質的社会調査の方法 -- 他者の合理性の理解社会学 (有斐閣ストゥディア)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784641150379

感想・レビュー・書評

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  • この本を読むのは2回目だ。正直に言うと、読んでいる途中でなんだか見覚えがあるなと感じていて、途中で既に一度読んでいたことを思い出した。初めて読んだのは一年くらい前だったと思う(後で調べたら二年前だった・・)。質的調査の入門書として読んでいて、紹介されている参考文献を何冊か購入するくらいにはちゃんと興味も持っていた。ただし、購入した参考文献は未だ積読になっていて、今回の読書でさらに本書のブックガイドより数冊購入してしまった。
    そもそもは、昨今の流行もあり、量的調査分析に興味があった。調査というか、データ分析?って何をするのレベルで関心があり、調査法の入門書や統計について何冊か読んでいた。量的調査というと、客観的で「正しい」ような気がしていて、RやPythonなどのツールを使って分析するのもカッコいいような気もしていた。何より「正しさ」に近づくアプローチなのだと思っていた。でも、量的調査の本を読み進めるうちに、そうでもなさそうだと思うようになってきた。分析対象であるデータは「客観的」であるにせよ、結局、分析である以上、そこに意味を見出すことになり、その解釈は様々な幅が出てくるし、そもそもデータの定義や分析方法は調査者の匙加減となる部分があることは避けられないのではないかと考えるようになった。統計手法自体は、数学的な裏付けがあるものなのだろうが、その運用方法の段階で「客観性」が必ずしも担保されなくなる。そもそも「客観的」な「正しさ」なるものがあると考えること自体に無理があるので、いたしかたない。
    そんなモヤモヤを覚えている時に、では量的調査と一緒によく語られている質的調査とはどういうものなのか気になり出して手にしたのが本書だった。結果としては、全くの予備知識のない自分のような読者でも抵抗なく読み進められるように書かれていた。質的調査手法である、フィールドワーク、参与観察、生活史について三人の著者がそれぞれ説明してくれる。質的調査と量的調査は綺麗に分けられるものではないこと、他者を理解すること(そもそも他者を理解することとは?)、などなどを三人が自身の調査経験をもとに解説してくれる。何より質的調査が持つ魅力を伝えようとする意気込みが伝わってくる。これも面白いよ、これも面白いよとオススメの本を紹介してくれるので、買ってしまったのが以下4冊だ。

    オスカー・ルイス「貧困の文化ーメキシコの<五つの家族>」ちくま学芸文庫
    ロバート・マーフィー「ボディ・サイレントー病と障害の人類学」平凡社
    桜井厚「境界文化のライフストーリー」せりか書房
    丸山里美「女性ホームレスとして生きるー貧困と排除の社会学」世界思想社

  • 講義前に読んでおく事!となっていたので慌てて読んだ。
    教科書なんだけど、読み物として面白かった。

  • 岸雅彦、石岡丈昇、丸山里美
    中野卓、桜井厚、谷富夫の理論を通して、語りは「事実」か「物語」という問題を洗い直す下りはいずれ再読する

著者プロフィール

岸政彦(きし・まさひこ)
1967年生まれ。社会学者・作家。京都大学大学院文学研究科教授。主な著作に『同化と他者化』(ナカニシヤ出版、2013年)、『街の人生』(勁草書房、2014年)、『断片的なものの社会学』(朝日出版社、2015年、紀伊國屋じんぶん大賞2016)、『質的社会調査の方法』(石岡丈昇・丸山里美と共著、有斐閣、2016年)、『ビニール傘』(新潮社、2017年)、『マンゴーと手榴弾』(勁草書房、2018年)、『図書室』(新潮社、2019年)、『地元を生きる』(打越正行・上原健太郎・上間陽子と共著、ナカニシヤ出版、2020年)、『大阪』(柴崎友香と共著、河出書房新社、2021年)、『リリアン』(新潮社、2021年、第38回織田作之助賞)、『東京の生活史』(編著、筑摩書房、2021年、紀伊國屋じんぶん大賞2022、第76回毎日出版文化賞)、『生活史論集』(編著、ナカニシヤ出版、2022年)、『沖縄の生活史』(石原昌家と監修、沖縄タイムス社編、みすず書房、2023年)、『にがにが日記』(新潮社、2023)など。

「2023年 『大阪の生活史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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