京都に残った公家たち: 華族の近代 (歴史文化ライブラリー)

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著者 : 刑部芳則
  • 吉川弘文館 (2014年8月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642057851

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京都に残った公家たち: 華族の近代 (歴史文化ライブラリー)の感想・レビュー・書評

  • 明治維新後、日本の中心地は名実ともに東京に移った。その明らかな時代の波に逆行し、「天子様を戴く千年王国」の瓦解に抗おうとした華族(公家)たちの動静を描く——。

    という謳い文句に嘘はないのだが、いかんせんノーブレス・オブリージュに欠けるきらいのあった我が国の華族(大量生産された男爵について「華族を軍人にしようとしたが、捗々しくなかったので軍人を華族にした」との記述がある。なお保坂正康「華族たちの昭和史」では東条英機ら平民軍人の、血と汗を流して国を動かしているのは自分たちなのに明治期のように叙爵がないルサンチマンが、太平洋戦争の無謀に繋がっていったと指摘されている)の中でも特に生気に欠ける京都在住公家たちの話なので、期待されるような華々しいドラマとはほど遠い。そもそも彼らの運動が実を結んでいたら、こんにちの「京都在住公家」のマイナーぶりもなかったはずで、その時点で失敗譚たることは運命づけられている。
    それも派手な「やらかし」ではなく、淡々と尻すぼみに終わっていくさまがまた哀れだ。本書でも彼らが京都在住であることの意味は次第に薄れていき、後半は単なる「公家華族の落魄話や不祥事集」の趣を呈する。
    ただ、それは彼ら自身のみの責任ではない。公家と大名と下克上を達成した下級武士とを一緒くたにした華族令にそもそも無理があったのだが、本書で華族間の経済格差を具体的かつつぶさに示されると、なるほどこれで「体面を保て」だの「それなりに交際しろ」だのは無茶振りだよなあ、と腑に落ちる。財産がないのは新華族も同様だが、彼らは政府高官として高給を得ていたし、そもそも平民から華族の栄誉を受けた時点で、巧成り名遂げた名士であるに決まっている。対して公家、特に京都在住の公家に用意されたポストはきわめて少なかったし、それどころか先祖伝来の仕事(装束とか雅楽とか蹴鞠とか)を取り上げられた側だった。
    貴種ヲタとして、従来華族を「公家+大名/勲功」という分けかたで捉えてきたが、公家と大名の断絶もなかなかのものだ。新しい視点が得られたのは収獲だった。

    最後に。本書の出色な点として、明治帝の命で撮られた華族の肖像写真が多数紹介されていることがある。正装・正面向きで、位階・姓名・年齢が明記されている。長らく宮中に秘蔵されており、著者の論文で初めて存在が知られたものだという。私も他では見たことがなかった。とてつもなく貴重なものであり、これを見るだけでも価値があると思う。

    ?〜2015/6/12読了

  • 前近代を研究している者にとっては、ここに挙げられているスキャンダルは、本来スキャンダルではありません。
    ところが、近代になって制度が変わり、西洋式の規範が
    求められると、旧時代の人間はついていけません。
    近代以降の視点で見ると、すごい話になります。
    それに京都の華族は経済的に苦しい。
    おもしろかったです。

  • 明治維新後に、岩倉具視・三条実美の2人の公家が東京への遷都に関して意見が分かれ、岩倉が消極、三条が積極というのは意外で興味深い。「京都を失っても構わない」とは三条の言葉。明治12年に華族に対して天皇から肖像写真の提出命令があり、それが今に残る。当時の公家の生活を彷彿とさせるが、そもそも写真を通して天皇が彼らを覚えようとしたのだと思うと現代にも通じて微笑ましい。武家よりも公家華族が貧しく従来通り質素な生活をしていた、とは皮肉であり、明治12年の久世家の盗難届の内容が残っており、金目のものがなく、泥棒にも当て外れだった!?とは淋しい笑い話。そんな中での閑院家・西園寺流の梅園家の女性・親子をめぐる不祥事はあまりにもドロドロし過ぎて壮絶としか言いようがない。明治から時代を重ね、京都華族の役割が貴族院議員のみとなり、それが今では文化伝統の保存に変化していったことは当然であり、それでこそ華族とされた方々の貴重な使命なのだと思う。

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