この世でいちばん大事な「カネ」の話 (よりみちパン!セ)

著者 :
  • 理論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652078402

作品紹介・あらすじ

どん底だった、あのころのこと。「貧乏」は、札束ほどにリアルだった。「働く」はもっと、「しあわせ」につながっていい。だから、歩いていこう。自分の根っこを忘れないために。大切な人が、心から笑ってくれるように。切れば血が出る、読めば肉となるサイバラの物語へ、ようこそ。

感想・レビュー・書評

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  • 勝間和代さんの言うところの「正のハンデ」側にいる自分にとってはかなり衝撃的だった。

    お金がないということの絶望を知らないから綺麗事で生きられるだけで、どん底から這い上がってきた人間の強さには絶対敵わない。

    家に置いておきたい一冊。

  •  ティーン向けの本だし、文字組みもゆったりしているから、すぐに読み終わる。しかし、読後感はよい意味で重い。

     もうとっくに誰かが指摘していることだろうが、『矢沢永吉激論集 成りあがり』の女性版という趣がある。語り下ろしによる自伝という点も共通だし。
     むろん、本書で少・青年期のサイバラが「貧乏から抜け出たい」と願いつづける気持ちは、ヤザワの「ビッグになりたい」と思う気持ちとは少しく異なるだろう。『成りあがり』はサクセス・ストーリーだったが、本書の眼目は人気マンガ家サイバラのサクセス・ストーリーにはないし。
     しかし、小気味よいリズムをもつ語り口と、貧困から身を起こすいきさつを通じて読者を鼓舞する「熱さ」が、『成りあがり』によく似ているのだ。

     巻末に、気の毒になるくらい小さく目立たない形で、「構成……瀧晴巳」というクレジットがある。サイバラにインタビューして話を文章にまとめたライターがこの人だという意味だ。
     瀧晴巳さんは『ダ・ヴィンチ』等で活躍している女性ライターだそうだが、同じように構成仕事をよくやる私から見ても、本書の構成はすこぶる巧みである。サイバラらしさを少しも損なうことなく文章化している。有能なライターだと思う。

     本書は自伝としても感動的だが(とくに、鴨ちゃんに触れた終盤は泣ける)、サイバラ流の「貧困論」としても読みごたえがある。

    《あのね、「貧困」と「暴力」って仲良しなんだよ。》

    《人は「貧しさ」によって、何事かを考えようという気力も、よってたかって奪われてしまうんだよ。》

     貧困問題・ワーキングプア問題に対する、サイバラなりの回答が本書にはある。社会保障やら就労支援やらといった枝葉はすべてすっ飛ばし、貧困問題の本質のみを取り出して、それと闘う術をサイバラは提示している。

     個人的には、サイバラがマンガ家・イラストレーターとして一本立ちするまでの悪戦苦闘に共感し、胸打たれた。

    《溺れた人は、たとえ泳げなくたって、必死で水をかくでしょう。
     貧しさが何もかもをのみこんでいくような、ブラックホールみたいな世界にのみこまれないために、わたしは、絵にすがりついた。才能があろうがなかろうが、そんなことは関係なかった。
     自分は絶対に絵を描く人になって東京で食べていく。そう心に決めた。
     この町には、もう、絶対に帰らない。》

     「絵」を「文章」に置き換えたら、まんま24年前のオレじゃん――そう思った(ちなみに私はサイバラとタメ年)。
     私も、文章に「すがりつ」き、「文章を書く人になって東京で食べていく」と決めて、何のあてもないまま東京にきたのだから……。

