もういちど読む山川地理

著者 :
  • 山川出版社
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本棚登録 : 257
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634590755

感想・レビュー・書評

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  •  山川の「もういちど読む」シリーズ。おれの本棚3冊目。でもそもそも山川って日本史と世界史の教科書は出してるけど地理とか出してるのか?と思う。教科書っぽい体裁でノスタルジーを楽しむ1冊。
     p.Iの「まえがき」によれば、「地理の履修者が減少して」おり、「したがって地理の教員採用が減少し、大学でも地理の受講生が減少する傾向が進んでいる。ニュースとしては聞いている外国の地名が、実はどこのことなのか、そこがどのようなところなのかを知る基礎的知識を持っていない学生が多い」らしい。結構、理系では地理の選択はメジャーだと思うけど、結局おれは中学以来地理を習ったことがなく、高校の地理ってどういうことをするのか謎だった。ちなみに中学で習った地理と言えば、地域ごとの白地図で山脈とか海峡とか覚えるのが地理で、それ以上の勉強が記憶にない。特に今でも覚えている授業は、先生が全員立たせて、白地図のある部分を指しながら「この国の名前は?」とか「この川の名前は?」とかを順番に当てながら聞いていき、答えられないとずっと立たされたまま、という授業。たまたま「ジブラルタル海峡」が答えられて安心したのを覚えているが、なんかイヤな授業だった。ちなみに小学校でもそんな授業があった気がする。
     この本がどれだけ高校の本物の教科書に近いのか、あるいは履修する内容を網羅しているのかは分からないが、とりあえず地理の世界独特の用語に思えるものが結構出てきて、やっぱり高校の科目はそういうものなのか、とか思ってしまう。概念自体は独特で新しいものという訳でもないと思うのだけど、例えば「粟散国」とか「漸移帯」とか、「踏み分け路」とか「林隙村」とか、なんかこういうのを知るのが勉強なのか、という錯覚?に陥らせるには十分な内容という感じがした。
     そもそも地理という教科書は「地誌」と「一般地理学」という2つに分かれるらしい。そうすると中学でやってたのは「地誌」ばっかりだったなあという感じがする。今回、謎の科目だった地理という科目について、(おそらく)網羅的に見れて、良かったと思った。
     あとは面白かった部分のメモ。国家間が結びつくのは政治的(NATOとか)、経済的(NAFTAとか)、以外に「歴史的連帯性・文化的親近性・地域的近接性などの理由で結びつく国々もある」(p.31)らしい。「フランコフォニー国際組織」とかいって「フランス文化に関心を寄せる国々の文化にねざした組織」(p.32)とかあるらしい。p.54には「夏至・当時における各緯度上の昼間・夜間時間」というグラフがあって、そうするとパリは夏至の時4時前から20時過ぎまでは完全に明るいらしい。意外。あとはpp.71-2の「縮小するアラル海」の話。「漁業は放棄され、砂漠には漁船が野曝しになっているありさまである。過剰な灌漑用水の摂取とともに化学肥料の乱用は地下水を、また干上がった湖岸から巻き上げられる塩分の多いほこりは大気を汚染し、周辺の地域に最悪の環境をつくっている。」(p.72)ということで悲惨。さらにその後には荒野になったセミパラチンスクという、元旧ソ連の核実験場の話も書いてあり、なんかますます悲惨な印象だった。次はアメリカの話で、「農場主の農民はスーツケース一つをもってやってきて、農業機械の運営会社と契約をして作業を委託する。(略)ファーマーの仕事はコンピュータを用い、穀物価格をみて、大型穀物倉庫の収穫物を、いつ、どこに出荷をするかを決めることとなる。」(p.79)らしい。これも全然イメージと違う話だ。あとは「Tシャツでさえも、ヨーロッパの農民の下着をアメリカ軍兵士が愛用して世界的な衣類となっている」(p.83)らしい。Tシャツの起源なんて聞いたことなかった。オーストラリアの話で、「羊の毛刈りの作業は、剪毛団と呼ばれる専門の業者が年に1回行なう」(p.110)ということで、「剪毛団」なんていう言葉を初めて聞いた。同じように初めて聞いた言葉の中には、中国の「民工」、「民工潮」、「盲流」(p.170)というのがあって、こっちはたぶん中国語をそのまま使っているのだろうか。そして中国の話では、「製品も当初の輸出用デザインから中国向けデザインへと変更が進められた。たとえば、淡く渋い日本向け色彩のアパレル製品が、赤や黄色など中国向けの色彩に変質しつつある」(p.165)らしく、なんか淡い色が受ける日本と、原色好きな中国人、というのが分かりやすい。最後に、「訪問販売」の話で、「訪問販売では、江戸時代から続く富山の配置家庭薬の販売が有名である。」(p.250)ということで、「訪問先を記す顧客名簿(懸場帳)が高値で売買される」らしい。なんか富山が薬で有名なのは知っているし、こういう文化があるのも知ってたけど、家のクスリなんてそんな減るものじゃないのに、こういう文化がずっと残っているなんて不思議だ。
     という訳で、色々勉強になったので、今度は別の予備校のセンター地理対策の本とか読んでみようか、と思う。あと2017年に「新版」というのも出ているらしく、どこがどう変わっているのかも知りたい。基本的に地理を勉強すると世界史の勉強にも役に立つということが実感できた。あと、高校生みたいに地図を見ながら出てきた山や川などの地名を確認しながら一生懸命読んだりする人は少ない?かもしれないので、そこは社会人向けということで、特に地誌のところは、各地域ごとに地図も載せてくれていれば嬉しい。(18/11/23)

