蟹塚縁起

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著者 : 梨木香歩
制作 : 木内 達朗 
  • 理論社 (2003年2月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (35ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652040232

蟹塚縁起の感想・レビュー・書評

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  • 梨木さんの作品を開くのは実に約4年ぶり。
    【ピスタチオ】の満足度が非常に高かったので、余韻に浸っていたというか、小さな旅に出ていたというか(笑)。
    しかしまぁ、これまたなんと深い読後感だろう。
    絵本仕立ててでありながら、ずーんと濃厚なロマネスクがここにある。

    輪廻転生がベースなので、下手するとこちらに戻って来れないかと思いきや、ちゃんと現世での生き方を考えさせる一冊になっている。
    大人向けの絵本ではあるが、中学生くらいからじゅうぶん読める。いや、むしろ読んでもらいたい。
    その年齢なりの「恨み・辛み・憎悪」などの念を抱えて苦しんでいる人には、なんらかの手立てを示すことになるだろう。
    『縁起』という仏教用語の解説は、ひとまず後回しにして。

    主人公の「とうきち」の前世は、無念のうちに非業の死を遂げた武士。
    蟹との出会いや、名主との出会いで、その因縁が明かされていく。
    前半、蟹の化身である美しい女が「押しかけ嫁でございます」と言ってやってくるあたりは、聞いたことのあるような昔話風。
    ほっこりした話かと思いそうだが、後半は大きく話が動き、蟹が前世の記憶の案内役をしていく。
    生きているということは、生かされているということ。
    切なく辛い因縁を断ち切らんとして、とうきちが最後に放つ言葉には、魂が浄化されていくような感動がある。
    ああ、この言葉を、せめて前世で亡くなる前に言っていたら・・・と思うが。
    誰しも、気がついたときは失ったときなのだ。
    木内達郎氏の重厚な油絵で、挿絵というジャンルを超えて一幅の芸術品のよう。
    闇に浮かび上がる人、月、牛、木々、蛍、戦の場面でさえもひたすら幻想的だ。

    心の中に降り積もる恨みや憎悪などと、どう向き合うのが良いのだろう?
    いくら否定してもふつふつと湧き上がる「悪意」を、人はどう処理して生きているのだろう?
    それに執着することそのものが、何より苦しいのに。

    『オマエガ ソノウラミヲ テバナサナイカギリ』

    答えを求める気持ちがもしあるなら、何かしら得られることだろう。
    読後、黄泉の国に置き去りにされないよう、お気をつけください。

  • 梨木さんの昔話のような絵本。
    …あなたがその恨みを手放さぬ限り…
    亡くなりその体は朽ち果ててしまっても、人の思いは永遠に残る。
    例え七回生まれ変わったとしても…。

    思いを遂げた蟹達が蛍になって、煌々と照る満月に向かって静かに飛び立つ様はとても幻想的で美しい。
    一匹残らず飛び立って行ってしまった蟹達。
    切なく哀しいような、それでいて温かな気持ちにもなり胸がいっぱいになる。
    木内達朗さんの淡く優しいタッチの絵が梨木さんの物語の世界にピッタリはまってとても素敵だった。

  • 縁起とは、仏教の考え方で、すべてのものは他のものとの縁によって起こるということであるという。
    物語のあらすじも、この縁起で成り立っている。
    前世で武将であった百姓のとうきちが、名主の息子が沢蟹をいじめているのを見て、助けてやる。それがために名主に恨まれ、とうきちの唯一の財産である牛を獲られてしまう。助けられた沢蟹が牛を取り返しに行くが、沢蟹の微力では大きな牛を取り返すことは及ばない。沢蟹は力尽きて、どんどん死んでいってしまう。その姿を見て、とうきちは、沢蟹達が前世で自分の家来であったことに気づいていく…。
    前世の縁起により、沢蟹達は無常の死を遂げていく。無益な争いと死を止めさせるためには、とうきち自身が、前世で無念の死を遂げたその恨みを手離さなければならない。
    縁とはなにか、許しとはなにか。
    非常に奥深いテーマを持つ作品で、完成度が高く、木内達朗氏の絵も幻想的で美しい。
    ただ、ラストの、とうきちが恨みを手離したことによって沢蟹達が蛍に変わって成就していくシーン、とうきちと名主親子との和解のシーンなどは、まとまりを意識したような展開に思えた。
    あの梨木香歩さんが、このあたり本当に納得して書いたのかな?と疑問を持った。
    それにしても、理論社は本当にグレードの高い児童書を作っていたんだなあと、いまさらながら感心してしまう。
    こんな出版社がつぶれてしまう現実。くやしい。

  • これは私の好きな忠義の話。
    何度生まれ変わろうと貴方をお守りするという誓いを守り家臣たちは蟹に姿を変え、とうきちを守ろうとする。何匹倒れても、何匹死んでも戦うことをやめない蟹。
    蟹の健気さに涙。それを止められるのはとうきちが復讐心を捨て相手を許すことのみ。
    名主の息子が蟹をいじめていたことが前世の恨みがよみがえるきっかけとなったのであろうか。

  • あなたがその恨みを手放さぬ限り…蒼白い月の光は、時間を超えたいくつもの魂の旅路を優しく照らし出す。
    幻灯のように浮かび上がる、静かな一夜の物語。
    とうきち自身気づかずにいた前世の無念は、律儀な蟹の群れと共に月夜に昇華される。
    幻想的絵本。

  • 【読了メモ】 (150914) 梨木香歩の絵本3冊/w/出久根育 『ワニ ジャングルの憂鬱 草原の無関心』/w/木内達朗 『蟹塚縁起』/w/出久根育 『ペンキや』/ワニ→仲間と自分の境目って何だろう? 蟹塚→泣ける ペンキや→不世出のぺんきや

  • 思った以上に面白かった。切ないが暖かい。それがまたカニというのが妙でなお良い。

  • 昔はじめて読んだときは面白かったので、久々に再読したら、初めて読んだ時ほどの感動はなかった。
    ちょっと設定に無理も感じられた。

  • 蟹塚は実在して、それに着想を得て書かれた話なのだろうか。
    ある農夫の前世の因縁話で、憎しみや恨みを乗り越えなさいという、不思議で美しい仏教説話のようなお話だった。絵も雰囲気があって良かった。

  • 絵も良いし話も上っ面だけで無い重みと感動があるけど、名主親子との和解のシーンではそんなにうまくいくかなと思った。

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