外交 (有斐閣Insight)

著者 :
  • 有斐閣
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784641178014

作品紹介・あらすじ

「外交」とは何か。「外交の本質」とは何か。グローバリゼーションを中心とする二十世紀の国際社会の歩みは、古典的な外交像、すなわち「旧外交」から大きく異なる現実を生み出した。ハロルド・ニコルソンが外交論の古典『外交』を著して七十年、その間に第二次世界大戦が終わり、冷戦も終結し、九・一一テロ事件が起こった。新しい時代に、外交はそれまでとどのように変わり、私たちの社会に外交はどのような位置を占めているのか。古典的な外交理論や「外交学」の成果、偉大な外交官たちの回顧録などをふまえ、歴史的視座から外交を問い直す。

感想・レビュー・書評

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  • とりあえず、外交の入門書・導入書としてはいいんじゃないでしょうか。具体的な外交交渉記録を何冊か別に検討すれば、多面的な視点が得られるように思う。

  • 「外交」入門書としては優れている。旧外交から新外交、現代外交への歴史的変遷が主な内容。その後、現代の日本外交の問題点をいくつか述べている。

  • 長く積読になっていて、引っ越しの時に処分してしまったらしく、見つからないが、在庫切れ(絶版?)。
    図書館で借りて読了。
    増刷または改訂されると良いなあ。

  • 外交官同士の外交が主だったのが、近代になって首脳同士の外交、さらにNGOや企業なども含んだ多角的な外交になっていった
    外交というのは西欧文明から発達しているため、非西欧文明との外交ができない
    民族自決の原則によって非キリスト教、異なる宗教や文明が国際社会に登場できるようになり、それまでの西欧的な外交ができなくなった

  • 「西洋外交史」という科目の必修参考文献。
    「外交」という概念の歴史的変遷、つまり外交史について。
    米国大統領ウィルソン(1856~1924)が一次大戦後に提唱した所謂「新外交」の欠陥についてもアーネスト・サトウやハロルド・ニコルソンなどの歴史的外交官の主張などを基に言及されており、非常によくまとまっています。

  • 319 95

  • ・英では「外交学(diplomacy):交渉」、米では「対外政策(foreign policy):国内の政治過程」中心。日本は後者の影響。
    ・19c欧州的「旧外交」の拡大、アジアにも。「西洋の衝撃」に対し、「日本はより敏感であるばかりでなく、より柔軟(または日和見主義的)であった」by佐藤誠。
    ・その後WWIの時代に「旧外交」衰退、ウィルソン&ソヴィエト式の外交イデオロギー化、アメリカ的「新外交」(14箇条の原則=民主的、開かれた外交)。
    ・「新外交」から派生したプロパガンダ、大衆動員、ナショナリズムや人権主義などの新しい動きは、同時に「新外交」が当初理想としていた世界観を踏みにじるもの。ナチスドイツはこれを利用。一方日本は、欧州的「旧外交」とアメリカ的「新外交」に不満を持ち、独自の「アジア主義」を掲げつつも、満州国~国際連盟脱退では植民地主義という「旧外交」、人種問題を掲げるという「新外交」も展開。WWIIは「ナチズム」・「ファシズム」、英米ソの「民主主義」、日本の「アジア主義」というイデオロギーの戦争。
    ・WWII後の外交は国際連合(旧外交と新外交の折衷)、多国間外交(IMF、NATO、EU等)、サミット外交(素人は危険との指摘にも拘らず発展、象徴はG8)、ウィーン外交関係条約の専門化、制度化。
    ・冷戦後はネットやニュースの拡大という情報革命により外交官の役割は副次的に。またNGOにより外交は多層化。
    ・9.11は21世紀外交を考える上での示唆。1)テロネットワークはグローバリゼーションの産物、2)宗教や価値体系の重み。public diplomacyの重要性増加。米国では冷戦後削減され、9.11後は「反米主義」への対処に大きな代価。この時代の外交官の役割は、1)「交渉」における役割の継続、2)public diplomacy、3)国内での専門性と調整。
    ・戦後の日本外交は国際社会の法や規範を遵守、しかし冷戦の中で国内の経済成長と対外的経済外交を軸に進めてきた日本の外交は冷戦後隘路に。理由は次の4つ。1)日米安保を基礎とする二国間外交に慣れ、多国間外交に敗北。2)軍事力を用いないことの限界、外交と軍事力の難しい関係への準備不足。3)public diplomacyの欠如又は不十分。4)世界の各地域への文明論的な関与の必要性。

