ベルリン1919

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制作 : Klaus Kordon  酒寄 進一 
  • 理論社 (2006年2月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (663ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652077719

ベルリン1919の感想・レビュー・書評

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  • 原書をはじめて読んで、これは絶対翻訳したいと思ったのが1985年。出版するまでに20年もかかってしまいました。でも内容は決して古びていないです。現在の日本の教育や国防の流れを考えると、むしろ「歴史」から学べる一冊でしょう。舞台は1918年から1919年にかけてのベルリン。第1次世界大戦終結の大きな引き金になったドイツ革命の渦中をかけめぐる14歳の少年ヘレの物語です。タイムスリップしたかのようなリアリティがあるのは町並みや暮らしが当時そのままに詳しく描かれているからでしょう。ただこの本には1点だけフィクションがあります。主人公の一家が住む下町のアパート。これだけは実在しません。その住所には古くから墓地があります(現在も)。つまり幾世代にもわたるベルリン市民の「思い」がこの一家に込められているのですね。彼らの思いは「パンと平和」。使い古された言葉かもしれませんが、当時の彼らにとっては本当に切実だったのです。「ベルリン1933」「ベルリン1945」で三部作となります。

  • 先が気になるし暗澹たる気持ちになる。

  • ベルリン3部作
    読みながらアンジェイ・ワイダの映画を思い出したりした。
    わずか100年ほど前の話なんだなあ、ドイツもこんなに厳しい時代だったんだ。ドイツ帝国が崩壊して一時の革命政権の予感、もろくも崩れる。今の中東なんかにも通じるかも。ほとんど忘れている世界史。ロシア革命のあと。13歳の子どもが主人公、いろんなことがよく見える。次が楽しみ!

  • クラウス・コルドンによる「転換期三部作」の第一作。
    原題は『赤い水兵あるいは忘れられた冬』(Die roten Matrosen oder Ein vergessener Winter)
    1918年の凍てつく11月から1919年の寒い冬、ベルリンの貧民街ヴェディング地区アッカー通り37番地のアパートを舞台にゲープハルト家を中心に描かれている。
    特にゲープハルト家の13歳の長男ヘルムート(通称ヘレ)の目を通して、ドイツで起こった様々できごとが描かれている。史実とゲープハルト家というフィクションがうまく交差し、歴史上の出来事がまるで自分の身の上に起きたように感じることができる。またどの登場人物もみな、魅力的である。

    なによりもつらいのが第一次世界大戦から帰還した父の負傷。そして食べるものがない日常。考え方の違う父を持つ友人との仲。弟妹の健康。豊かな者と貧しい者。革命とその行方。皇帝ヴィルヘルム二世を追放したにもかかわらず、迷走するドイツの人々。武装蜂起。

    13歳ヘレの好奇心、素直さが物語を気持ちの良いものにしているのだと思う。

    この後のドイツの行方がわかっているだけにつらいが、先を読んでいきたい。

    すごい児童文学に出合ってしまった、というのが率直な感想で、ぜひこれを紹介していきたい。
    こんな物語を通して、歴史を知ることができるのは幸せだと思う。

    P63「おまえも父さんも、母さんもまるたも、ハンスぼうやも、オスヴィンもシュルテばあさんも、みんな、なにも得をしないさ。皇帝と将軍たちも得はしない。勢力圏が広がるだけさ。戦争で本当に得をするのは、資本家たちだ!戦争はいい商売になる。武器と弾薬はすぐに消費するから、どんどん新しいのがいる。作るのは工場、買うのは軍隊だ。新しい大砲と弾薬が次々と前線に送られる、そしてその武器で、外国を制服するんだ。だけど、父さんやおまえや、母さんやマルタには関係ない。外国を占領して、おれたちになんの得がある?得をするのは、またしても資本家さ。そこには石炭や鉄や畑がある!それにもちろん、製品を売る市場がある!つまり搾取するってことだ。そこから奪い取ったものを、そこで売るわけだからな。戦争はじつのところ、ただの略奪行為さ。だけど、そんなことは口が裂けてもいっちゃいけない。そんなことがばれたら、みんな略奪につきあうのはいやだといいだすからな。おれたちがまぬけで、なんでも信じてしまうから、敵が先に襲ってきた、皇太子の敵討ちだ、とデマを流すのさ。そしておれたちは行進する!ひたすら行進しつづけるんだ!お偉い方々のために吹き飛ばされ、命と健康を犠牲にする。おれたちには、金がかからないからな」

    オスヴィンの手回しオルガンの「ベルリンの空気」
    https://www.youtube.com/watch?v=IiVW5r8J5Dk

    P233「問題は、なにを望んでいるかじゃないんだ。それでどうなるかなんだよ。不正との戦いに身を投じる。聞こえはいいが、はたして報われるのかね?武器をとって戦ったら、それ自体、不正になりはしないかね?そしたら、またしもほかのだれかが不正な目にあうことになるんじゃないか?結局、世界の歴史は不正の連続なんじゃないのか?」

