創造的論文の書き方

著者 :
  • 有斐閣
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本棚登録 : 574
感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784641076495

作品紹介・あらすじ

本書は、創造的な論文の書き方について、著者の経験からいま著者があるべき姿と思っていることを書いた本である。

感想・レビュー・書評

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  • 論文執筆や研究の方法について書かれた本は、最近ではわりと多い。ただ初版発刊当時は類書は少なかったのだろう。今日であれば、他のリサーチデザインのテキストと見比べて、よさそうであれば読むことを勧める。理由は、対話編・概論編において、比喩の用い方が独特なためだ。これは著者の所属する研究科で扱う細かい知識がある読者を前提にしているように見える。研究方法を説明する上での事例は、平易な方がよいと思う。その方が本書の本質である方法論を理解しやすい。ただし、付録である論文の書き方のメモには、一読の価値がある。修士論文の指導の際、ここに書かれている多くのことを何度も言われた。今では、そのとき論文を書いているから理解できたように感じる。

  • 【有斐閣】
    2001年12月発売
    四六判 並製 カバー付,302ページ
    定価 1,836円(本体 1,700円)
    ISBN 4-641-07649-9

     論文の書き方とはつまるところ研究のしかた考えかたなのだ,という強烈にして当然のメッセージを,学生の悩みに答え,著者の経験を整理し,指導の現場からの手引きを開示してアドバイスする。ハウツーやマニュアルをはるかに超えて展開する,新・学問のすすめ。
    http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/4641076499


    【誤植】
     初版第11刷(2009.1.10)で確認。本書の「目次」に誤字。(p.vii)
    × 「理論と現実との間の行った来たり」
    ○ 「理論と現実との間の行ったり来たり」


    【目次】
    はしがき(二〇〇一年一〇月一五日 伊丹敬之) [i-v]
    目次 [vi-xiii]


    創造的論文とは 001


      対話編 若き弟子たちの悩み 009

    第1章 研究するということ 010
      考えながら歩きまわれば、犬も棒に当たる
      思考実験の回数を増やす
      見えない構造を意識する
      面白いことを追う、不思議なことを探る
      「不思議」と理論志向
      まず、風呂に入る
      どの風呂に入ればいいのか
      あめ玉をポケットに入れておく
      知れば知るほど目が曇る
      何が原点なのかの不動点
      曇った眼鏡の拭き方――理論の貢献
      整理ダンスの作り方
      理論が眼鏡がゆがませる
      「説明できた」とはどういうこと
      説得の三つの方法
      論理重合体合成法のむずかしさ
      精度を合わせる
      精度を無視して強引な結論を出す人々
      理論と現実(データ)との間の行ったり来たり
      一粒で二度おいしい――いい本とは何か
      良い理論とは何か

    第2章 文章を書くということ 064
      プロは舞台裏を見せない
      レポートと論文のちがい
      人はリニアーにしか読めない
      烏の目と虫の目をもつ
      書くことが論理を刺激する
      締切りのない原稿は書けない
      言葉にするといい加減さがよく分かる
      私の文章修業
      文章が論理をドライブする
      概念の厳密な定義は、自分にとって大切
      オーバー・ジェネラリゼーションの諫め
      五〇〇年はもつテーマ――夢を広げる
      自分は何の一部かを考える――結論の飛び方

    第3章 考えるということ,勉強するということ 101
      舞台裏から表舞台へ出る――研究とはなにか
      大きく深く考える
      一〇年はもつテーマを選ぶ
      本は読むべし、しかし読まざるくし


      概論編 研究の仕方,文章の書き方 115

    第1章 テーマを決める 116
    第1節 テーマ探し 116
      京の町家の部屋さがし
      論文のテーマ探しのうろうろ
      入り口は狭く、奥行きは深く
      思考実験をスピーディーに多く
      不動点を意識する
    第2節 「いい」テーマとはなにか 129
      不思議なこと、せめて面白いこと
      一言で言える
      少しの無理
      一〇年はもつ

    第2章 仮説と証拠を育てる 138
    第1節 育てる 138
      起承転結、しかし行きつ戻りつ
      仮説と証拠――論文の中核
      なぜ「育てる」なのか
      一寸の虫にも五分の魂
    第2節 仮説の育て方 148
      仮説の萌芽はどこから?
      現実からの出発
      三つの「現実のまとめ方」
      仮説の源泉
      萌芽から育つまで
      仮説と証拠の螺旋掘り下げでの注意点
    第3節 三つの証拠、三つの説得法 164
      三つのタイプの証拠
      データという証拠
      厚い記述という証拠
      論理という証拠
      三つの説得法
      観察結果法と演繹論理法
      論理重合法
    第4節 現実と理論の往復運動のコツ 177
      往復運動こそが鍵
      言葉を大切に使う
      手を動かす
      中空の観察者
      理論を知る

