ドキュメント 道迷い遭難

著者 :
  • 山と溪谷社
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感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784635140065

作品紹介・あらすじ

道に迷い、何日間も山中をさまよう恐怖-。登山者の盲点でもある、誰もが陥りがちな道迷い遭難。その7件の事例を取り上げ、原因を探り未然に防ぐ方策を検証する。

感想・レビュー・書評

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  • たしかダヴィンチで知った本。ある程度登山を経験している人たちがどのような考えで遭難に至って救助されたのかをインタビューを基に書かれた本。どれもちょっとした安易な判断により、悪い方悪い方へと進んでしまう。平常時ではおかしいと思っても、実際に追いおこまれた状況では最善だと判断してしまうと書かれている。安全が当たり前の社会で自然の中ではそうはいかないと気づかせてくれる1冊だった。

  • 沢に降りるな、尾根に向かえ
    迷ったら、引き返す勇気
    分かっちゃいるんだがね

    冬山で谷筋(雪崩の危険)を降り、凍傷で指を失う
    下が確認できない状況で滝つぼがあるという前提で飛び込む
    幻視・幻聴も

    千葉の30人一晩ビバークは「マスコミが煽った遭難」

  • 山岳遭難ドキュメントシリーズ。
    山登りに限らずの話だが、人間は動き始める決断を下すよりも、既に動き始めたあとで「なにかオカシイな」と感じたときに、動き始める前まで引き返すという決断を下すのが一層難しい。
    「折角ここまで時間を手間をお金をかけたのだから」という心理によって。

  • 読みやすくてさくっと読み終わりました。大変参考になります。

  • 道迷いによる遭難から生還した7つの事例。
    それぞれに地図の不携帯、軽い装備、山行計画書の不備などの問題点があるのだが、本書では特に判断ミスをする心理に焦点があてられている。
    それは、望ましくない事実から目を背けてしまう気持ち。「道が違うかも」とか、「ここは登り返すべき」とか「今日中の下山は無理」とか、本当はわかっているのにやみくもに下ってしまう。
    私も引き返すべきところで決断できなかった経験があって、身につまされた。

    ところで、2つの事例で下の方に赤い屋根の小屋が見えたという。彼らはそれで「この道で行ける!」と誤認、山深く入り込んでしまった。
    これを読んでゾッとした。私も去年、赤い屋根の小屋を見たからだ。道こそ迷っていなかったが、麓までの距離を錯覚。すぐ近くだと思ったのにいつまでたっても着かず、やっとたどり着いた麓の小屋は、茶色の屋根だった。ちなみに一行の大人は全員赤い屋根を見ている。「あの小屋は何だったんだろうね」などと話していたのだが…、
    人を惑わす、赤い屋根の小屋の妖怪?まさかね…。

  • ・一つ一つの事例が長くなくて読みやすかった。
    ・たいてい、ちょっとおかしいかも?と思うのだがそのまま進んでしまい、戻れなくなってしまう。
    ・登山道に付いているテープなどの印を信用して迷う。地図で正しいのか確認するべき。

  • おかしいなと思いつつ時間の都合で先に進んでしまう危うさ、登れないし降りれないという状況の恐怖を叩きこまれるエピソードが満載。
    山行く前の浮かれた心にはこれぐらいのショックがあっていいと思いますよ。
    本当に危機に直面した時には既に遅い、そういうこと。
    山は自分一人だけの物じゃない、その為に果たさなければならない責任。それを心がけねば。

    • edward0812さん
      祝初レビュー、秀作です
      祝初レビュー、秀作です
      2012/10/21
  • 山における遭難事故の原因として、「道迷い遭難」は全体の約三分の一を占めているそうだ。

    そのきっかけはどれも似たようなもので、山を歩いている最中に「あれ、なんかおかしいな」と違和感を覚え、それでも「進めばどうにかなるだろう」と安易に考えて、その結果沢に降りてしまったり途中で怪我をしてしまったり、自力ではどうにも脱出できないどつぼにハマっていく。