  • 漫画家、西原理恵子の壮絶人生。
    自伝的エピソードをもとに、「貧困」と「暴力」が手をつないで支配している「負のループ」の仕組みを紐解いていく。

    サイバラさんの生い立ち、少女時代の環境や背景については、『パーマネント野ばら』、『はれた日は学校を休んで』、『女の子ものがたり』、『いけちゃんとぼく』、『ぼくんち』などなど、 これまでにも漫画作品を読んでいたのでなんとなく知っていた。でも漫画はやっぱり視覚的にもデフォルメされているし、ストーリー性もまとっているし、フィクションであることが明確な「作品」。本書では「貧困」というものが、「内側」と「外側」から(ほぼ)言葉のみで語られていて、より生々しい現実味を帯びて立ち上がってくる。
    若い読者向けの読みものだけあって、とてもわかりやすいし、読みやすい。
    そしてサバイバー・サイバラ姐さんの言葉はとんでもなく力強い。
    大変なことを乗り越えて、自分の努力と実力で「カネ=自由」を勝ちとったという成功ヒストリーだけでなく、その後ギャンブルにハマったダメな自分の黒歴史も晒しているところがまた凄い。それでも立ち止まらない。這い上がる。

    なんか、いろんなことにウジウジしていることが、馬鹿らしく思えてくる。
    「いざというとき、大切な誰かを安心な場所にいさせてあげたい。そう思うなら、働きなさい。働いて、お金を稼ぎなさい。そうして強くなりなさい。それが大人になるってことなんだと思う。貧しくって、かなしい出来事をたくさん見てきた子ども時代のあの場所から、わたしも、とうとう、そう思える場所までたどりついた。家族の笑顔がある場所。しあわせで安心な我が家に。」
    わたしはぜんぜんたどり着けてないなあ。自分のことばっかり考えちゃってるし、まだまだ人に頼ろうとしちゃってるなあ、と反省。しっかりしろーっと、背中を(かなり強めに)押してもらった感じです。


    以下、内容概要:

    第1章 :どん底で息をし、どん底で眠っていた。「カネ」がないって、つまりはそういうことだった。
    「生まれる場所を、人は選ぶことができない。だとしたら、ねえ、どう思う? 人って、生まれた環境を乗り越えることって、本当にできるんだろうか。」

    第2章 :自分で「カネ」を稼ぐということは、自由を手に入れることだった。
    「「最下位」の人間に、勝ち目なんてないって思う? でもね、「最下位」の人間には、「最下位」の戦い方ってもんがあるんだよ。」

    第3章 :ギャンブル、為替、そして借金。「カネ」を失うことで見えてくるもの。
    「あぶくみたいに、あっという間に消える「カネ」。ただの情報、架空のデータみたいに思える「カネ」。世の中には、汗水たらして働いた手で直接つかむ以外にも、いろんな種類の「カネ」があった。」

    第4章 :自分探しの迷路は、「カネ」という視点を持てば、ぶっちぎれる。
    「自分は何に向いているのか。自分がいったい、何がしたいのか。深い迷路で身動きができなくなっているキミを、「カネ」が外の世界へと案内してくれる。」

    第5章 :外に出て行くこと。「カネ」の向こう側へ行こうとすること。
    「人が人であること。人が人であることをやめないこと。貧しさの、負のループを越えた向こう側に、人は行くことができるんだろうか。」

  • 西原さんのエッセイやマンガでだいたいのところは知っていたが、通して読むと、改めて、過酷な状況からよくぞずっと描き続けてきてくれましたって思う。
    「パチンコには一言言わせてもらいたい」くらいから読んでいたので、銀玉親方こと山崎一人さんへの言及はうれしい。
    そして、マージャン周辺から世界へシフトしていった背景もわかった。
    仕事し続けることは必要だ。

  • ともすれば思考停止になりがちなこのごろ。学生さんとか若い世代向けに書かれているシリーズもののようですが、大人にもズシンときます。

    サイバラさんは、絵柄が苦手でなかなか近づけませんでした。ただこの方の生きざまは尊敬するというか、想像もつかないところもあり、今回少し触れることができて学びが多くありました。

    いま、たとえば中学校や高校に通っている現役生の方には、実感としてはわからない話かもしれない。ある程度社会につかれた大人や、学生さんでも苦しさを抱えている人へのほうが、届きやすいかもしれない。
    気持ちを忘れそうになったとき、また見返してみたら良さそうだなと思いました。

    つかれたら、ちょっとやすもう。

  • この人やっぱすごいわ。西原さんの私小説風大事なお金に関する話。貧乏のどん底から這い上がり時代の寵児となった人の言葉には説得力がある。これ読んだらキレイごとなんて言ってられなくなるよ!
    思わずブログに感想をば↓
    http://zazamusi.blog103.fc2.com/blog-entry-312.html

  • 若い内は苦労を買ってでもしろと言いますが、西原氏の半生は苦労の域を超え、日本での話とは思えないほど壮絶で驚きました!

