織田信長 (人物叢書)

著者 :
  • 吉川弘文館
4.00
  • (7)
  • (15)
  • (5)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 130
感想 : 11
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642052658

作品紹介・あらすじ

桶狭間の戦いから本能寺の変まで、一生涯みずからの支配領域(分国)拡大の戦争に明け暮れる。強い主従意識のもとに家臣を指揮・統制し、抵抗勢力には残虐な殺戮に走り鬱憤を散じた。天下統一に邁進した革命家のごとく英雄視する後世の評価を再考。「天下布武」の意味を問い直し、『信長公記』や信長発給文書などから浮かび上がる等身大の姿を描く。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 英雄的な視点からは距離を置き、信長公記や信長発給文書を中心に等身大の姿を描く一冊。客観的な生涯の事跡を掴むのに分かりやすい叙述になっている。終盤にまとめられている政策や家臣団統制の特徴も興味深い。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/60017

  • 正直、専門書過ぎて読むのが辛かった。

  • 最新の織田信長像がわかった

  • 吉川弘文館の人物叢書シリーズに、今まで無かったことが意外な織田信長である。

    あまりによく知られた人物であるが、『信長公記』や発給文書を基にして構成された史実の信長像は歴史小説の描くものとは異なってくる。

    最も異なるのは天皇の利用と、畿内=天下の秩序維持への関心である。攻め落とした分国の経営とは異なり、畿内一円には幕府や朝廷の権威をもって形式的な秩序を打ち立てようとした。具体的には上洛以後に、皇族・貴族への土地の安堵(事実上の寄進か)を進める姿などがそうである。

    本書は、敵対勢力に対する信長の苛烈な始末の様子、軍団制を強いて四方八方へ派遣された譜代の部下達への厳しい統率を描くことで独裁者信長を強調する。本書冒頭に触れられているように「英雄・信長」の否定である。

    一方で、著者が同じく冒頭で示した、信長に抵抗した側の声をどこまで拾えきれているのかという点では物足りなさを感じる。

  • 講談社日本の歴史で織豊期を担当した著者による信長の人物叢書。信長政権の特徴を流通・都市政策と極端とも言える譜代重用に見て、其々章単位で論じる。伝記的英雄像をイメージして読むとそれが覆されるか。個人的原点の一。

  • 英雄視する後世の評価を再考し等身大の姿を描いた決定版。
    天下統一に邁進した革命家のごとく英雄視する後世の評価を
    再考。「天下布武」の意味を問い直し、「信長公記」や信長
    発給文書などから浮かび上がる等身大の姿を描く。

    率直な感想は、よく人物叢書で織田信長を書いたもんだとい
    うものだ。戦国時代の人気者であり、どんなに万全を期した
    としても万人を納得させることは難しいことだろう。
    はしがきにもあるとおり「信長の研究は膨大で」一人の人間
    が全てをフォローすることは困難であろうとも思う。
    有名人である織田信長の生涯を、テレビドラマや学習マンガ
    でなんとなく知っていたが、本書を読むとなんとなくしか知
    らなかったんだということが改めてわかった。信長の生涯を
    一歩一歩着実に読むことが出来たのが良かった。
    革命児のごとく英雄視するのではなく等身大の姿を描こうと
    いう姿勢は従来の見方を超え研究を一歩進めた感がある。
    特に第8章の譜代重用と新参国人の没落には多大なるショッ
    クを受けた。信長と言うと人材を出自にとらわれず能力主義
    により抜擢したということが評価されるが、本書では尾張出
    身者が圧倒的に重用されており他国者は冷遇排除されているという。

    全体的には堅実な仕上がりであるため、面白みには欠けるが
    安定感はある。私としては全面的に著者の見方に納得した訳
    ではなく、時系列が前後して書かれている部分などには違和
    感を感じたが、今後、信長を論じるうえで外せない一冊であ
    ろう。歴史好きとしては、今後、本書に対し従来型の革命児
    信長論者が、がっぷりと論戦することを期待したい。

  •  五味先生の書評が25年正月毎日新聞に出ていたので買ってみた。内容は帯書きどおり、要するに信長って褒められ過ぎだよね、という話。分国や親族優遇、異常な短気、裏切りの連鎖を招いた人事など、信長が「なぜ天下を取れずに終わったか」を丁寧に論証。
     前書きで引用していた、五木寛之氏の東京の見方でいうヒーロー信長に対して、地方で聞かれるのは信長への抵抗と憎しみの継承である、という発言は傾注に値する。ツマラナイ改革者信長像を粉砕することは、単に偏屈な歴史マニアの溜飲を下げるだけではなく、信長に敵対した人たちを、歴史の流れがわからなかった愚か者であるかのようにバカにする見方との闘いなのである。
     本土と沖縄(旧植民地という意味では北海道台湾朝鮮樺太も入れていいのかも)、西日本と東日本、日本海側と太平洋側、日本人はすぐに片方をもう片方の上に持って行くわけだが、そうした単純思考に冷や水を浴びせるためにも、歴史を学ぶ事はとても重要。でも、それは別に近代史だけの話じゃないよね、って事ですね。

    【読後】

     信長が「最大の戦国大名である」という主張は良くわかった。特に、信長の民政は試行錯誤の連続で、時期によっては荘園復興や当知行の追認など室町幕府と変わりない政策を導入してきた事も面白い。仏教政策など、信長に対した革新性は認められない事、南蛮好きというよりは中国に強烈に憧れを抱いている事なども、一般的なイメージとの差として面白いだろう。

     ただ、分国内で、本領である美濃・尾張の家臣を優先し、その他地域での国人を消滅させる政策を取った、という点については、批判の一方でそれ以外の選択肢があったのかな?という疑問も感じる。徳川政権だって譜代に土地を配っているし、この本で指摘しているように信長の意識していた「天下」概念が畿内中心だったとしたら、室町政権とほぼ同じ分国を手に入れるまで、信長は後数年で十分だったわけだし。そう考えると、結論部分の「信長なんて天下統一とかどこかで破綻したに違いないよ」という結論はちょっと随分挑戦的なような気がした。

     ただ、信長は日本史上でも珍しい「天皇の権威付けを無用と考えた権力者」だという定義と中国趣味の強調には想像力を掻き立てられるものがある。もし信長があと5年生きていたら・・・というのは、やはり面白い妄想であり続けるのだろうな。

  • 巷にあふれる信長像と比較すると非常に面白い。
    評価が全く異なるのだから。

  • 織田信長の伝記が人物叢書としてついに発行された。彼については膨大な書籍と研究があるので、逆に今さら感や各論の進化で総論は中途半端だと思ってしまうが、彼について知りたければいい入門書になると思う。

    残酷と悲惨を極めた彼の戦争は決して正義ではなく、抵抗勢力にも理由があったということを著者は強く主張している。一方、旧勢力を否定した革新一辺倒ではなく朝廷の保護や幕府との協調を行ったし、宗教にも寛容な面もある。一方、実力主義で長年の勤続者であっても佐久間や林を切り捨てたし、地方の国人に容赦がなかったことが、荒木村重や別所長治の離反を招いた。それが、本能寺の変にも繋がったのだろうか。「次は俺かも」という主君や組織に対する不安は、現代社会と同じ気がする。

全11件中 1 - 10件を表示

池上裕子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×