イノベーションの理由 -- 資源動員の創造的正当化

  • 有斐閣
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (540ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784641163928

作品紹介・あらすじ

イノベーションをいかに実現するか。革新的なアイデアや技術は、不確実であるがゆえに社内外で理解されにくく、抵抗や反対に遭いやすい。どのようにそれらの壁を乗り越え、新しいアイデアや技術を具体的な製品やサービスとして事業化し、経済的な価値をもたらす成功へと導くのか、大河内賞を受賞した23のケースから明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 「経営戦略の論理」イノベーション版。
    武石さん青島さんでまあ盤石な内容。

    甚だ僭越ながらいわせていただければ、
    最近の一橋教授陣(武石さんは現在京大だけど)は、
    しっかり伊丹イズムみたいなのを継承してるなあという内容。

    イノベーション論はイノベーションのアイデアや、技術の見つけ方をどうするか、といった議論や、
    クリステンセンのようにイノベーションのタイプを分けてどうマネジメントを行うか、といった議論になるのだが、

    イノベーションというものはある程度所与、つまり、イノベーションを起こす可能性のある「モノ」として扱った上で
    それを企業としてカタチにするにあたり、どうやって経営資源を獲得していくか、企業内での支持を得ていくかを、
    「創造的正当化」と定義し、その方法を何種類かにパターン化し解説している。

    分析対象としては大河内賞を受賞した日本企業を対象としており、
    イノベーションのシーズが育つにあたり、芽を取られなかった背景を抽出しています。
    イノベーションの理由で訴える、技術そのものの汎用性で訴えるなど、さまざまなケースがあり、そこをしっかり分析抽出する姿勢はさすがといったところ。

    本書の4割くらいが理論編
    そのあとはケースがガッツリ載ってます。
    ケースがまた一橋が好きそうな内容で、なぜかニンマリしてしまった。

    非常に真面目な主張で、最後には本研究の課題まで載っており
    読んでてこんな愚直な内容は昨今珍しいなと感心します。

  • 武石彰(京大)、青島矢一、軽部大(一橋大)の3氏共著の本である。事前の期待が小さいアイデアを事後的に大きな事業成果に結びつけるためにいかに資源を動員するか?ということをテーマにしている。大河内賞を受賞したイノベーション23事例をスタートから事業家までのいきさつを横断的に分析し、誰から、どのような理由で支持を獲得して、資源動員を正当化できたか?を明らかにしていく内容。MOT的アプローチの本。
     イノベーションの実現過程についての分析結果として、客観的でない(要するに誰もが儲かるぞと思わない)固有の理由を持つ主体が、同じく固有の理由で正当性を認める特定の支持者の獲得を重ねて資源を動員しながら事業家に向かって前進するのがイノベーションの実現過程であるとしている。固有と固有が出会い、相互に作用し、やがて客観へと変化していくとのことである。
     特定の支持者の獲得を重ねて、さまざまな社内の壁を乗り越えて、最終的にイノベーションを実現することを「創造的正当化」とし、3つのルートを明らかにしている。①支持者の出現確率を高める(より広範囲に求める。確率の高いところへ働きかける)、②理由への働きかけ(さまざまな理由の合体、理由の変化)、③資源動員効率を高める(影響力のある支持者(トップ、権威、競争相手)を獲得する)。
     しかし、正当化理由が固有のままで留まると、事業化後の発展や転換を制約することがあり、イノベーションの実現に至る正当化プロセスを意識的・創造的・反省的に進め、事後的には客観的な経済合理性(多くの買い手を得る)を追求することが重要(固有から客観へ)としている。

