樹上のゆりかご

著者 :
  • 理論社
3.53
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感想 : 173
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  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652077115

作品紹介・あらすじ

そのとき、愛の不可解さと宇宙で一番の謎を知る。都立高校を舞台にしたミステリアスな青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • 女子校や男子校の出身者は異性への興味をこじらせがちだ。結果、現実世界からの逃避(二次元や芸能人へ入れあげる)、趣味への没頭(得てして異性ウケしない)などで無関心を貫き、実戦においても経験値の低さから生じる勘違いや空回りなどで苦労する。(個人的主観に基づくものなので異論は大いに認める)

    都立トップクラス、文武両道の生徒が集う辰川高校。女子の倍の人数を男子が占めるため、女子は掃除も重たい物を持つことも免除されている。やや時代遅れのフェミニズム、と作中では揶揄されているが少し羨ましい。こういう環境にいれば私ももう少し対異性スキルを上げられたかもしれない。

    作者の母校がモデルのようだが、実際政治家やアナウンサーなどを多く輩出する進学校だ。男女交えての文化祭準備、熱く意見し合う生徒会…キャッキャ、ウフフのリア充ワールドである。

    ワイルド「サロメ」(ビアズレー挿絵)には私も高校時代強く惹かれたが悲しいかな、謎めいた美女と議論することも、実際の恋愛と関連づけて考えることもなかった。

    文化祭を妨害し、脅迫状を送りつけ、カッターの刃や付け火で皆の志気を削ぐ怪人K。立ち向かうは優等生集団 生徒会執行部。コナン君も出てこないしKの正体に辿り着くまでもじれったくて仕方ない。

    「これは王国のかぎ」の頃から成長したひろみに会えたのに、なんとなくリア充アピール乙…という印象。もっとファンタジーカラーの方が荻原さんの世界観を活かせるのかな。

  • とても好きな本なのだけど、どこが好きかはちゃんと言えない。そして、あまり人におすすめもできない。読む人を結構選ぶと思う。



    物語の中で繰り返し語られる、「名前のない顔のないもの」。

    これ、「女子の人数÷男子の人数」が消費税率よりも低い環境にいたことのある人なら、その存在に思い当たることがあるんじゃないかと思う。

    女子の居場所はちゃんとある。でも、男子の輪からは丹念に排除されている。そういう空間にいたことのある人。


     男子ってちょっと仲良くなっただけでお互い苗字呼び捨てになっちゃうもんなの?
     男子ってなんで言われもしないのに「伝統」とか「行事」とかを守ろうとすんの?
     男子って女子に対する態度と男子に対する態度がどこか必ず違うんだよね。。
     “チーム”で何かやり遂げた時の、男子のあの盛り上がりっぷりは何なの?


    こんな言葉だけでは、「それ」の側面さえも描ききれていないや。
    でも、それが「在る」ことはちゃんと分かるのだった。

    もやもやしたそれを、しかしこの本は最後まで描いてはくれなかった。
    近衛有理さんがそれと戦っていたことは分かる。
    それと対決したいがために、鳴海君をそこから連れ出したいがために、パンにカッターの刃を入れ、生徒会を脅迫し、学校に火を付け、そして「サロメ」を舞った。

    作者は、「それ」に対する近衛有理の想いの強さは描き切ったけれど、「それ」そのものについては、目に見える/手につかめる形にまではしてくれなかった。

    だから、ちょっと肩すかしをくらった読後感ではある。
    まして、「女子率消費税以下」の環境にいたことが無い&想像もつかない人が読んだら、「あのイカレ女いったい何がしたかったんだ」で終わってしまいかねない内容だ。


    それでもこの物語を好きなのはたぶん、主人公と同じく近衛有理に惹かれるからだ。
    主人公の「夢」の話を笑わなかった人。
    「名前のない顔のないもの」の存在を理解している人。
    サロメに匹敵する強い想いを持つ人。

    作者は、「名前のない顔のないもの」を描きたかったのではなく、それと戦う近衛有理を通して自分の高校時代を描きたかったのかな、と思う(「高校時代の自分」ではない)。

    私の通った高校はこんな「行事に熱い」学校ではなかったので、感情移入しにくかった。ただ、主人公が「行事に熱い」人たちにつかずとも離れず、な位置だったので、「燃えてる自分に酔ってる」人たちに対する嫌悪感を抱かずに読み進められた。

