ポリス社会に生きる (世界史リブレット)

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著者 : 前沢伸行
  • 山川出版社 (1998年3月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (91ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634340206

ポリス社会に生きる (世界史リブレット)の感想・レビュー・書評

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  • 本書は前5世紀末~前4世紀前半のアテナイに生きた、パシオーンとその息子アポロドーロスの生涯を通じて当時のポリス社会を描いています。パシオーンは当初奴隷でありましたが、主人から解放され在留外人(メトイコイ)の資格を与えられ、銀行家として財をなし、盾工場経営するなど手腕を発揮して、長年のポリスに対する功績が認められて市民資格を与えられた人物です。
    これに対する息子は、「普通の市民」以上の市民をめざして公的活動を繰り広げていました。
    著者はこの2人の生涯の軌跡を通じて、「奴隷制という差別の体系に基盤をおいていた民主政期のポリス社会の実態をいささかなりとも明らかにしよう」(4頁)としたものです。
    彼らの活動は当時の裁判記録に残っており、そこから彼らの生涯を復元しているのですが、古典期のアテナイでは、民会のさまざまな決議や法、公金収支の記録や神殿財産の目録などが大理石の板にきざまれてアクロポリスやアゴラ(広場)など人が多く集まった場所に公示されていたそうです。
    この時期この地域の知識について高校世界史以上のものを持っておらず、また読解力も不足している私なので恐縮ですが、正直著者が2人を通じて何を読者に一番に伝えたかったのかを理解することはできませんでした。ただ、ペロポネソス戦争中(もしくは直後)というアテナイの民主政が危機的な状況にあるとき、それでもしっかりと民主政が機能していたという事実(きちんと裁判がおこなわれていた!)は、ペロポネソス戦争の影響(没落市民の増加と市民軍の崩壊など)ばかりに注目していた私には目からウロコでした。改めて教科書を読み直せば、山川出版社『詳説世界史』にもしっかりと「敗戦後も民主政をまもり続けたアテネは勢力を回復」と書いてあります。太字ゴシックの歴史用語や目に見える大きな変化にばかり目が位置がちですが、実は教科書の一節一節が当時を生きる人のことを伝えようと教科書作成者が注意深く記述した文章であると強く感じました。教科書は本当に注意深く読み込まなければいけないものであり、また読めば読むほど新しい発見がある、まだまだ知らないことがいっぱいあることを気付かせてくれた本でもありました。

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