- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784641123960
作品紹介・あらすじ
人は常に、自分自身も含めて誰かとコミュニケートしている。本書では、心の中の会話からインターネットでのそれまで、現代のコミュニケーションの姿を理論的に整理し、よりよきコミュニケーションのあり方を探っていく。
感想・レビュー・書評
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1890円購入2010-10-14
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Thu, 22 Jan 2009
17刷出来なわけで,よく売れているのでしょう.
社会学的(?)なコミュニケーションの話について網羅的にとりあつかっている本.
書かれたのは95年頃なのでインターネットの話は序の口.
西垣先生の「マルチメディアはすごいことになる!」という予言めいた話が引用されていて,ここ10年間の時代の急速な変化を感じる.
いきなりミードやブルーマーのシンボリック相互作用論の話が前半にあり,「おお」とおもう.
ざっと目次は
序章 現代のコミュニケーション
第1章 人間のコミュニケーション
第2章 自我とコミュニケーション
第3章 人と人とのコミュニケーション
第4章 電話コミュニケーション
第5章 集団・組織のコミュニケーション
第6章 コミュニティ・コミュニケーション
第7章 集合行動・社会運動のコミュニケーション
第8章 マス・コミュニケーション
第9章 国際コミュニケーション
第10章 高度情報社会のコミュニケーション
と,非常に網羅的なので,これを一人で書いてしまわれるあたりはさすが放送大学教授様だなと思うのである.
かなりトピックが多いので,初めて触れる人には面白い話もおおいかもしれない.
たとえば,二章では「自我」というものが,個人によって規定されずにコミュニケーションを通して
「鏡としての他者を通じて知ることができる」という話が出てくる.
このような概念はラカンの精神分析でも重要で結局,自分自身もシニフィアンにより表象される存在であるという事につながる.
それ故に,自らが所属する民族・文化の持つラングに自らの存在自体が拘束されることになるわけだ.
そこに自らのアイデンティティが制約されるので,その間に避けられぬ齟齬が合った場合には精神が悲鳴を上げる.
と,まあ,この本はラカンは触れてないんですけどね.
あと,うわさの伝播についての話もちょっとおもしろかった.
コミュニケーション(とくにマスメディア,コンシューマ・ジェネレイティッド・メディア)はこの10年,いやこの3,4年で激動の時代を迎えている.
正直,先日就任したオバマの支持率が8割を超えたのもコミュニケーションの地殻変動を伴っていた.
インターネットという大衆のコミュニケーションツールがなかったら,ヒラリー・クリントンの集金マシーンをオバマが超えられたとは思えない.
メディアは国家を規定する.
一時,コミュニケーション研究と言えば,なぜかジャーナリズムとつながっている面があったが,時代は地殻変動を起こしている.
ジャーナリズムやマスメディアといった単方向性の情報発信は「コミュニケーション」という議論の中で背景化していくだろう.
テレビが双方向化するとか,いっときいってたけど,あれはまやかし.
200人対1の大学の講義ですら双方向化するのは至難の業やのに,視聴率1%でも100万人対数人のテレビが双方向化したら収集つかなくなるわい.
100万人の発言などノイズに等しい.
ネットでの動画メディアが引き続き,あついので,新しい時代のメディア・インフラストラクチャをまだまだ試行錯誤していきましょう. -
入門書だけれど、最新の研究が踏まえられていて、示唆に富んだ部分が多々あります。筆致は軽快ですが、ところどころ出てくるテクニカルタームが、人文系の本を読み慣れていない人はイヤになってしまうかも。
・ツールとそしてのコミュニケーションではなく、コンサマトリーなコミュニケーションが重要。同時に、目的合理性ではなく、コミュニケーション合理性も。「成果志向的態度」でなく「了解志向的態度」ということかな。
・人間の自我は他者を鏡として、鏡としての他者を通じて知ることが出来る。
・ゴッフマンの印象操作
・電話は創発的コミュニケーションが可能。
・電話によるコミュニケーション=音声化、メール=文字化。
・効率的な官僚制は、人間疎外をもたらす
・金子の指摘によると、ネットワークは「ある種の緊張を伴う関係の中で、意味と価値を作り出していくプロセス」
・群衆のコミュニケーションは、暗示と感染からなっている。
・マスコミの力は、改変ではなく、補強である。
・人々の「解釈」がマスコミとの接触、およびマスコミ内容の受け取り方に大きく影響を与える。
・私的場面では、日本人はおしゃべり。
・新しいメディアの出現がただちに社会の変容をもたらすとは限らない。
・ブログ開設の動機 1.自己表現 2 コミュニティの形成 3 アーカイブ 4 収益 5 社会貢献