荒ぶるスサノヲ、七変化―〈中世神話〉の世界 (歴史文化ライブラリー 346)

著者 :
  • 吉川弘文館
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642057462

作品紹介・あらすじ

古代神が仏教と習合し、新しい「神」となる中世神話世界。異国神との合体や閻魔大王への変貌など、パワフルに姿を変え成長するスサノヲの魅力に迫り、近代のイデオロギーとは違う、底深い日本の宗教文化を読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • めちゃくちゃ面白い

    中世神話という世界を、はじめて知りました

    記紀の世界と、後世の神話世界の捩れはどうしてうまれたんだろう、と気になってたんですが、これが僕の探してたミッシングリンク

    それこそ、金春禅竹の明宿集の中世思考を学んだから共感できたすごい世界だった

    中世、面白すぎる

  • 日本神話のトリックスターとして名高く、破天荒ながらも魅力的な神、スサノヲ。しかし、『古事記』と『日本書紀』の間で、その姿は大きく異なる。それどころか、時代と場所が移ると、大国主神と同一視されたり、なんとアマテラスの父とされたりもしている。様々な「七変化」を、その背景とともに味わえる一冊。

  • 目次

    もうひとりのスサノヲへ―プロローグ

    『記』『紀』『風土記』神話のスサノヲ

     スサノヲ神話をどう読むか
     多彩なスサノヲ神話
     『出雲国風土記』のスサノヲ神話)

    中世神話が語るもの

     中世神話とはなにか
     ヲロチ退治譚の変奏
     「日本紀の家」が語るスサノヲから

    スサノヲは雲陽の大社の神なり

     スサノヲ、出雲大社に鎮座す
     漂流する山を繋ぎとめた神
     鰐淵寺・日御碕と中世スサノヲ神話
     冥府としての出雲
     
    祇園御霊会のスサノヲ

     スサノヲ変成の「神話工房」へ
     祇園御霊会をめぐって
     異国神となるスサノヲ
     中世神道の大成者、吉田兼倶

    スサノヲの神話学

     「善悪不二」をめぐる神話言説
     スサノヲ変貌する

    その後の、スサノヲ―エピローグ

    あとがき
    参考文献

  • 古事記・日本書紀で描かれるスサノヲに焦点を当てた日本神話の変遷記。言い伝えられる神話から独自に解釈し理解するのが当然だったという、鎌倉〜室町〜江戸初期の、中世神話を中心としている。
    悪神と英雄の両方の顔が描かれる古事記・日本書紀の記述を起点に、アマテラスとの関係がどんどん変化したり、仏教徒に語られたり、祇園で祀られたり、異国の神になったりと、まさに多種多様に解釈されてきたスサノヲ、良い意味での神話のテキトーさが伺える。正史を研究する学者にとってはたまったもんじゃないんだろうけど
    ダイジェスト版のように数々の解釈が登場し、あまり深入りはしない方針という印象。

  • 記紀から変容していく「スサノヲ」の姿を中世の神話に重心を置いて見ています。悪神から善神へ、更には出雲大社の祭神という「事実」や祇園牛頭天王との習合、外国から来た神様まで全て「スサノヲ」としてしまおうとする強引なロジック。仏教が絡んできたことにより、日本古来の神は姿を変え、そのすごいものが「スサノヲ」でした。個人的に宗教的・神話的なものは歴史の暗喩として好きなので物足りなくは思ったけれど、純粋に好きな方には濃くて満足のいく一冊、と言う気がします。

  • スサノヲが時代によってどう捉えられてきたのか、出雲大社との関係、中世の仏教教義による神々との結びつき。善悪の二面性を持った神の姿に、現代のスサノヲがどのような存在かを考えずにはいられない。

  • 中世の神話解釈が「コミケ」の世界に通じてるんだなあなんて思ってしまった本。「中世の神話研究」の研究として興味深く読ませていただきました。

    ブログはこちら。
    http://blog.livedoor.jp/oda1979/archives/4243891.html

  • アマテラスの変遷を追ってこられた筆者の、スサノヲ中世神話版。

    驚くべきは、あんなに雑多なスサノヲ像を歴史文化ライブラリーにまとめて書いてしまうところ。受容者、享受者によってさまざまで、とらえどころがないスサノヲ。仏教ベースなのか、出雲ベースなのか、貴族なのか、天皇側なのか、天皇側でも南朝なのか、北朝なのか、どこの神社の立場からなのかなどなど、多様すぎる。読むたびにおもしろいが、それをまとめるのは大変なのだ。
    それをさらりと書いてしまうのは、筆者の立ち位置がぶれないからなのだな~と改めて尊敬してしまう。

    今回の本では、スサノヲの受容と、ヤマトタケルの受容のリンク。この夏は平安時代に作られた「縁起」をまとめて読み直そうと思っているので。今年中に日の目を見せてやるために、今回の本は大変勉強になった。

  • 中世の神話についての話。「古代」そのままの神話でなくて中世において神話はどう捉えられていたか。

    現在では「解釈」っていうと、文献の通り正しい解釈とかを導き出すことだけど、中世においてはそれは新しい神話を作り出すことだったよって本。

    表題にもあるけど大方スサノオについて、閻魔や牛頭や地蔵菩薩と習合していったプロセスとその論理。

    英雄神であり、災いをもたらす神であるスサノオと、そのスサノオにいたるまでの流れはこんなだったかもれないないね~って。中世以前にも神話って増えていったりするしね。もともと出雲神話系の神でヤマト系の神話にまとめられる内に矛盾をもってきたのかもとも。
    また、ヤマタノオロチの戦いは、「自然の脅威」(オロチ)VS「自然の脅威」(スサノオ)でスサノオは鏡写の自分を乗り越えて、良いことをもたらす神に

    悪の性質ももつスサノオっていうモチーフは浸透側から解釈するか仏教側から解釈するで結構違う。

    そもそも「古事記」と「日本書紀」でスサノオさんキャラ違う。

    江戸時代には歌舞伎「暫」と重ねてイメージされてたかもって「大社縁結図」を引き合いに出して書いてあった。

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著者プロフィール

佛教大学教授

「2024年 『〈学知史〉から近現代を問い直す』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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