「やさしい藩」の住人は、大人と子どもで50人。数にあぶれた子どもは「お花畑」に入れられ、空きがあれば「やさしい藩」の住人「やさしいわかもの」になることができますが、その代償として足を「やさしい足」にさせられます。「お花畑」で育てられているのは、ユメミの実。いくさが楽しくなる夢が見られる、黒い実の栽培が、やさしい藩の主産業です。
何一つはっきり描写されてはいませんが、この時点ですでに何もかもがこわい。
トラウマ本として名高い、上野瞭「ちょんまげもの」のうちの一作です。およそ三十年前に、児童向けに発表された作品ですが、その衝撃は現在もまったく色あせていません。こわいだけじゃなくて、作者のメッセージが強く心に残るからこそのトラウマ性。子どもの時に読んでたらたしかに、一生ものの一冊になると思います。