表象の光学

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  • 未来社
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784624011642

作品紹介・あらすじ

デカルトからベラスケス、マネ、マラルメを通過して、デュシャン、ブルトン、リルケ、ツェラン、ブランショ、デュラスへ。〈光学〉をキーワードに、西欧近代における哲学、文学、音楽、美術等の諸領域を横断的に貫こうとする表象文化論的思考装置が凝縮された思考を展開する。ハイデガーやフーコーの哲学をテコに目眩く思考と文体の運動を鮮やかに刻印し、表象文化論の起源と可能性を存分に論じきった著者の知的彷徨の所産。

目次
I 表象装置と主体の光学

 デカルト的透視法──表象装置としてのコギト
 オルフェウス的投影──オペラの光学の誕生
 ヒステリー的投影──近代的プロジェクシオンの構造

II インファンスとしての身体

 無の眼差しと光り輝く身体──フーコーのインファンス
 インファンスの光学――エクリチュールの身体
 盲目の眼差し――フーコーの「マネ論」

III 死の光学

 盲目の光学――デュラスにおける〈見ることができないもの〉
  1 「苦悩」――戦争のエクリチュール
  2 〈緑の眼〉――身体なき眼差し
 墓の光学――デュシャンの〈完全犯罪〉

IV 転回の詩学

 大地論序説――詩・技術・死
  1 大地から/への転回――ハイデガーと大地の喪失
  2 大地の委託と詩の出来事――リルケの樹と大地
  3 ポプラの樹とパンの身――ツェランの〈大地〉
  4 転回、空中にて――子午線と〈石〉としての〈名〉

V 物語の光学

 物語の狂気/狂気の物語
  1 現存在の《誰》――ハイデガーにおける物語の抹消
  2 レシの狂気――ブランショ『白日の狂気』を読む
  3 法と良心――誰が呼ぶのか?

VI 物語と実存

 墜落と希望――ブルトン『ナジャ』における

感想・レビュー・書評

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  • 著者の論文集ですが、「この本は、西欧近代における「表象」と「主体」の構造的な相関関係を、ゆるやかな歴史的なパースペクティヴのもとに論究しようとしたものである」と「あとがき」に書かれているように、ある程度まとまった内容になっています。

    論文「デカルト的透視法」では、デカルトのコギトがエゴであるよりもむしろ「自然の光」によって照らし出される「表象装置」として規定されていることに着目し、さらにそうした発想が透視図法的な視点へとつながっていくことが論じられています。著者の議論は興味深いものですが、こうしたテーマをあつかうのであれば、デカルトからライプニッツへの展開を視野に入れて論じるべきではなかったかとも思います。

    論文「無の眼差しと光り輝く身体」は、フーコーが『言葉と物』において詳細な分析をおこなったベラスケスの「ラス・メニナス」についてあらためて考察をおこない、「絵画」という表象から「歴史」や「制度」、「知」といった「外部」へと視点の転換を敢行したフーコーがなぜかそれについて論じるとすることのない、マルガリータ姫の身体に注目し、それがいわばフーコーによる視点の回転にとって空虚な中心の役割を果たしていることを解明しています。

    論文「大地論序説」では、宇宙から見た地球の写真によって「大地」から「根こぎ」にされてしまうことの不安を語るハイデガーの議論についての検討からはじめて、「大地」からの声を送り届けるリルケの「詩人」と、もはやそうした「大地」への信頼を喪失してしまったツェランの立場を対比することによって、ハイデガーとツェランの関係についての興味深い視点を提供しています。また論文「物語の光学」では、ハイデガーの『存在と時間』とブランショの『白日の狂気』が対比的に論じられています。ハイデガーは現存在のありようを、「本来性」の地平へ向けて問いかけ、「良心」の声に耳を傾けるという道を示しました。これに対してブランショは、「狂気」という地平へ向けて「物語」を語りかけており、そこに示されているいわばカフカ的な「法廷」状況が、ハイデガーにおいて論じられることのなかった問題圏を指し示しているということが論じられています。

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著者プロフィール

東京大学名誉教授

「2023年 『知のモラル 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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