歌舞伎から江戸を読み直す: 恥と情

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著者 : 田口章子
  • 吉川弘文館 (2011年5月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (179ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642080583

歌舞伎から江戸を読み直す: 恥と情の感想・レビュー・書評

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  • 渡辺保さんの本とかはよく読むし、面白いと思うのだが、どうにも納得しかねる論があることもまた確か。この本の言っていることの方が基本的には正しいと思う。実際に歌舞伎座にたくさんいるおばさんおじさんの楽しみ方もこうなんじゃないだろうか。実際、妹背山なんてもともと心理劇ではないんだと思う。

  • ・田口章子「歌舞伎から江戸を読み直す-恥 と情-」(吉川弘文館)は、これまで義理と人情で語ら れてゐた歌舞伎を、副題にある恥と情で語るといふ内容である。しかし、書名は「歌舞伎から江戸を」である。歌舞伎を読み直すのでなく、江 戸を読み直すのである。これはいかなることか。「江戸時代というと、封建制度でがんじがらめになった閉塞状況の時代という理解が今もって なされている。」(1頁)冒頭の一文である。これは「明治期以降、近代国家樹立とともにつくりあげられてきたものである。」(同前)ここ から生まれる「封建制度に押しつぶされ圧迫されながら生きている江戸時代の人々」(2頁)の義理と人情を、「伝統的日本人の人間観」(9 頁)であり「日本人の行動を律する基本原理」(同前)である恥と情に置き換へて考へるといふことである。大袈裟に言へば、本書は江戸時代 認識のコペルニクス的転換を迫る書であるらしい。採り上げられるのは義太夫狂言8場、忠臣蔵六段目、寺子屋、すし屋、沼津等々、いづれも 超有名作である。それだけに、義理と人情の手垢にまみれてゐて、読み直すのにふさはしいといふことであらう。
    ・忠臣蔵六段目は勘平腹切りである。ここでは当然のこととして勘平役者が注目の的である。菊五郎の型によるところが大きい。これは「どこ までも勘平役者一人が目立つように工夫されている。」(70頁)ところが、私がこれを観ていつも疑問に思ふのはおかやの身の上である。こ の場でおかやは、夫が殺されたことを知り、娘お軽が売られてゆき、更に婿勘平が、舅の死の責任をとつて、切腹して果てるのを目にする。一 気に三人の身内を失うのである。常識的には、これでおかやが無事であらうはずがない。まして勘平が夫を殺したと思つてゐてはである。しか し、舞台はそれに頓着しない。端役は捨ておけといはんばかりである。あるいは、おかやはその運命を甘受せよといふことであらうか。私は、 これはいくら何でもをかしいと思ふ。渡辺保もさういふ考へのやうで、この場を勘平の「錯誤」から生じた家庭悲劇と捉へてゐる(25頁)と か。これだと私にもそれなりに納得できるのだが、恥と情の考へによるとこれもまた違ふらしい。勘平はなぜ切腹したのか。あるいは、なぜ主 君の大事に居合はせずに切腹しなかつたのか。これが恥の問題である。「仲間に『恥』をさらしたまま、死ぬわけにはいかない」(27頁)か ら生き延び、「仇討ち参加がかなわないとなれば、『恥』を知る人間として名誉回復する手立ては、もはや腹を切ることしかない。(中略)勘 平の切腹は、大星由良之助をはじめとする仲間に対し、死をもって『恥』をすすぐためであった。」(32~33頁)といふことになる。金は ほとんど問題外である。さうして最後の連判状、これも考へてみれば準備が良すぎる。なぜ持つてゐたのか。これが情である。「仲間たちの配 慮」、「本能的にかばいあおうとする仲間の『情』である。」(33頁)恥と情は不可分なのである。「勘平のすすいだ『恥』が仲間の尽くす 『情』に包まれている。」(36頁)かうなると、ここでもまたおかやは正に蚊帳の外である。おかやの恥は問題とされない。何しろ、端役と言はないまでも、脇役である。六段目は勘平を中心とした武士の芝居である。結局はかうして疎外されてしまふのであらうと思ふ。恥と情がい かに日本人の基本原理であらうが、かういふところには無理があると思ふ。いや、そんなところは本筋ではないから考慮の埒外であると言はれ るかもしれない。ならばそれで良い。ただ、この場でおかやは恥の人ではないはずである。さう確認しておきたいのだが……如何。

  • 歌舞伎の代表的な演目を知っている方なら、楽しめる一冊だと思います。『仮名手本忠臣蔵』の六段目「お軽と勘平」の話や『菅原伝授手習鑑』の「寺子屋(子殺し)」などの人間関係や心情や今までの役者がどのように演じてきたか、などなど。実際に読んでて、これ観てみたい!って思った演目がいくつもありました。

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田口章子の作品

歌舞伎から江戸を読み直す: 恥と情の作品紹介

封建的イメージが根強い江戸時代。しかし、そこには、日本文化の根底をなす「恥」と「情」が息づいていた。『仮名手本忠臣蔵』などの歌舞伎作品から、人々の生き方を再現。現代人には忘れられた日本人の伝統を問い直す。

歌舞伎から江戸を読み直す: 恥と情はこんな本です

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