- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784634151093
感想・レビュー・書評
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ブックガイドと呼べる本は実にたくさんある。
書評本、読書論、読書法・読書術といえる本も、古今東西たくさん出ている。
たぶんこれからも出続けるだろう。
全てを網羅するつもりはないが、読んでみていいなと思った本は載せることにしている。
お好きな作家さんの書いたものなら手に取りやすいかと思い、いきおいその数も増えることになった。
そして今回は画家さんだ。ファンの多い安野光雅さん。これがまた面白いのだ。
短めの読みやすいセンテンス。簡潔な文章。ユーモアと微かな批判精神。
全26冊で、書評と言うよりは長めのエッセイとしてどれも楽しく読める。引用はやや多めで、桂文楽の落語『寝床』にいたっては全文表示だ。
とりあげられた本も珍しいものが多く、思わず何冊も検索してみたり。
目次はそれぞれの本の象徴的なワンフレーズになっていて、これも面白い趣向だ。
小説などを読んでいて、作者が言いたい言葉が見つかる時ってあるでしょう?
登場人物のセリフだとか文章の中だとか。それがそのまま目次として生かされている。
「じぶんの背中だけは一生ふれられない」
これは寺田虎彦の『自画像』の目次だ。
本文中にもその部分は抜粋されている。
何のこと?と思うことが読むきっかけになるという目次作りだ。
安野さんの枕頭の書であるという森鴎外の『椋鳥通信』においては「腎臓結石などの石は鉱物学的にみて何なのか」というものだ。
尻馬に乗って異端審問を考え出した著者の、珍問のひとつだ。
正岡子規の『ベースボール』は「この球こそこの遊戯の中心にして球の行く処すなわち遊戯の中心なり」だ。野球の説明文の中の一説だが、なんと上手い言い方だろう。
尊敬するというモームの『人間の絆』ではこういう目次。
「死ぬのは後から来る人のために場所を空けておくことだ」。
フィリップかモームか、読みながら混沌としてくる様がありありと語られていて、私がここが一番好きだ。
安野さんによるモームの似顔絵もあり、「人生無意味観」についてちょっぴり哲学している。
「誰でも死ぬ。例外はない。死ぬのは後から来る人のために場所を空けておくことだ。場所だけではない。汚れていない水と、汚染されていない空気だ。他に何も残すものがなくてもこれだけは残しておきたい」
全ての作品にご本人の挿絵入り。
表紙のリンドウと、中表紙のカーネーションも淡彩で美しい。
[だれも知らない心の中を美しく装いたい。それは人に知られなくて、いいことなんだと悟りたいと思う。そのために何でもいいから本を読んでもらいたい。]
何と心に響く後書きだろう。
画家さんの語る本の話。ちょっと新鮮ですよ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
安野光雅さんによる読書案内。
安野さんの絵本は読んだことがあるけれど、エッセイは初めて読みました。
紹介されている本からの引用が多めで、安野さんと一緒にその本を読んでいるような気持ちになれました。
安野さんの絵とそれに添えられた短いコメントもすてきです。
司馬遼太郎の肖像の横に手書きで小さく書かれた「これはよそいきの顔」という文字···よそいきじゃない顔が気になります。
外見を美しく飾るのではなく、本を読んで心の中を美しくすること。
そして、それは人に知られずともよいということ。
"インスタ映え"が流行語になった1年の最後に、あとがきに書かれた安野さんの「悟り」を噛みしめながら読了。
私もこの「悟り」を大切にしていきたいです。 -
画家、絵本作家の安野氏のお勧め本に関するエッセー。
最後のあとがきのところの本をよむことに関しての
効果について書かれているところについて同意と、納得を
覚えます。
薦められている本のなかで読んだものはあまりにも少なく。
まだまだ読むべき本はよの中に数えきれないくらいある
のだと思いました。
だから本を読むということに意義があるのだろうと思います。 -
絵本作家としても有名な著者による本です。
表紙の花の絵が印象的です。
姫路大学附属図書館の蔵書を確認する→
https://library.koutoku.ac.jp/opac/opac_link/bibid/SS00099606 -
なんの本を読むか、困ったときに助けとなりそう。
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本の本
読書 -
本を読むうえで面白い本を見つけることができる本だと思う。
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特に興味を引いたのはモーム『人間の絆』と遠山啓『数学入門』。