    アル中で暴力的な実父がドブに落っこちて死に、次にやって来た継父は優かったが見栄っ張りで暴力的、そして堅実だけど男に振り回されて苦労ばかりの母。

    周りの大人は皆お金が無いことによって苛立ち、それをぶつけられる子供は明るい将来が描けず、常に荒んだ空気が町を覆っている。

    そんな子供時代を過ごした西原氏は「貧乏にだけは絶対に戻りたくない!」と堅く誓い、東京の美大へと進み、在学中に出版社への売り込みを繰り返し、漫画家として成功していく。

    と言っても、西原氏の絵は上手ではなく、エロ本の挿絵を描いたり、報酬をちょろまかされたり苦労は絶えなかったそう。

    それでも頑張れたのは、貧乏への並々ならぬ思いが根底にあったからこそ。


    「損はしたくない!得したい!」とばかり考える卑しい人間にはなりたくありませんが、作中で西原氏の「皆でお金を出すときは他人より多めに出せ」という言葉にはっとしました。

    自分はそれが出来てないという事実が恥ずかしい。
    心まで貧乏になってしまうことが1番恐ろしいこと。
    改心します!!

    (中央図書館)

  • 最近ぼんやりと考えていた「お金」のこと。自分はお金に縛られてるんじゃないかって思ってたときにたまたま出会った本。
    期待した通り、綺麗事じゃなく、「カネってこういうもん!大事なもん!」とバシッー!っと言ってくれたのが痛快だった。
    ああ、そうだよね。やっぱりそれでいいんだよね。お金は大事なものだもん。西原さんは「家族を守るために大事なもの」って言ってた。
    うん、やっぱり一人暮らししよう。
    いいタイミングで良い本に出会えたわ。

  • だいぶ前に読み終えてたんだが、最近再読した。

    お金がないってのが、どれだけ悲惨なことなのか、痛切に感じられる一冊。
    あくまで私見だが、これは中学1年生くらいには、必読書として提示すべきではないかと思う。いや、絶対に早めに読んだがいいよ。ホンマに。

    これを読んで感じるのは、「貧乏って罪だ」ってことかなぁ。罪、が言い過ぎなら、「貧乏は病気だ」でもいい。それも、インフルよりも性質の悪い伝染病だって感じかな。

    僕の子供のころも、とにかくひどい貧乏やった。今考えると、あの頃には二度と戻りたくない、という気持ちしかない。

    その時のことを思い出しながら読んでた。

    金がないって、どれだけ悲惨なことなのか、金があるって、どれだけ恵まれていることなのか、それが本当によく分かる。

    金で買えないものは、確かにあるんだけど、金でしか買えないものもあるんだよ、世の中には。

  • 題名見てわかるとおり、内容は結構ヘビー。
    でも、これは知って間違いない知識。
    真面目な内容でも、笑わせて泣かせるのは
    さすが西原さんだと思う。

    娘が中学生になったら、必ず読ませる。絶対。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「笑わせて泣かせる」
      肯くのみ。。。
      「笑わせて泣かせる」
      肯くのみ。。。
      2014/07/28
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著者プロフィール

高知生まれ。漫画家。’88年『ちくろ幼稚園』で本格デビュー。’97年『ぼくんち』で文藝春秋漫画賞を受賞。’05年『上京ものがたり』『毎日かあさん』で手塚治虫文化賞短編賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

「2021年 『猫組長と西原理恵子のネコノミクス宣言 コロナ後の幸福論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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