法と経済で読みとく雇用の世界 -- 働くことの不安と楽しみ

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  • 有斐閣 (2012年3月3日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784641163898

法と経済で読みとく雇用の世界 -- 働くことの不安と楽しみの感想・レビュー・書評

  • 川口先生の授業で、労働経済学に興味を持ったし法と経済学の分野にも興味がでてきたところだったので読んでみました。
    まず労働法学と経済学の視点の違いを理解することができる。
    法学では雇用をこんな風に捉えているのだと実際の法律や判例を例に出し説明したのちに、その法律は経済学的にはこんな影響があってこんな点で経済学的な有用性があるorない…といったような構成で現実に即していて非常にわかりやすい。

    また随所に経済学はそれだけでは実効性が薄く、立法や法学と協働することで実世界に対し政策的な影響を与えることができるのだという主張を垣間見ることができる。
    法を学ぶ人にとっても経済学を学ぶ人にとっても、またどちらでもない人にとっても労働というのは自分の人生に大きく影響するものなのだから、読んでみる価値がある本だと思うし、一度立ち止まって考えてみる価値のあるテーマなのではないだろうか。

    また各章の冒頭に出てくるショートストーリーが非常にいいアクセントになっているという点にも言及しておく。

  • 労働問題は「ある問題の解決を図ることができても、それが他の問題を引き起こすという副作用がでるケースがある。」経済学のアプローチは「ややもすれば部分的な公正さに目を奪われがちな法学の議論に、より広い視点を与えてくれるものである。」(p.310)

    良書。
    上記引用は企業管理部門で働く評者の問題意識そのものであり、今後、会社をとりまく制度において法と経済学、研究と実務の対話が進み新たな成果を生み出すことを期待します。

    各章の導入に使われるストーリーは意表をついて俗っぽく、そんな狭い世界で全部つながらなくても、、、とも思いましたが、確かに実際の労働問題は俗っぽいものですね。

  • 一見、難しそうな専門書・・・。しかし、4人の主人公の波乱万丈(?)な人生の物語(内定切り、夜の無断アルバイト、不倫発覚 etc.)が各章毎に語られ、それにまつわる雇用法制や経済原理が説明される形式。意外と読みやすく、興味あるエピソードのみ読むのもよし。

  • 本書は労働法と労働市場のインタラクシンを通じて、法と経済学を俯瞰するものです。一冊で労働法と経済理論一般の理解が可能です。市場の失敗と政府の介入のバランスという難問を考える上でたいへん面白い構成となってます。”事前規制型社会から事後解決型社会へ”と簡単に言い片づけられないゆえんがここにはあります。

  • 9/26読了。まずは感想、とても面白かった。いわゆる「法と経済学」の労働法版ですね。雇用に関するさまざまな問題に関して簡単なストーリーを設定し、それぞれ問題となるテーマやそれに関連する基本概念、法制度をやさしく説明しています。飽きずにテンポ良く読める工夫もしてありましたよ。内容的には、現在の労働法制がどうであるか、またはどういう経緯を辿ってきたか、また判例や主要学説でどう法解釈されているかなど現状分析だけでなく、どうあるべきかという政策価値や立法論についてミクロやゲーム理論など経済学的アプローチで分析しています。ストーリーは登場人物がどんどん増えて、もうちょっとシンプルな方がよかったかな?と思う面もありましたが、それが論点を深く掘り下げる際の複線だったりして仕方ないでしょうか。一般的に議論されるような論点も網羅性も高く、わかりやすく整理されていましたし。また、【】で著名な判例を強調していたり、トピックスを丁寧に解説していたり、巻末の判例の索引とか、リファレンスとしての価値も高いと思います。この分野に関心のある方には、是非ともオススメしたい一冊です。

  • 大内伸哉・川口大司『法と経済で読みとく雇用の世界 働くことの不安と楽しみ』(有斐閣、2012年3月)税別1,900円

    【構成】
    序 章 法学と経済学の協働は可能か:自由と公正のあいだで
    第1章 入社する前にクビだなんて:採用内定取消と解雇規制
    第2章 パート勤めの苦しみと喜び:最低賃金と貧困対策
    第3章 自由と保障の相克:労働者性
    第4章 これが格差だ:非正社員
    第5章 勝ち残るのは誰だ?:採用とマッチング
    第6章 バブルのツケは誰が払う?:労働条件の不利益変更
    第7章 残業はサービスしない:労働時間
    第8章 つぐない:男女間の賃金・待遇格差
    第9章 わが青春に悔いあり:職業訓練
    第10章 捨てる神あれば,拾う神あり:障害者雇用
    第11章 快楽の代償:服務規律
    第12章 俺は使い捨てなのか?:高齢者雇用
    第13章 仲間は大切:労働組合
    終 章 労働市場,政府の役割,そして,労働の法と経済学

    神戸大学大学院法学研究科教授(労働法)の大内伸哉(1963-)と一橋大学大学院経済学研究科准教授(労働経済学)の川口大司(1971-)による労働市場をめぐる諸問題の解説。

    一般的な労働や雇用に関する本は、ほとんどが労働法規の法理や判例の紹介によって構成されており労働法的な観点を正としているものが多い。本書のユニークさは、厳然とルール化されている労働法的価値観に対して、「経済学的な効率性」からの視点と過剰な規制の見直しを投げかけているところにある。

    戦後積み重ねられてきた労働法の法理は、企業別組合・終身雇用・年功序列管理といういわゆる日本型雇用の形成・発展に相互影響を及ぼしながら形成されてきた。それが、日本の労働市場や企業内の人事管理から効率性を奪い足かせとなっている部分がある。

