ひげよ、さらば 下 (理論社ノベルス)

著者 : 上野瞭

• 理論社

感想・レビュー・書評

[tetnetさんの感想 · 2019年5月26日]

野良猫たちが住むナナツカマツカの丘。隣接するアカゲラフセゴの野良犬たちの脅威から身を守るため、猫の団結を一人夢見る片目に拾われた記憶喪失の猫ヨゴロウザが、丘のリーダーに祭り上げられ、曲者揃いの野良猫や野良犬たちと繰り広げる実に人間臭いドラマ。子供の頃に読んだきり三十余年を経ての再読だったけれど、当時読み終えたときの感動が全く色褪せることなく訪れたことに驚く。まさに名作。ラストシーンの衝撃は、この作品が子供向けにオブラートに包んだ表現をする気のない渾身の作であることを時代を超えて主張する。子供の頃にこの作品に出会えた幸運にしみじみ感謝して巻を閉じた。

著者プロフィール

1928年8月16日生まれ。京都生まれ。同志社大学文学部文化学科卒。『ひげよ、さらば』で日本児童文学者協会賞、京都新聞五大賞文化賞を受賞。児童文学評論多数。創作には『さらば、おやじどの』『日本宝島』など。一般向けの小説には映画化された『砂の上のロビンソン』などが、エッセイ集には『ただいま故障中』などがある。2002年1月27日没。

「2023年 『ひげよ、さらば』 で使われていた紹介文から引用しています。」