ポツダム宣言と軍国日本 (敗者の日本史 20)

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  • 吉川弘文館
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642064668

作品紹介・あらすじ

ポツダム宣言を受諾、再出発した"敗者"日本。軍国化への道と太平洋戦争の敗北から何を学ぶことができるのか。最新の研究成果を駆使して敗因を分析し、そこから得た教訓が戦後日本にいかなる影響を与えたのかを探る。

感想・レビュー・書評

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  •  書名には「ポツダム宣言」とあるが、日中戦争及びアジア・太平洋戦争期の日本軍隊の動向を中心としつつも、明治初期の日本軍の創設以来の「前史」、占領期の軍解体や戦後平和主義の定着過程の「後史」まで含む広義の「日本近現代政軍関係史・軍隊史」となっている。

     近年の政軍関係史研究は明治憲法体制の立憲主義的運用や「文民統制」を過大評価したり、明治期の日本軍と昭和期の日本軍の「断絶」を強調する傾向が台頭しているが、本書は昭和期の軍部の権威主義や独善性の究極の原因を明治の建軍過程に求め、明治憲法の専制的性格や「統帥権の独立」や軍部の政治化プロセスについてもほぼ通説に従っている。定評ある先行研究に多く依拠しているだけあって目新しさはないが、日本軍がいかに肥大化し、なぜ未曾有の大戦を引き起こし敗北したか?というテーマに実証的・論理的な回答を与えている。戦地での戦争犯罪や銃後の庶民生活との関連にも言及し、総じて日本軍の非人道的な「体質」に厳しい評価を与えている。

     近年の歴史修正主義の台頭や平和主義に対する反動への楽観的評価は疑問だが(ただし第2次安倍内閣発足前の執筆であることは考慮しなければならない)、東大アカデミズム史学出身の著者にしてはかなり思い切った軍国主義批判を行っている点も注目に値するだろう。

  • 古川隆久『ポツダム宣言と軍国日本』吉川弘文館。ポツダム宣言で大日本帝国は崩壊したが、なぜ愚かな戦争に突入したのか。先行研究を踏まえた上で、本書は明治維新から敗戦に至る経緯を概観し、その問いに答えようとする。著者が一貫して批判するのは「国民不在の国家」づくりという点。これは戦後も変わらない。

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著者プロフィール

古川隆久

1962(昭和37)年東京生まれ。1985(昭和61)年東京大学文学部国史学専修課程卒業、1992(平成4)年東京大学大学院人文科学研究科国史学専攻博士課程修了(博士(文学))。広島大学専任講師、横浜市立大学助教授などをへて、日本大学文理学部教授。専攻は日本近現代史。著書に『昭和戦中期の総合国策機関』(吉川弘文館 1992年)、『皇紀・万博・オリンピック』(中公新書 1998年)、『戦時議会』(吉川弘文館 2001年)、『戦時下の日本映画』(同上 2003年)、『政治家の生き方』(文春新書 2004年)、『昭和戦中期の議会と行政』(吉川弘文館2005年)、『昭和戦後史』上・中・下(講談社 2006年)、『あるエリート官僚の昭和秘史』(芙蓉書房出版 2006年)、『大正天皇』(吉川弘文館 近刊)などがある。

「2020年 『建国神話の社会史 虚偽と史実の境界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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