  • 慶應義塾大学法学部准教授(国際政治史、国際関係論)の細谷雄一による「外交学」の入門書

    【構成】
    序章 「外交学」のすすめ
     1 三冊の『外交』
     2 外交研究の発展 「技術としての外交」から「対外政策」へ
    第1章 外交とは何か
     1 「外交」とは何か
     2 「外交」の起源
     3 「外交」の発展
    第2章 「旧外交」の時代
     1 イタリアからフランスへ
     2 フランスからイギリスへ
     3 「旧外交」の成熟と衰退
     4 近代日本の外交
    第3章 「新外交」の時代
     1 「新外交」の登場
     2 「新外交」と国際連盟
     3 「新外交」の没落
    第4章 現代外交の時代
     1 イデオロギーの交錯
     2 第二次世界大戦後の外交
     3 冷戦後の外交
    終章 二十一世紀の外交
     1 「対テロ戦争」の時代へ
     2 日本外交に何が可能か

     「外交」とは何か?という問いについて、古代ギリシャからはじまる「交渉」から15世紀イタリア都市国家間の「外交」、そして17世紀から19世紀にかけて西・中央ヨーロッパで徐々に形作られる「旧外交」の姿を簡潔に描くことで、歴史的な「外交」が提示されている。
     アーネスト・サトウ、ハロルド・ニコルソンといった「旧外交」を熟視しているイギリス外交官の言説をしばしば引用しながら、貴族的で秩序のある同質的な「旧外交」の姿はわかりやすい。
     そして、この「旧外交」を否定する形で登場するウィルソン大統領の非妥協的・理想的な「新外交」は、第二次大戦後のケナン、モーゲンソーといった理論家たちが主張するようにより現実的な妥協を探る路線へと転換・修正されていく。

     文体・内容とも非常に簡明であり、入門書としての質は高い。ニコルソンの『外交』を再読したくなるとともに、遅々として進まないキッシンジャーの『外交』の早期読了を決意させられる良書である。

  • 商人的外交観 - 主として、宥和・和解・妥協および信用に関心を置く。お互いに妥協する方が敵を完全に壊滅するよりも、普通、利益があるものだという仮定に基づく。
    武人的外交観 - 敵を包囲し、戦略地点を占領し、それをただちにしっかり固めてから前進し、あらゆる種類の攻撃で戦線の背後にある敵を弱め、主要敵国とその同盟国の間に楔を打ち込むためのあらゆる機会を求め、他の攻撃にたいする攻撃を計画している間、敵を一地点に釘付けする努力をする。
    パブリックディプロマシー - 自国の対外的な利益と目的の達成に資するべく、自国のプレゼンスを高め、イメージを向上させ、自国についての理解を深めるよう、海外の個人および組織と関係を構築し、対話を持ち、情報を発信し、交流などの形で関わる活動

  • 「外交論」入門書・案内書として読みやすいが、旧外交と新外交の対比に力を割きすぎているためか、ややもの足りず、といったところ。

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著者プロフィール

慶應義塾大学法学部教授、東京財団政策研究所 研究主幹。
1971 年生まれ、慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学、博士(法学)。国際政治、イギリス外交史。主要著作:『外交による平和──アンソニー・イーデンと二十世紀の国際政治』(有斐閣、2005 年)、『迷走するイギリス── EU 離脱と欧州の危機』(慶應義塾大学出版会、2016 年)ほか。

「2024年 『民主主義は甦るのか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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