  • 図書館

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784634590755

  • 高校の時に地理を履修していたが、全く勉強しておらず、図書館に行ってたまたま手にして、ちょうど会社も夏休みなので、読んでみることにした。
    懐かしい感じがした。一気に読んだので理解はそれほどしていないけど。。。

  • 本書は高校の教科書で有名なシリーズを底本として、地理学に無縁な人びと、現在の地理的常識を 伝えるためにとまとめたものであります。個人的には学校教育を離れてずいぶん経っていた頃に読んだので新鮮でした。

    僕は高校時代、地理の授業を受けたことはありません。理由はシンプルそのもので、中学時代に、歴史に比べて若干ながら地理のほうが苦手なものだったので、苦手意識があったのです。

    今回、今まで読んでい『もう一度読む山川』シリーズの全てを読んでいたので、地理を読まないわけにはイカンだろうと、そういう理由で手にとって見ることにいたしました。地理のテキストを本格的に読んだのは中学校を卒業してからになるので、もうウン十年前の話になるかと思います。一読して『あぁ、こういうことを昔教わったなぁ』というおぼろげな記憶と、あんなこともあったのか、こんなこともあったのかと思いながらページをめくっておりました。

    『地球を読む』という触れ込みとおり、いまや人口が70億人を突破した地球のどこに人が住んでいるのか?アジア、ヨーロッパ、アメリカ…。その場所場所にとって様々な文化があり、気候があり、民族がいるということがよーくわかりました。

    テレビなどでニュースを見ても、アナウンサーがその地名を言うときにも『あぁ、あそこか』ぐらいな認識しかありませんでしたが、これで自分の中にも詳細な『世界地図』ができたのかなと、現在では思っております。社会人の方がもう一度勉強したいなと思うときの取っ掛かりとして手に取っていただければ幸いに思います。

  • 第一部は各地域の現代史で導入のおもむき。第二部が地球規模のマクロな視点から、まさに"地理学"的。地理の場合は政治・経済と同じでニュースなどにアンテナをはっておけば常識の範囲といったかんじ(とくに第一部)。インドの富裕層1割=日本の総人口[p165]、 中国の高所得者層(総人口の10%)=日本の総人口[p171-172]で、日本はどうやって太刀打ちしていくだろう?

  • 高校地理のおさらい。

  • 購入
    20年前の内容からは大きく変わってるなぁ
    内容は期待ほど深くなく、やや残念

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