歴史のなかのソ連 (世界史リブレット 92)

著者 :
  • 山川出版社
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本棚登録 : 79
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (90ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634349209

作品紹介・あらすじ

ソ連という「社会主義国家」があった。新聞などでは文脈に関係なく「旧」をつけられている、あの国だ。ソ連は約七〇年にわたり存在し、世界に大きな影響を及ぼした。その事実は、社会主義が魅力を失い、ソ連という国自体が消滅しても、消えることはない。ならば、この国について、忘却にまかせるのではなく理解を深めるほうがよいのではないだろうか。歴史のなかの存在となった今、ソ連とはどのような国であったのか、考えつつ記したのが本書である。

感想・レビュー・書評

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  • ソ連の成立から崩壊までの政治経済史。近所の書店のウクライナ関連コーナーで見つけて、手に取った。ソ連を知ることは、今のロシアを知ること、という書店員さんのメッセージなのだろう。

    わずか90ページながら、レーニンからゴルバチョフまでの権力体制の変遷、対外関係、農業集団化、重工業の育成……、などなど盛りだくさんの内容が手際よく叙述されている。モノクロかつ小サイズながら政治ポスターも多く収録されていて、プロパガンダの雰囲気も窺える。

    社会主義は経済成長に失敗したということはよく言われる。本書を読むとこれは決して後知恵ではなく、経済がうまくいっていないことはフルシチョフ以降の指導者は既に十分認識していたようだ。で、色々な対策を立てるわけだが、結局多くが裏目にでて、ソ連崩壊に至る。中央集権的な計画経済の運営は、何とも難しいのである。

  • 期待したほど濃い内容ではなかったが、ピンポイントは抑えられていて大変参考になった。さすが山川出版。このシリーズ、なかなか興味深い。

    まあ、マルクスをちゃんと読んでない時点で共産主義を理解しようとする資格はないのかもしれませんが(今さら読もうかどうしようか・・・)、、、

    おそらく、共産主義の要諦は「経済活動の管理・計画化」と、そこから得られる「富の集約と再配分(の国家による決定)」にあるのではないだろうか。

    共産主義自体は、ソ連の崩壊によってかつての神話を失ってしまったわけだが、しかし一方で、ある一定の期間、ソ連は全盛期のアメリカを向こうに回して世界を二分する東側勢力の盟主として立派に(?)存在しており、軍事、宇宙開発などの象徴的な分野で、(少なくとも印象的には)がっぷり四つに渡り合っていた。

    そのポイントは、「集中」にあるのではないかと感じる。例えば現代の日本で話題になっている「法人税」を、業界によって企業によって変えるなどということは、企業=国営だったわけで、朝飯前だったはずである。そういう意味では、変化の激しい時代、或いは一点豪華主義で物事が動く時代には、非常に有効なシステムなのかもしれない。

    しかしよく考えてみたら、日本の企業もこの「共産主義」に似ていないか。頑張っても頑張っても、仕事の成果が直接自分の給料に反映されるわけではない。成果主義はなかなか導入されず、企業全体の利益が上がれば、みんなの給料がじわっと上がる。企業の繁栄が自らの幸福につながると信じて、一人ひとりが日々、努力する。

    ソ連国民のモチベーションはどこにあったか。二つあると思う。一つは、自らの生活が、少しずつ改善してほしいという期待。もう一方は、自らが属するソ連という国が、世界に冠たる、世界を代表する国家であり、今後もあり続けてほしいという期待。ソ連崩壊の引き金は、この『期待』の瓦解ではなかったか。

    企業も、構造は似ている。

    現代中国も、政治では当時のソ連と同じ「共産党一党独裁」の国家である。ただし経済は市場経済の枠組みの中にいる。この2点のバランスの下に中国はいる。これが理想形のように感じることもままあるが、本当にそうだろうか。もう少しじっくり考えてみたいテーマだ。

    しかし、独ソ不可侵条約の締結といい、日ソ中立条約の有効期間中の宣戦布告といい、本当にソ連と言う国は「手段を選ばない」国だ。シベリア抑留の一件は、どうしても納得がいかない。

  • この分量という制約を鑑みると、非常によくまとまっていることがわかります。
    松戸氏の『ソ連史』はこれをもう少し詳細にしたものです。

  • ソ連誕生から崩壊までが、簡易な筆致で描かれている。
    ページ数は少ないが、コンパクトにまとまっており、ソ連の歴史を知るにはかなり有用だと言える。

  • 現・北海学園大学法学部准教授の松戸清裕による、世界史リブレットでのソ連史入門。

    【構成】
     20世紀におけるソ連
     1、「社会主義国家」建設の苦難
     2、第二次世界大戦後の世界とソ連
     3、「アメリカ合衆国に追いつき追いこす」
     4、「安定」から「停滞」へ
     5、冷戦の終結とソ連の解体

     わずか88ページでソ連という巨大社会主義国家の歴史がダイジェストでわかるお手軽な入門書。メインとなるのは、レーニンでもトロツキーでもスターリンでもなく、フルシチョフからブレジネフの1950年代から60年代。その中でも特にコルホーズへの農業政策の変化が、簡潔に記されており面白い。

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