    ただ、本書で論じられるところの経済学的な効率性や企業・労働者の選好の記述はあまりに単純化しすぎている感がある。行動経済学で論じられているような一見非合理的な選好を労働者は行う場合があるだろうし、それが労働市場が流動化していかない理由の一つなのではなかろうか。そこにもう少し踏み込めば、ぐっと説得力が出たのではと感じる。

    あと、本書の評価に直接関係はないが、各章の冒頭に示されるケース紹介はなかなか面白いが、家族総出で会社に対して訴訟や組合活動を展開する一家というのは非現実的だろう。

    労働法や人事・労務に携わっていなくとも、法学を学んでいる人こそ読むべき一冊。

  • 労働法学と労働経済学の対話とでもいうべき、両者の観点を比較してみました的な本。そんな小難しいものでもなくて、わりとさくさくと読み進められます。
    最初から読み進めていくとだんだん分かってくるんだけど、法学と経済学の二項対立の裏には、ある種の複眼的思考が隠れてるような気がする。一つの事実について「こう考えることもできますね、でもこうも考えられますね」っていう、事案の分析にも似たような感覚があった。
    学問が違うと、物事のとらえ方もこんな変わってくるのかっていうのがよく分かる良書。

  • 著者の最も主張したいと思われるところを、
    引用しておきます。


    "市場と政府の役割分担という観点からみたときには、
    取引(労働契約)自体は当事者の自由にゆだねたうえで、
    政府による財政の投入による所得保障を図るという政策と、
    市場の効率性を歪め雇用量の減少をともなうとしても、
    契約内容の最低基準を強制的に設定するという形で
    労働者の所得保障を図る政策の、
    どちらが社会全体にとってよいのかという問題でもある"

    (「終章 労働市場、政府の役割、そして、労働の法と経済学」 P308。
    かっこ内は管理人が追加)



    別の言葉に置き換えると、


    ・労働契約も一種の市場取引だから当事者間の自由にやってね!
    ・でも当事者間の自由だけにすると最低限の生活も危なくなる人もいるかも!?
    ・その最低限の生活保障は、企業がするの?国が負担するの?どっちがいいの?


    といったところでしょうか。

    http://a-e-dkmemo.blogspot.com/2013/02/blog-post_19.html

  • 自由な取引から社会的な効用の最大化を目指す経済学的な視点と、公正や正義の観点から規制を行う法学的な視点の両方から雇用について考える本。

    内定切り、正社員と非正規の確執、労働災害による障害、不倫や訴訟など、昼ドラも真っ青なストーリーに沿って、経済理論や判例、またそれらに基づく社会制度などを紹介しながら解説されるので飽きない。

    「ホンシェルジュ」に記事を寄稿しました。
    http://honcierge.jp/users/646/shelf_stories/25

  • 日本経済新聞(2012年12月30日付)の「エコノミストが選ぶ経済図書ベスト10」で第1位に選出されたこともあり、読んでみた。

    労働分野における経済と法律の考え方の相違が非常に分かりやすく記述されており、「法学と経済学の入門」と言えるだろう。各章の冒頭には短いstoryが設定されているのも良い。

    労働市場は不完全市場であるため、市場の失敗が発生する。独占や情報の非対称性に起因する市場の失敗を補完するのが、労働法の役割でもある。

    本書では、労働法をめぐる最近の動きやホットな論点についても触れられており、労働法全体を俯瞰することができる。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、3階開架 請求記号:366.21//O91

  • 日本経済新聞社エコノミストが選ぶ2012年経済図書ベスト10 第一位

  • 拾ったので通読。親しみやすいように、また、難解な専門書という印象を薄めるためにストーリーが入れられていますが、物語としては平凡あるいは安易。法学者、経済学者に小説家を加えるといいかもしれませんね。あるいは、下敷きにできる既存のお話しはないものでしょうか。採用内定取り消しの問題から始まるのは極めて今日的。また、最後に「仲間は大切」として労働組合を取り扱うのも現代風。しかも、合同労組だし。

  • 雇用の世界は、経済学的な合理性・効率性を追求しつつ、法律によって道徳性も確保しなければならない。

    正解は無く、その時代、その国の人々が決めなければならない問題であり、選択肢を示すのは政治家の役割ではないか。

  • 法学がどのような立場で雇用を見ているか、そして経済環境が厳しくなっている中で、経済学的なアプローチをいれなくてはならなくなっていることが理解できた。

    ただ、現在の問題を整理しただけで、どのように解決して行ったら良いのかの見通しは得られなかったのは残念。それほど困難な課題だということだろうが…。

    また、経済学的な労働市場分析のアプローチは、どうも自分の考え方と馴染まなかった。人間は合理的に、効率的に動くものだ、という想定は、文化的社会的縛りの強い日本の労働市場ではかなり当てはまらないと感じる。

    ただ、事例を出しての文章のまとめ方は、非常に興味深く読めた。

  • 我が国の雇用体系と諸問題を法学と経済学の両側面から斬り込む良書。内定取り消し、最低賃金、非正規雇用から(賃金体系における)男女差別、障碍者雇用に至るまで、判例を交えつつ解説する。「法と経済」を名乗っているが、やや法学寄りか。

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法と経済で読みとく雇用の世界 -- 働くことの不安と楽しみの作品紹介

2つの視点で、1つの世界を描き出す。多様な登場人物が織り成すリアルなストーリーと、法学と経済学の協働を通じて、自由と公正のあいだで揺れ動く雇用社会のメカニズムを探求する。

法と経済で読みとく雇用の世界 -- 働くことの不安と楽しみはこんな本です

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