琉球王国の構造 (中世史研究選書)

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  • 吉川弘文館
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  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642026536

作品紹介・あらすじ

中世(古琉球)における琉球王国の内部構造について「辞令書」という斬新な史料を駆使しつつ本格的な分析を加えた初の成果。琉球辞令書の体系的究明を目指す仕事であると同時に、従来の研究において等閑視されてきたところの琉球王国の内部制度を探り、その歴史的な位置・評価の再構成をめざす論点を鮮明に提示する。

感想・レビュー・書評

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  • 琉球王国の辞令書を手がかりとしながら、琉球が独立した王権を持っていた事証明し、そして王権の構造の変容がいつの時点で起きたのかという事を検討する。
    資料の検討の仕方に脱帽。伊波普猶と同じ研究スタイルで、辞令書の全文を本文に写し、その内容を一文一文検討してゆく。これは根気のいる作業である。
    本書で重視されるのは、琉球の歴史における「古琉球」という時代区分の存在である。首里からの辞令書が発行された年代・範囲を調べ、その内容から受給関係などを導きだし、王を中心とした琉球王権の姿を描く。そのなかで、「古琉球」という区分を作る根拠を導きだすのだが、それはその後島津・薩摩が琉球に侵攻して王権の質が変容し「近世琉球」の時代を迎えても、そこで作られる制度は「古琉球」時代の制度に深く依存していたことを証明し、その根拠としている。
    根気のいる研究所であるため、読む方も根気強さが肝心となるわけだが、詳細な検討の鮮やかさ、一読の価値がある。
    批判を加えるとしたら、(筆者も本文中に認めているが)辞令書のみを使って琉球像を描く事への限界の問題だ。筆者は辞令書で琉球の王権を導きだしながら、同時に琉球民衆の影響力を認めている。つまり、辞令書を唯一の資料とすれば、王権の強大さがかなり強調される形となるが、少し単純に感じられる。
    筆者は王権を導く上で、ノロなどの司祭が王権の任命によって動いていたことを示し、宗教の上位に政治をのせることを目指したが、この上下関係には疑問を示す人も多いだろう。どの国でもそうだが、宗教と政治の関係は複雑である。
    ただ、私自身は疑問を感じつつも、それに対案を示すだけの知識がない。というわけで、ここでとどめておく。

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著者プロフィール

琉球大学大学院人文社会科学研究科教授

「2010年 『東アジアの文化と琉球・沖縄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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