- Amazon.co.jp ・本 (102ページ)
- / ISBN・EAN: 9784634350083
作品紹介・あらすじ
「背教者」と呼ばれるユリアヌスは、コンスタンティヌス大帝の甥として生まれながら、幼くして両親を失い、孤独で幸薄い幼少年期を生きた。そのユリアヌスが、数奇な運命によってローマ皇帝となった。本書は、文学・哲学を愛する青年だったユリアヌスが突然帝国政治のただ中に放り込まれ、逸脱を繰り返しながらも伝統宗教の復興や対外遠征などの課題に立ち向かったその姿を追いながら、後期ローマ帝国の実相を描き出そうと試みる。
感想・レビュー・書評
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烏兎の庭 第六部 4.6.21
http://www5e.biglobe.ne.jp/~utouto/uto06/diary/d2104.html#0406詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
逸脱の…と捉えると、周囲の予想を逸脱した軍事的才能を見せ、皇帝コンスタンティウス二世の敷いたレールを逸脱し、反乱し皇帝位に登り詰め。当時の宮廷文化、政治文化、規範から逸脱した施作を展開。伝統宗教を復興する試みは、当初、信仰の自由、宗教的寛容の中で実現しようとしたものの、次第に、独自の哲学観、禁欲的生活信条が前面に押し出され、一般市民、キリスト教徒のみならず、伝統宗教を信仰するものの理解をも逸脱していった、と。ただ一度ローマ人らしくふるまったのがペルシア遠征であったが、成果をあげられず、死を招いてしまった、と。反乱の際には、従来、周囲におされ、止む無く、といったユリアヌス像が有力であったが、状況証拠や事後の展開から考えると、本人が積極的で、主導権をとり、周囲に認めさせたのではないか、という説も提示されているのだとか。巻末に思想面から研究をすすめられている中西恭子氏の論文があげられているが、単著にまとまると個人的にはうれしく思う。