- Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784652073858
作品紹介・あらすじ
はりつけの刑にさた兄と妹。妹思いの兄長松は、死の直前ベロッと舌を出し、妹を笑わせようとした。
感想・レビュー・書評
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自分にとって、まさに読書の原点となった一冊。
世の中には、こんなに悲しくてこんなに美しいお話があるのか、と子供ながらにいたく感動したのをすごくよく覚えてる。
それだけじゃなく、手元に残ったこの本には、幼くて拙いヘッタクソな書き込みがビッシリ…。
子供でもイイものはイイってわかるんです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
朴訥な表現や語り口に、迫力を感じます。
実はハードボイルドなんじゃねえかな。 -
先日読んだ『蜩ノ記』の中で特に印象深かったのは少年たちだった。
主人公の息子の友人、農民の源吉は、武士からお咎めを受け連れて行かれるとき、泣きだした妹に向かって、面白い顔をしてなだめていた。
このあたりのストーリーは、斎藤隆介さんの『ベロ出しチョンマ』そっくりだと思い、さっくこの本を読み返した。
江戸時代、天候不順で農作物の出来が悪いのに、重い年貢で農民たちは困っていた。千葉のある村でも村人たちが困りはて、名主が将軍へ年貢の引き下げを直訴に行くことになる。名主一家は直訴の罰としてつかまり磔の刑に。泣き叫ぶ妹に向かって、名主の息子長松は「俺の顔を見ろ」と言って、ベロをだし眉毛をハチの字にさげた面白い顔をして、妹を笑わせて死んでいった。
江戸時代の農民の子とはこんなにも兄妹思いなのか。
下の子の面倒をみながら労働に明け暮れてる過酷な毎日の中で、
小さくてか弱い者を年上の者がかばうのが当たり前、
そんな習わしが自然と身についていたのかもしれない。
昔のように、祖父や祖母が同居し、
大家族であればあるほど、兄妹の仲も良かったのかもしれない。
死の恐怖は誰もがあるものなのに、
妹を怖がらせないように、おどけた顔をする心優しい兄。
いいなあ。
自分の境遇を顧みれば、私には弟がいる。(もういい年のおじさんだが)
やはり、それはそれでかわいい(?)ものだが、
お兄さんっていいものだなと羨ましく思った。