藤原伊周・隆家:禍福は糾へる纏のごとし (ミネルヴァ日本評伝選)

著者 :
  • ミネルヴァ書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623078486

作品紹介・あらすじ

藤原伊周(974〜1010)、隆家(979〜1044) 平安期の公卿。
父道隆に引き立てられるも、その死後に叔父道長と対立し、花山上皇と闘乱した等の罪で大宰権帥に左遷された伊周。兄に連座して左遷されるも後に復帰し、大宰権帥として「刀伊の入寇」を撃退した隆家。栄華を誇る道長の陰で生きた中関白家の栄光と没落、そしてその後を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 前半の、二人の流離譚よりも、後半の隆家の刀伊との闘いなどのほうが面白いです。もとは文人系(高階氏)の貴族のくせに、九州中の官吏に号令をかけ、刀伊に応戦する様は、血湧き肉踊ります。

    道長には臣従しつつ、実資ともしばしばあって情報交換したり、花山天皇などとも親しくしているなど、なかなかの世渡り上手。
    勘ぐればいろいろ考えられるけど、たぶん前半生はあまやかされて育ったやんちゃ坊主だっただけで、深い意味はなかったのだと思いたいものです。いつまでもおぼっちゃまだったのは伊周のほうだったようです。

    妻 源重信の娘、藤原景斉の娘
    源兼資の娘、藤原為光の娘
    加賀守正光の娘

    赤染衛門集に、源兼資の娘が源倫子に梅の花をもってくる和歌があって、意味が分からないなと思っていたのです。ですが、隆家の正妻だったということがわかり、謎が解けました。

    殿の上の春日に詣らせ給ひし道にて、伊与守兼資が女の花を折りて
    (殿〔藤原道長〕の北の方〔倫子〕が、春日神社にお参りの途中、伊与守兼資の娘が花を折って)

    124 手もたゆく 折(おり)てこきつる 梅花(うめのはな) 物見(ものみ)知れらば ともに見むとて
    (手も疲れるほど折ってきました梅の花です これを美しいと思ってくださるなら ご一緒に見ようと思いまして)  

     返し(返歌)

    125 山がくれ 匂へる花の 色よりも 折りける人の 心をぞ見る
    (山に隠れてよい香りを放っている美しい梅の花の色あいよりも 折ってきた人の気持をくみます

    この返歌は赤染衛門が代詠したのだろうと思いますが。赤染衛門も胸中は複雑だったことでしょう。
    999年(長保元年二月二七日)

  • 伊周・隆家兄弟の生涯を中心に、中関白家の栄光と没落・再生の過程を描く内容。粗暴なイメージの強かった隆家が、兄と比べ公家社会では上手くやっていたというのが意外ではあった。枕草子に描かれる栄華や、実資との交流などは興味深い。

  • 前半は昨日読んだ「この世をば」まんまだなあって思ってたが(それは史実をさほど改変せずに読み物として成立させる、永井路子の力量を見直すべきか)、流石に後半、特に長生きした隆家のその後は面白かった。

    花山に好かれ、うるさ型の隣人・実資と長い親好を結ぶ。物語じゃないので、著者の創作は入っていないはずなのに(創作では端役のことが多いせいか(笑))、なかなかに印象深い人物であったようだ。

    物語・日記とも超弩級の史料が残っているせいで傑出した人物の多く伝えられているこの時代、自然な動きをして等身大の平安貴族像を伝えてくれる、むしろ貴重な人材か。

    しかしまあ、道長ってば。幾ら娍子の立后が気に入らないからと言って、自分の息子(教通)の婚礼の日と重なっている立后の日にまで、わざわざ妍子の内裏参入をぶつけることもないのでは?そういうことするから、妍子は禎子内親王しか産めなかったんだわ、きっと。だいたい当時の婚礼って、花婿側の父親が欠席しても問題なかったのか…???

  • 物語は除いて、日記等の一次史料から読み解いていくのが面白かった。
    隆家が公家社会でわりとうまくやっていたというのがほう~という感じ。
    隆家の子孫が院政期以降たくさん出てくるよなーと。

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著者プロフィール

1958年、三重県津市生まれ。東京大学文学部国史学専修課程卒業、同大学大学院人文科学研究科国史学専門課程博士課程単位修得退学。博士(文学、東京大学)。国際日本文化研究センター教授。専門は日本古代政治史、古記録学。主著に『平安朝 皇位継承の闇』『皇子たちの悲劇』(角川選書)、『一条天皇』(吉川弘文館)、『蘇我氏』『藤原氏』『公家源氏』(中公新書)、『藤原道長「御堂関白記」全現代語訳』(講談社学術文庫)、『藤原道長の日常生活』(講談社現代新書)などがある。

「2023年 『小右記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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