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1000836684

  • イノベーションについての共同研究論文。優れた技術革新に授与される大河内賞を受賞した23の事例を研究対象とし、極めて学術的で、終始、客観的な立場から意見が述べられている。研究、考察が深く感銘を受けた。
    「誰もが納得するような経済的合理性を欠く中で、固有の理由からイノベーションの実現を目指す推進者が、同じく固有の理由からそれを支持する人々と出会い、必要な資源をなんとか獲得し、一歩一歩前に進み、その積み重ねによってやがて普遍的な経済合理性が見出され、大きな経済成果が生まれる。 ... イノベーションは推進者が信じる固有の理由で始まる。それは、普通ではない「変わったもの」だから、普通の人々からの支持は得られにくい。やはり、普通ではない「変わった」人に働きかけて、固有の理由から支持をうける以外にない。この主観と主観の出会いを実現するために、独特の創意工夫が必要となる」p483
    「イノベーションで成功することをめざす企業の運命を左右する大事な鍵は、誰がいつ革新的な技術を開発するかではなく、誰がいつその技術革新を事業化するための投資を行うかにある」p11
    「事前には技術的にも経済的にも成否が不確実な中でさまざまな他者の資源を動員しなくてはならない」p11
    「「想定内の成功」に比べれば、「想定外の成功」の方が手に入る成果はより大きくなる可能性がある。他者がやろうとしないイノベーションに先んじて挑戦し、普通であれば頓挫するはずの企てにあえて資源を投入して、事後的にそこから大きな成功を収めることを目指す者にとって、より典型的で、より重要なのが第Ⅱ象限の「想定外の成功」ということになる」p18
    「当事者の立場からすれば、明確な成功の見通しのないものへの投資に反対する方が簡単である。見通しのないものへの投資に賛成して後から責任を問われるより、見通しのないものへの投資に反対しておく方が安心できるだろう。反対するのには合理的な理由があり、説明責任を果たすことはできる。合理的に判断すれば却下されていたはずの案件への投資を主張した者、認めた者が、失敗した後に浴びる非難と負わされる責任は大きい」p18
    「スタート時から本社や事業部門の支持を得ていて、途中さしたる抵抗や反対に遭うことなく資源を動員し、順風満帆に事業化に至った事例は23件中4件であった」p96
    「イノベーションとは、常識に対する挑戦である。他者がやろうとしないことを先んじて実現しようとする営みである。それゆえ、イノベーションの将来価値が当初から万人に認められることは稀である」p102
    「アタックやデジタルX線画像診断システムのように、のちに誰もが認める成功ですら、事前には客観的な経済合理性がなく、事業化において、そして事業化後においてもなお、資源を動員するために特定の支持者と固有の理由を必要としたのである」p106
    「優れた技術があれば、あとは自ずとよどみなく資源が動員されるというわけではない」p149
    「(松下電子工業が開発した)GaAsパワーモジュールは、肝心の松下電子工業には採用してもらえなかった。コスト面での厳しい評価を受け、受注を獲得することができなかった。(NECとソニーが大量受注した)」p398
    「(初期投資5億円を研究所が持つことについて)売れなかった場合のリスクを電子総合研究所が背負わない限り、量産段階で責任を持つ工場はなかなか大量生産に踏み切らない」p404

  • 時間があれば

  • 中野剛志の最新の新書を読んだところ、参考図書として出ていたので読みました。
    内容ですが、
    分析・理論篇
    第1章 イノベーションはいかに実現されるか
     はじめに
     1イノベーションとは
     2イノベーションの実現過程の特質
     3イノベーションの実現過程の矛盾
     4本書の問い、視点、分析枠組み:革新への資源動員
      の正当化
     5本書のねらい:大河内小受賞事例
    第2章 分析の題材:大河内賞事例
     はじめに
     1分析の題材:大河内賞受賞事例
     2分析事例の概要
      1~23
    第3章 大河内賞受賞事例にみるイノベーションの実現の
        プロセス
     はじめに  
     1スタートから事業化までの時間過程
     2スタートから事業化までのプロセスと資源動員の壁
     3資源動員の正当化
     4小括:23件の事例にみるイノベーションの実現過程
    第4章 革新への資源動員の創造的正当化
     はにめに
     1固有の理由の重要性
     2創造的正当化プロセス
     3創造的正当化のメカニズムの特質
    第5章 イノベーションをいかに実現するか
     はじめに 
     1イノベーションの実現に関わる実務家にとって
     2大企業におけるイノベーションの創出
    第6章 さらなる理解にむけて
     はじめに
     1本書の貢献
     2本書の限界
     3イノベーション・プロセスの統合的理解に向けて
    補論 既存の先行研究との関係
    事例篇
    あとがき

    ということで、大河内賞を受賞した企業におけるさまざまなイノベーションのプロセスを分析し、一定の仮説を提示サイながら、その有効性と限界性についてまとめた本でした。
    事例篇は、技術的な事項が書かれていてパスしました(涙)

  • 少し古いが、様々な企業の革新的な事例、ベストプラクティスを集めたもの。
    エクセレントカンパニーを少し彷彿させる。
    経営視点というよりはかなりテクノロジー寄りのアプローチなので、そういう意味でも非常に興味深い。

  • 経営学者の武石さんと青島さんのイノベーションについての学術書。

    簡単に言えば期待倒れだな。
    イノベーションの賞をとった複数の事例を分析して、なぜイノベーションの事前にそこに企業は資源配分していたのかを探るというテーマ。
    テーマは面白いのだが、結局、言い訳が多くて結論がよくわからないんだよな。
    それら事例から帰納してモデル仮説をつくりたいんだろうが、なにが得られたのか曖昧なんだよな。
    事例が多過ぎて、考察が少な過ぎだよな。これじゃ、週刊ダイヤモンドや日経ビジネスと変わらないと思うんだけどな。

  • 創造的正当化。経済合理性だけではない正当化の絡ませ方。

    根回しは雑用ではない。

  • いかに周りを説得してイノベーションの資源を投下していくかその方法論とケーススタディ。ちょっと難しすぎたかも。

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著者プロフィール

京都大学大学院経済学研究科教授

「2012年 『イノベーションの理由』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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