イスラーム銀行: 金融と国際経済 (イスラームを知る 12)

  • 山川出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (121ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634474727

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  • 一章 イスラム銀行の誕生
    ・1975年、ドバイにて商業銀行としてのイスラム銀行が登場。
    二章 なぜ、利子はいけないのか? 
    ・リバー禁止の四つの根拠
    1 公平性:出資者はリスクを完全に回避できる
    2 所有権:神が元来全てを所有。人間がそれを所有物にできるのは、それを使うためである。他人に貸与して利子の収入を得るのは、財を保有する根拠に反する。
    3 不労所得の禁止
    4 等価交換の原則:利子を付けるなら不等価交換になる

    三章 イスラムの経済思想
    四章 世界に飛躍するイスラム金融
    五章 イスラム金融の作り方
    六章 イスラム金融から世界経済が見える
    ・進化に伴う批判と課題
    ○シャリーアコンプライアンスのコストが高すぎるため経済的に非効率。
    ○法学者は形式的な適合性のみをチェックし、実質的な適合性を看過している。

    将来像に対する考え方
    ○従来型の金融のオルタナティブとして肩を並べる存在となるべき
    ○従来型の金融との差別化により、望ましい金融のあり方としてのオルタナティブを追求すべき。従来型の金融によるサービスが行き届かない領域や、従来型の金融システムによる負の皺寄せが及ぶ部分に対して積極的な展開をしていくことで、人々にとってより望ましい金融のあり方をイスラム的に再構築していくべき。

  • ムシャーラカ契約は、複数の取引当事者の出資によって事業組合を設立し、組合の事業から発生した利益と損失を当事者の間で分配
    イスティスナーウ契約
    不確実性はガラルと呼ばれ、イスラーム法で禁止されている。
    カルド・ハサン契約のは相互扶助の精神に立脚した無利子融資

  • イスラーム銀行の基礎はひと通りおさえられんじゃないか。
    なによりも読みやすい。その気になれば2時間くらいで読めると思う。

  • イスラム金融の基礎習得完了。

  • [ 内容 ]


    [ 目次 ]
    第1章 イスラーム銀行の誕生
    第2章 なぜ、利子はいけないのか
    第3章 イスラームの経済思想
    第4章 世界に飛躍するイスラーム金融
    第5章 イスラーム金融のつくり方
    第6章 イスラーム金融から世界経済が見える

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    [ 参考となる書評 ]

  • イスラームの教えでは利子(利息)をとってはいけません。銀行は預金者に利子を払い、債務者から利子をとることによって成り立っています。この相対する条件の中存続するイスラーム銀行についての解説です。
    「イスラームの銀行は利子を取らない」というネタは、世界史や倫理でイスラームについて話す際によく使うことですが、この言葉には2つの問題があります。まず1つはイスラーム世界にも利子を取る銀行が存在していること。イスラーム諸国の経済における、利子を取らない銀行=イスラーム銀行の割合は多くても3割程度だそうです。もう1つは、イスラーム銀行も会社として存続するために利用者からある程度の利益を得ていることです。では、利子を取らないでイスラーム銀行はどのように成り立っているのでしょうか。
    イスラーム銀行では、あらゆる金融商品についてウラマー(イスラーム法学者)のお墨付きがついています。各銀行には専属のウラマーが、この商品がイスラーム法(シャリーア)に抵触しないことを『コーラン』やスンナ(ムハンマドの言行)を集めたハディース(言行録)を提示して説明し、利用者を安心させます。こうしてイスラーム銀行は急成長を遂げています。
    では、具体的にどうやって利子を取らずに利益を上げているのでしょうか。そこでのキーワードは「公平性」です。銀行がお金を預かる場合、もしくは貸す場合元金とそれにつく利子は保障されます。つまり、預金者に対する銀行が、ないし銀行に対する借り主が損失を出しても出資者たる預金者ないし銀行は1円(アラブの通貨はディナールなどですが)も損をすることなく儲けを受けることができるのです。これが不公平にあたることになります。ということでリスクと利益を公平にすれば、この問題は解決します。第1の方法として挙げられるムダーラバ契約は、資金提供者と資金を事業者が利益もしくは損害を出し合う「損益分配方式」による取引です。この方法は預金にも応用されます。つまり、預金者はもし預け先の銀行が倒産したら、預金額に見合った損を被ることになります。日本のペイオフ制度と似たような制度という印象を持ちました。
    第2の方法はムシャーラカ契約といわれるもので、複数の取引当事者の出資によって事業組合を設立し、利益と損失を分担し合う制度ということになります。これを応用しますと、住宅ローンなどの個人による多額の借り入れの代替にも使われます。つまり銀行と個人が住宅を共同購入し(つまり所有権は双方が持つ)、個人が銀行の出資分を分割で購入することによって、所有権が個人に移るという方式です。
    次に売買契約を応用するムラーバハ契約で、例えば個人が自動車を買いたい場合、まず銀行がその自動車を買います。そして、改めて銀行が仕入れ価格(自動車を購入した価格)に利潤(マークアップ)を上乗せして個人に売買するのです。この際支払いは通常の銀行が自動車ローンを組むよう、分割でも繰延払いでもよいということになります。
    また、イスラームでは賭け事が厳禁されていますが、先渡し取引契約(新たに住宅を建てるときの費用を借りる場合など)はこれに抵触しかねません。この問題に関しては確実性を挙げることによってギャンブル性を抑えることを前提として、商品の完成具合や製作の進捗状況に応じて代金が順次支払われるイスティスナーウ契約や、農作物などのように代金を一括して前払いするサラム契約などがあります。
    さらに、銀行が商品を購入し、それをリースという形で用益権を顧客に売り、ある程度リース期間が過ぎると顧客が購入することによって所有権が顧客に移るイジャーラ契約というのもあります。

