- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784642057110
作品紹介・あらすじ
昔の日本人はどのように話していたのか。『万葉集』の漢字の使い分けやキリシタン資料などから話し言葉を再現し、古代から近代まで言葉が次第に変化する様子を解明。形に残ることのない「話し言葉」の歴史を考える。
感想・レビュー・書評
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筑波大学の大学院科目「日本語史研究(3A)」「日本語史研究(3B)」の指定参考書。
史的な挿話と伴に。
トピックを絞って取り上げる。「日本史」と言うだけあって、時代背景や話し手(書き手)の立場の解説が丁寧でしっかりしている。
通史の解説では無いため、言葉の変化の流れを概観するには以前レビューした「はじめて読む日本語の歴史」を読んでおくと理解しやすいかもしれない。共通のトピックに対しても、本書はやや深掘りしていて詳しい。例えば上代の甲/乙類母音について章の半分を費やして、使い分けと意味の違いを示してなぜこのような分類になっているかまで解き明かす。とはいえ難しい議論はそこそこにして、適度な掘りの深さに留めているのだという。
扱うのは明治時代までで、現在の新しい言葉づかいにはまとまった記述がない。正直なところ「話し言葉」と言うには少々イメージが違ったのだが、親しい間柄の日常会話にはあまり触れられていない(資料上難しいのだろうか)。場面に応じた言葉づかいに言及がある点が良い。
目次
○プロローグ
1.言語学的な準備
○古代の日本語
2.上代の話し言葉をさぐる
3.音韻の変化
○古代・中世の文法
4.中古・中世の話し言葉をさぐる
5.係り結びを考える
6.移り変わる文法
○中世話し言葉の世界
7.鎌倉時代の仮名書き漢語
8.漢語を使う人々
○文字となった話し言葉
9.中央語と方言
10.近世スタンダードの誕生
○エピローグ
11.スタンダードが東京語を作った
○補説
12.音声と音韻―言語学初心者のために詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
卒論用参考文献。
文字言語とは少し異なった文化を持つ -
日本人の話していた言葉がどのような言葉だったのか?書き言葉と違って一瞬に消えていってしまう言葉の再現はミステリーのような謎解きの楽しさがあります。万葉集がなぜ、このような場合の最も良い基準になるのか?古今集の時代には既に書き言葉と話し言葉が分離している時代だが…。500年単位で見て、言葉の歴史は、私たちの常識と異なり、この500年がむしろ変化が少ない。その前の上代から室町期にかけてが変化が大きかったというのは、書き言葉の存在を考えると確かにそのようなものなのでしょう。「い、え、お」列がそれぞれ2種類あり、全部で8種類の母音があったと考えられるという万葉仮名からの推測は興味深いものがありました。またキリシタン時代の宣教師の文書に答えが多くあると言うことも、彼らが話し言葉を理解しようと努めたことから頷けることです。
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いわゆる歴史的仮名遣いが実は短期間しか使われていなかったことに驚いた
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上代から近世までの話し言葉について主に音韻論の側面から述べる。
上代から古代、中世までの音声の移り変わり方、今日において見られない音の存在の示し方等。
中世以降は仮名書き漢語や近世に於ける話し言葉から書き言葉への転化について。 -
今まで自分が使っていた言葉の遣いかたや文書・漢字などについて考えさせられる部分や改めねばと思う部分が多くあり、日本語を正しく使えていない部分があるなと思わされました。
正しい言葉遣いや文章を目指したい人などに役立つと思います。
(教育学部・国語専修/匿名希望)