    第3章 文章に表現する 186
    第1節 表現する 186
      育った樹を描く、それも一次元で
      部品と全体
      アマチュアは自己中心、プロは他人のために書く
      自己嫌悪との戦い
    第2節 幹と枝、根と葉 
      幹は一つ
      枝は枝として、きちんとつける
      根も葉も用意する
      あめ玉を残しておく
    第3節 順序と流れ、つなぎとまとまり 
      描写の順序と流れの三原則
      問題意識とイメージの共有を早く
      つなぎの工夫こそが鍵
      まとまり感と美しい姿の美的感覚
      アウトラインの準備から文章の書き始めまで
      アウトラインと文章の流れの微妙な関係
    第4節 章が論理をドライブする 
      書くことは考えること――四つのキーワード
      文章は正確に、つながりを意識して
      ドライブすることと滑ることのちがい

    第4章 止めを打つ 223
    第1節 止めを打つとは 223
      エンディングであり、結節点
      まとめと三つの案内図
      「はじめに」は、止めを打った後に書く
    第2節 望ましい「止め」とは 230
      止めの距離感と展望感
      オーバー・ジェネラリゼーションの危険
      自分の研究は何の一部だったのか
      誠実に大風呂敷を広げる
      宙を見すえて考える

    第5章 小さな工夫,ふだんの心がけ 241
    第1節 小さな工夫 
      小さな工夫、ふだんの心がけの大切さ
      刺激と整理のために
      集中と助走のために
      見切りと相場感のために
      道具を使う動物としての人間
    第2節 ふだんの心がけ 
      「エルーシブ」へ立ち向かう基本スタンス
      本質は何かをつねに考える
      狭く入って、深く掘る
      烏の目と虫の目を、使い分ける
      スピーディーに思考実験する
      言葉を大切に使う

    付録 論文の書き方について 伊丹メモ[統合版] 271
    I  修士論文の性格付け 271
    II  論文の基本的性格 271
    III 論文の貢献の三つのパターン 273
    IV 概念の表現、定義の正確性について 274
    V  第一稿と最終稿 276
    VI 論理の流れと全体像 277
    VII 文章の書き方について 280
    VIII 論証の際の落とし穴 282
    IX 「論拠の提出」と「発想のきっかけ」の説明について 283
    X  データの取り扱いについて 284
    XI 「現実」との関係について 284
    XII 脚注と参考文献 285

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/0000205660

    藤原雅俊先生(経営管理研究科)推薦

  • 論文を創るということはどういう心持ちで、どのようなことをすればいいのか、が非常に平易に、わかりやすく書かれている。
    何回も読んでみたい書だ。

  • 小田博志フィールドワーク入門のおすすめ本である。フィールドワークについてはほとんど言及していないが、論文の書き方である。しかも付録から考えると修論の書き方がメインである。レポートの書き方ではなかった。

  • 論文執筆で行き詰まった折に触れて読みたい一冊。
    論文提出前はp.271の付録を読み直すべし

  • 研究始めたての頃に読みたかった本。

    ハーシュマンの本、ちゃんと読んでこればよかったな。
    ハーシュマンの本では
    ①理論の概念集合とそれらの関係
    ②その理論がどんな現実から抽象化されて出てきたか
    が勉強になる。
    ①と②を持ち合わせた研究が後世色んな人に影響を与える。

    ・文章を書くことついて
    論文はパーツごとに書いて何度もそれらの間を行き来するうちに、始めて全体像が見える、そこから各パーツの論理的な関係を考えて並べ変えたりしてみる。(すごく共感)

    読者はリニアーにしか読めないから、論文のどのパートがどう関係しあって結論にいたるのかを意識する。

    ・文章修行術
    読んでいて心地いい著者を3人くらい見つけて読み漁る

  • 院生時代
    伊丹先生ファンだったんだなあ。
    東芝が残念でならないが。

  • 音楽への見立てや様々な例え。本当に分かりやすく腹落ちする。論文だけでなく書籍を書くにもこの本の知見を活かすのが良いと思う。何度でも読み返したい。

  • 【創造的論文の書き方】

    ・佐々木さんにお薦めいただいて読了
    ・論文を書く機会は院に進まない限りないかと思うが、普段の業務においても大切だと覆う点をいくつか挙げる

    ①「アマは自分のために文章を書く」「プロは相手のために文章を書く」
    ②仮説とは、発見したりどこかから降ってくるものではなく、自分で育てていくものである


    ■①「アマは自分のために文章を書く」「プロは相手のために文章を書く」
    ・つい自分の仕事ぶりや労力を分かってほしくて、本筋から外れた情報や内容を文章として書き表してしまうことはよくあること。本書は論文の書き方であるとはいえ、提案書や報告書においてもこれは当てはまるか


    ■②仮説とは、発見したりどこかから降ってくるものではなく、自分で育てていくものである
    ・佐々木さんが「示唆を通して顧客に価値を与えるのがコンサルである」と発言されているが、この内容の通りかと思う。どこからか降ってくるような奇抜なものではよい示唆とは言えず、没になる概念や情報を繰り返し吟味しながら生み出す示唆をいかに自分からひねり出せるか。
    そのために、学習の流れを絶やしてはいけないと思う(奥村)

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著者プロフィール

国際大学学長、一橋大学名誉教授
1969年一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。72年カーネギーメロン大学経営大学院博士課程修了・PhD。その後一橋大学商学部で教鞭をとり、85年教授。この間スタンフォード大学客員准教授等を務め、東京理科大学大学院イノベーション研究科教授を経て2017年9月より現職。

「2019年 『激動の平成 日経 平成三部作』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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