    そんな主人公だったので、「名前のない顔のないもの」に対してもやっぱりつかず離れずな立ち位置で、もっと至近距離まで近づいてくれなかったのが返す返すも残念。

    近衛有理視点で読みたかったかも知れないな。
    中村夢乃でもいい。私は彼女と同じ失敗をした気がする。男になろうとし、男の輪の中に入り込んだ。でもそこまでだった。

    女子を排除することによって成り立っている共有意識。だから、私がそこに入り込んだ時点で、それはもはや別物になってしまっていたのだった。

  • 『これは王国のかぎ』の「上田ひろみ」のその後のお話。
    断然こっちが面白かった。
    この高校自体が独特だけど、学校とか伝統というものが共通して持っている光と闇が描かれている。

    進学校のなかで落ちこぼれていく諦め、わかるなぁ…
    ひろみに共感できたからぐいぐい読めたのかも。

  • 歪な関係

  • 国語の問題集で見つけて読みたいと思ってたものがたまたまあったので読んだ。
    問題集では、合唱祭のところしか書いていなく高校生か中学生が学校生活を送る話なのかな?と思っていたら予想とはだいぶ外れた学校生活だった。
    その高校は、女子の場所とかいうのではなく最初は男しか居ない学校だったから女子がそこにいて女子だけで作り上げたものは無い、だから辰高祭でも少し危険なやり方をしていたり、男子でピアノを弾く人はあまりいないからアカペラで歌ったり、だから辰川高校には女子の文化?はなくとってつけたかのようなチアリーダーとか、フォークダンスとかが女子が来たことによって無理やりつけてるような違和感を覚える。
    近衛さんがやろうとしていたのは女子の文化を作ることではなくいとこと同じものを味わいたいとかいう少し行き過ぎた愛なのではないのか。合唱祭、文化祭、運動会、そのすべてが終わればどうでもよくて、上田さんに近づいたのも従弟との距離が近っかたから、それだけの理由なのか。
    ただ、推理ものではないからなのか怪盗kの存在がわかりやすくなっていてそこが狙いで主人公の心の中の考えを変えるためにわかりやすくしてるのか、そうなのかはわからないかった。

  • 男女比3 :1の昔から続く学校での学園生活。主人公はおとなし目の女の子(だけど芯はそこそこ強い)で、周りには濃い面々ばかり集まる。合唱祭や演劇祭を妨害する事件が割と生々しくてちょっと引いた。

  • 荻原さんの作品の中で一番好き。
    サロメの踊りが見てみたくなる。

  • 他の人のレビューを読んで「これは王国のかぎ」の続編だったと知った。全然気づかなかった!中学三年生のときに失恋して、その後夢のなかで別世界に行ったような経験をしたっていうのはそれのことか!大冒険をしてしまったがために、現実世界にどこか違和感を感じてしまっていたんだな。前作と違いファンタジー要素がなかったのも気づかなかった一因かも。今回は学園物。舞台は男子の割合が多い高校。制服のない自由な校風とか、行事に異様に力を入れるところが母校と似ていて、高校時代を思い出して懐かしくなった。サロメのダンスシーンが印象的。

  • 「サロメ」と「ハムレット」と「マザーグース」

  • 男女比率のアンバランスな高校で,行事を中心に顕になっていく構造.そういう空気感がとてもリアルに伝わってくる.演劇祭のサロメも面白そうだった.友情,恋愛の芽生えなどとても感受性豊かでそれでいて分析力抜群のひろみ,シンドバッドではなく夏郎への恋に変化するのだろうか?

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著者プロフィール

荻原規子・東京生まれ。早稲田大学卒。『空色勾玉』でデビュー。以来、ファンタジー作家として活躍。2006年『風神秘抄』(徳間書店)で小学館児童出版文化賞、産経児童出版文化賞(JR賞)、日本児童文学者協会賞を受賞。著作に「西の良き魔女」シリーズ、「RDGレッドデータガール」シリーズ(KADOKAWA)『あまねく神竜住まう国』(徳間書店)「荻原規子の源氏物語」完訳シリーズ(理論社)、他多数。

「2021年 『エチュード春一番 第三曲 幻想組曲 [狼]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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