    何だか法の隙間をついた、うまい(悪く言えばずるがしこい)方法のように見えますが、この応用力・柔軟性こそ商人の宗教たるイスラームの特徴のように思えます。間違っても、イスラーム銀行=利子を取らないから借りやすいというものではありません。

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著者プロフィール

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授。専門は、イスラーム学、中東地域研究、比較政治学、国際関係学、比較文明学。
 1953年生まれ。北海道夕張市出身。1983年エジプト国立アズハル大学イスラーム学部卒業。1984年国際大学大学院国際関係学研究科助手、1985年国際大学中東研究所主任研究員・主幹、1990年英国ケンブリッジ大学中東研究センター客員研究員、1997年国際大学大学院国際関係学研究科教授などを経て、1998年から現職。2006年より同研究科附属イスラーム地域研究センター長併任。京都大学・法学博士。1986年流沙海西奨学会賞、1994年サントリー学芸賞、2002年毎日出版文化賞、2005年大同生命地域研究奨励賞を受賞。2005〜2011年日本学術会議会員。
 思想史においては7世紀から現代に至るアラビア語で書かれた史資料を用いた研究をおこない、現代に関してはアラブ諸国とアラブ域内政治を中心に中東を研究し、さらに近年は広域的なイスラーム世界論を展開してきた。また、日本からの発信として「イスラーム地域研究」を歴史研究・原典研究と現代的な地域研究を架橋する新領域として確立することをめざしている。
【主な著書】
『現代中東とイスラーム政治』(単著、昭和堂)、『イスラームとは何か─その宗教・社会・文化』(単著、講談社現代新書)、『ムハンマド─イスラームの源流をたずねて』(単著、山川出版社)、『「クルアーン」─語りかけるイスラーム』(単著、岩波書店)、『イスラーム帝国のジハード』(単著、講談社)、『現代イスラーム世界論』(単著、名古屋大学出版会)、『イスラームに何がおきているのか─現代世界とイスラーム復興』(編著、平凡社)、『現代イスラーム思想と政治運動』(共編著、東京大学出版会)、『イスラーム銀行─金融と国際経済』(共著、山川出版社)、『岩波イスラーム辞典』(共編、岩波書店)、『ワードマップ イスラーム─社会生活・思想・歴史』(共編、新曜社)、『京大式 アラビア語実践マニュアル』(共著、京都大学イスラーム地域研究センター)、Intellectuals in the Modern Islamic World: Transmission, Transformation, Communication(共編著、Routledge)、Al−Manar 1898−1935 (監修、京都大学COEプロジェクト、アラビア語『マナール』誌・CD−ROM復刻版)他。

「2011年 『イスラーム 文明と国家の形成』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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