マイノリティと国民国家: フィリピンのムスリム (イスラームを知る 9)

著者 :
  • 山川出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (106ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634474697

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  • 川島緑『マイノリティと国民国家  フィリピンのムスリム』山川出版社、読了。20世紀フィリピンにおける国民国家とマイノリティに関する問題を、イスラーム運動という視座から理解しようとする骨太な報告。「マイノリティ・ムスリムと国民国家の関係を多面的・動態的」の現況を描いています。

    イスラーム・マイノリティは、従来は国民国家の側から記述されるばかりであったが、「イスラーム運動の側から国民国家をみるという視点が重要」。そこで著者は現地の人々の協力を得ながら、マラナオ語やタウスグ語等々の現地語資料を共同作業で読み進める。

    その作業から「フィリピンのムスリムがおこなってきたさまざまな宗教・政治・社会運動の全体像を描き、そのなかにモロ民族独立運動を位置づけ、それをつうじてマイノリティ・ムスリムと国民国家の関係を多面的・動態的に理解しよう」と試みる。

    フィリピンのムスリムと一口に言っても実態は多様だ。政治的傾向のみならず、地域、社会、家族、個人などによって様々である。そして筆者の報告からは、紛争はもうたくさんだという人々の声が伝わってくる。最後は女性の教育に期待をかけて結ぶのも印象的。続

    本書はお勧めです。筆者の関心は「現在、一番関心のあるテーマは、自分の対象とする地域社会ににおいて、人々はどのような「公正」観念を持っていて、それが社会変革運動やそれを支える思想にどのように結びついているかという問題です。 現地体験に根ざす等身大の問題意識と、文献研究による抽象的な理論研究、そして、一次史料の厳密な解釈に基づく歴史研究はどれも重要であるという立場に立ち、それら三者の統合を目指していきたいと思います」。(上智大学の教員紹介欄より)

    http://www.info.sophia.ac.jp/asiffs/professors/kawashima_midori.html

    単一国民国家のインドネシアが最大のムスリムを抱える「国家」であるように、「アラブ砂漠の宗教」という典型的なイメージを更新する必要はますますありますね。フィリピンのムスリムについての報告を読みつつ、そう実感した次第です

  • フィリピンのイスラムを研究する場合、最大の障害は資料の問題。
    英語が偏重されるフィリピンではその重要性が認められず、体系的な収集や保存がされてこなかった。

    フィリピンの占領統治政策にあたってムスリム研究も行われたが、それらはアメリカ植民時にアメリカ人が執筆した英語文献に大きく依存している。日本人は総じてムスリムをキリスト教徒よりも未開な野蛮人として見下していた。

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