    そんな事例を七件挙げて、どうすべきだったかを分かりやすく検証してくれる良書。

    ただ、読んでいてふと気がついたのだけど、この七例ってのは本当に「奇跡」みたいなもので、生きていたから当事者にインタビューができたものの、それは当たり前ではなくかなりラッキーなケースであったことを忘れてはならない。

    気象遭難の場合は、本人のせいだけではないところもあるが、道迷い遭難に関しては、これはもうかなり本人に責任があると断定して良い。

    作者曰わく、山ではいくつかのセオリーがあって、(←このへんもうちょっと詳しく紹介してくれてたら尚良かった!)
    「迷ったら絶対沢には下らない。稜線を目指して上に登る」とか、
    「危険を察知したら動き回らずに一所にじっとしてる」とか、
    「必ず山行計画を提出し、単独行の場合は周囲に行先を話しておく」
    とか、その辺のことをある程度入念に準備していればかなりちゃんと防げる遭難事故なんだそうだ。

    読んでいて怖かったのが、どの人も、遭難してだんだん追いつめられてくると、自分ではだいぶ冷静な判断を下していると思っても、実はかなり精神的に不安定で、間違った対処をしてしまいがちになるということ。
    何十年も登山に親しんでいる人間でさえ、「もと来た道を帰ろう」という発想には至らず、(いわゆる遭難時のセオリーだって知っているだろうに、)「よし、下ろう」と判断してしまう。
    まぁそういう判断を下してしまう時点で既にパニックなのだが、そこに加えて、人によっては幻視や幻聴も起こり得る。そうしてどんどん深み深みへとハマっていく。

    じゃあ遭難を防ぐためにはどうしたらいいかというと、これといった特別な手法があるわけではなくて、事前の情報収集と入念な準備、あとは、迷った際に「おかしい」と思ったら必ず引き返すことだけだ。

    …とか言っても、いざその立場になってしまったら、
    なかなかどうして頭では分かっていても行動に移すのは難しいのだろうけどね。
    でも、この知識を知っているのと知っていないのでは、万が一の時に生きるか死ぬかの明暗が変わってくると思う。

    しかし、気象遭難を読んでいた時にも痛感したのだけど、「装備」は最低限しっかり揃えておかないと本当にあっという間に死に直結しちゃうんだなぁ。暖かい格好、これはもう必須だね、あと着替えとタオル。レインコートのお手入れ如何も運命の分かれ道。濡れたままの状態になってしまうことは夏でも冬でもかなり危険だ。

    あとは、進むべき方向が分からない分岐にきたら、コンパスと地図できちんと確認すること。これだけでも全然違う。

    山に関する専門書というよりは、素人の普通の読み物としても興味深い一冊。

  • さして面白くもないだろう的に読んでみたがひじょうに考えさせられる内容。事実を基に検証をしているので当然リアルだし引き込まれるしシチュエーションが頭に浮かんでくる。ものすごい速さで読了した。

  • 何度か経験のある山においても遭難してしまう事を実話に基づいて再認識させてくれる。「経験は最高の学習」といわれるがこれだけはリスクが高いので読んで学習できるなら読んでおくに越したことはない。

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著者プロフィール

1961年埼玉県生まれ。ノンフィクションライター。長野県山岳遭難防止アドバイザー。山岳遭難や登山技術の記事を、山岳雑誌「山と溪谷」「岳人」などで発表する一方、自然、沖縄、人物などをテーマに執筆活動を続けている。おもな著書に『ドキュメント 生還』『ドキュメント 道迷い遭難』『野外毒本』『人を襲うクマ』(以上、山と溪谷社)、『山の遭難――あなたの山登りは大丈夫か』(平凡社新書)、『山はおそろしい――必ず生きて帰る! 事故から学ぶ山岳遭難』(幻冬舎新書)などがある。

「2023年 『山のリスクとどう向き合うか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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