    P310「どこの出でもいい、どこへ行くかが問題だ。出身で人間を判断したら、おれたちにはカーr・リープクネヒトもいないし、ローザ・ルクセンブルクもいないことになる」

    カール・リープクネヒト
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%97%E3%82%AF%E3%83%8D%E3%83%92%E3%83%88

    ローザ・ルクセンブルク
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B6%E3%83%BB%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%83%96%E3%83%AB%E3%82%AF

    P390「のほほんと生きていると、永遠に生きていられるような気になる。一分一秒がどれだけ貴重かわからなくなるもんだ」

  • ドイツの20世紀前半の〈転換期〉を描いた三部作の第一巻。余り馴染みのない「11月革命」を子どもの目を通して淡々と語っていく。児童書と言うには余りに重い内容だが、これが児童書だからより価値があるのか。 一家の歴史をもう少し一緒にたどってみようと思う。

  • 「1933」「1945」三部作読了。

  • 全3部作の児童向け作品だが、中身は大人顔負けの充実度。
    第一次世界大戦終わりごろのドイツを舞台に、政府軍と対立する独立社会党と支持者の労働者たち。
    その対立に巻き込まれながらも自分たちの生活を粛々と遂行しようとする
    子供たち。
    それぞれの立場における戦時の苦悩と葛藤が細やかに描かれています。

  • あくまで児童文学なのでその点はご了承を。
    ナチスに比べると注目されることの少ないドイツ革命を題材にした物語。
    政治活動家の家族の運命を少年視点で描くため、政治情勢の説明としては物足りない点が多いかもしれない。
    だが戦いに敗れた人々が、10年100年後の再起を誓う希望の光さすラストには心を打たれた。
    もちろん彼らの未来にはあの独裁者が待っているのだが。

  • 1918年の11月、プロイセンの首都ベルリンの貧民街べディング地区のアッカー通りに住む13歳の少年ヘレ(ヘルムート)は戦争を始めた裕福な人々以外の全ての人と同じ様にもう3年もお腹をすかせていた。
    第一次世界大戦が始まって4年、戦争の目的が自分達の平和や尊厳とは全く関りなく、騙されていたことに気づき、空腹と戦争に耐えられなくなった人々はスパルタクス団を結成する。
    第一次世界大戦で右腕を失い除隊した父ルディも帰ってきて、キールで反乱を起こした水兵の蜂起をきっかけにドイツ革命が起こる。皇帝を退位に追い込み、勝利したかに見えたが、社会民主党が手柄を掻っ攫い、やがて権力と金と武器でスパルタクス団を排除しはじめ、ベルリンは市街戦へとなだれ込んでいく。

    パンと平和を求める人々の日常が悲惨でありながらもまるでそこにいるように情景がありありと伝わってきて、スパイや訪問者に心臓を震わせ、食べ物を調達できたときは無上の喜びを感じ、病気になって行く子供達に胸を痛め、革命に身を投じる母や父、友人達の安否や死に胸を痛める。

    四センチくらいの分厚さにちょっと躊躇したけれど、読み始めるとすごく引き込まれて夢中でほとんど一気に読んでしまった。
    ナチス時代や第二次世界大戦の本は何冊も読んだけれど、その前のドイツというと、教科書でもベルサイユ条約の莫大な賠償金によって追い詰められた所にナチス台頭、くらいしか習わないので良く知らなかった。日本が旧憲法を作る手本にしたワイマール憲法がどういう過程で出てきたのかもちょこっとわかって愕然とした。

    スパルクス団がうまく行っていたらどんな未来だったろうと考えずにはいられない。そしてうまく行かせるには何が必要だったのか。
    それを考えることは戦争を防ぐにはどうしたらいいのかの答えのひとつになると思う。共産主義はソ連や東側諸国が失敗し、70年代の学生が失敗したように、絵空事で不自由そうで結局独裁者を生み出すだけの思想に感じていたけれど、物語の中のリープネヒトとルクセンブルク、スパルクス団の行動や言葉に触れて、その本質や目指していたものが少し理解できた気がした。
    ただ、人は変わっていくし、すぐに影響されるし、誰か一人の意思で時代は動いては行かない、そのはがゆさをゲープハルト一家を通して共有した気がした。

    この物語が面白いのは、少年の日常と共に、子供のわりにあらゆる重要な場所に出没し、一家が関っていくからかもしれない。それが多少不自然でも、ヘレの視点で語られることによって分かりやすく、必要以上に暗くならず、希望を感じる物語だった。ただ、この先降りかかる災厄を思うと一家の運命がとても気にかかる。

    児童書だということを読んでから知ったけど、読みやすさはなるほど児童書だなと思うけど、この忘れ去られた激動期の流れを知る本としては大人にも充分読み応えのある文章だと思う。

  • ベルリンにすむ普通の人々の物語。これからどんどん辛い時代がくる、ということを知っているだけにずっとハラハラしながら読む。ヤングアダルト向けにしては内容が濃い。

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