発展するうちに環境倫理が形成されていく過程を垣間見るという点では大いに勉強になったと思う。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、3階開架 請求記号:518.52//I53

  • 明治維新から終戦まで。
    江戸期以来、リサイクルは豊かな生産と消費を背景に盛んになり、開港によってそれは飛躍的に活発化し、とりわけ第一次世界大戦下で大きく発展した。それに対し、昭和の戦争は多彩だった多くのリサイクル産業を崩壊させた。戦時下において金属類以外のリサイクルは、不足した品物の補充的役割を担ったのだが、それも交通手段がひっ迫し輸送もままならぬ中、また相次ぐ空襲の下では、どこまで有効に活用されたか疑わしい。その面からみれば、戦時中はリサイクルの冬の時代だったともいえる。
    この著者による戦後からせめて2000年までの歴史が書かれることを熱望する。

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著者プロフィール

2015年3月現在稲村技術士事務所代表。廃棄物資源循環学会ごみ文化研究部会幹事

「2015年 『ごみと日本人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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