- Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
- / ISBN・EAN: 9784642057233
作品紹介・あらすじ
戦国時代百年もの間、なぜ将軍は滅亡しなかったのか。戦国期の室町幕府とはいかなる存在であり、各地の大名たちは将軍をどのように見ていたのか。知られざる将軍・幕府の実態を明らかにし、戦国期日本の全体像に迫る。
感想・レビュー・書評
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幕府理解は狭義と広義で分けるとよい。幕府安定期の守護は「上の承認に基づく公権」による相互補完で各国統治をおこなった。戦国期になると大名は「下からの公権」に依拠するようになり、幕府に求めるのは「正当」「栄典」等となる。応仁の乱後、細川京兆家が覇を唱えるが如く見えたのは、畿内に基盤があり在京機会が多かったため。細川家が動揺すると幕府が動揺するので「複数の在京大名に直接支えられる体制」への復帰を希求、六角家の管領代化や将軍からの上洛要請はそれ故。地方の足利体制研究を知りたい!最終章は説得力なく却下(2011年)
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[評価]
★★★★☆ 星4つ
[感想]
本書は戦国時代の足利将軍がどのような存在だったのから新しい研究成果をもとにわかりやすく解説している。
戦国時代の足利将軍は大名間を講和を行ったり、大名に朝廷の官位を授けたりし、大名はその代わりに資金や軍事力を提供するといったゆるい相補的な関係だったようだ。
相補的な関係を保つために将軍を支える大名を複数に分散させようとしていたようで、この辺りが義昭と信長が最終的に決裂した要因のようだ。
まあ、戦国時代の足利将軍が無力な存在ではないということはよく分かったが、複数大名へのリスク分散は統一組織の誕生を阻害する要因となり、戦国時代が終わらない原因の一つだったのではないかと感じた。 -
戦国期における足利将軍の実態を明らかにし、それを通して戦国時代日本の全体像に迫る試みがされている。従来のイメージを払拭する内容となっており、国際政治学の概念を用いて戦国時代の新たな切り口を提示する箇所は興味深かった。
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相互に補完しあう将軍と大名
室町の時代は江戸時代と違う -
守護が支えてたけど、守護に正統性を与えてたのでそれが成り立った。しかし守護が土着化すると守護が自立するようになった。細川京兆家に頼り過ぎるのは細川京兆家の没落とともに将軍家も没落してしまうので、そのリスクを分散するのは将軍家の伝統になった。将軍からもらう栄典が大名間で大きな価値を持っていた。信長と義昭の関係はそれまでの将軍と守護と変わらず、義昭がリスクの分散を図り、信長が上意の独占を図ったことに対立の原因がある。
ソフトパワーやバランスオブパワーなど国際政治学の理論も混ぜて解説。 -
室町時代はなぜか影が薄いですよね。
中学校の社会科の教科書では三代将軍義満のあと、
八代将軍義政が出てくるくらいで、
ほとんど触れられていません。
そもそも幕府というものが、
徳川氏による江戸幕府のイメージが強すぎて、
ある程度しっかりとした政治機構が整った、
中央集権的な組織を思い浮かべて将軍しまいがちです。
ですが、江戸幕府自体それほどでもなく、
室町幕府や鎌倉幕府に至ってはなおのことです。
室町幕府は、連邦国家に近いものでしょう。
そんな室町幕府の仕組みから将軍の役割について、
一般論を易しく解説しています。
その上で、戦国時代の足利将軍がどのような役割を果たしていたにか、
そもそも室町幕府はいつまで続いたのか、についても書かれています。
折角なので、義政以降の将軍がどのような活躍をしてきたのか、
書かれていると良かったなぁ、と思うのは贅沢でしょうか(^_^;) -
20111226読了