勇者の谷

  • 理論社
3.22
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (587ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652079546

作品紹介・あらすじ

谷には伝説があった-人を襲う怪物トローとの戦いに命をかけた十二人の勇者の物語が。しかし、それらがすべて嘘で、勇者などいなかったとしたら?少年は、伝説に包みかくされた真実を求めて、谷を出る。思いもよらない結末が待っているとは知らずに…。

感想・レビュー・書評

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  • あっさりファンタジー:D

  • 昔、人や家畜を襲うトローという怪物がいた。それを牧草地からつきでた巨大な岩≪戦い岩≫で12人の勇者が誓いの儀式をし、トローたちと戦った。その先頭にたったのがスヴェンだった。勇者たちに守られた谷、夜にケルンを越えてはいけない。勇者たちを祖先にもつ家々は、祖先の、そして家の名誉をとても重要に思っている。
    そんなスヴェンを先祖に持つスヴェンソン家のハリ。スヴェンソン家がいちばん大きいと思っていたが、実際は違っていた。ある日、叔父のブローディアがハコンソン家のものに殺され復讐をしたいのだが、争いごとは名誉のためにたたかうのではなく、人々の話し合い≪裁き≫で解決されていた。土地を渡すというそれだけで。不満だったハリは、復讐の旅にでた。

    そのまま冒険ものになるのかと思っていたら、主人公のハリはずんぐりした体形で、背も兄の半分ほどしかない。しようとしていたことも上手くいかず、正しいと信じたことも裏目に出たり、結局は復讐できずに谷にもどる。しかしトローと勇者の伝説が嘘なのではないか、トローなどいない、というアウドと出会い、谷を出る。
    谷を出たり入ったり、予想外の展開をしますね。メインは谷の中での物語。結末も意外。

  • 谷に古くから伝わる、勇者とトローの伝説。
    少年ハリは先祖である勇者スヴェンに憧れていた。
    しかし聡明な少女、アウドは言う。「勇者もトローもすべて作り話」なのだと。
    2人は掟を破り、トローの住む荒野へ行く決心をする。

    勇者スヴェンの伝説は、正直、かっこよくもなんともない。ただのならず者じゃないかと思ってちっとも共感できなかった。
    それでも荒野を2人が探索する様子には引き込まれたし、料理の匂いさえ漂ってきそうな宴会のシーンなどは面白かった。

  • 読みやすいが、バーティミアスに比べるとこじんまり。

  • 舞台は渓谷の12の村落。
    かつて12人の勇者が獰猛なトローと戦い、現在の礎を築いた。

    …とされている。。
    実際は勇者などいなかったとしたら?
    12の村落が銘々勝手に自分の先祖を英雄に祭り上げ、全てが
    虚構で塗り固められた伝説だったとしたら??

    というのがストーリーの軸になり、そこにストラウド特有の
    性格のまっすぐでない主人公が絡んできます。
    (少なくともナルニアには出してもらえない感じの…)

    『従来のファンタジーを覆すようなストーリー』であることに
    間違いはないのですが、同時に読者がファンタジーに求めている
    ものも無視してしまっているような…
    『バーティミアス』ときはあれほどやめられないとまらない状態
    だったので、つい同じレベルを期待してしまい残念。

  • かつて戦いに優れ多くの土地を手に入れたと言われるスヴェンの子孫であるスヴェンソン家の次男、ハリは法で全てを決め戦おうとしない現代の暮らしに飽き飽きしていた。つまらないいたずらをしては怒られるだけの日々に嫌気がさし、大好きな叔父を殺されたことで、復讐と冒険心に火がついたハリ。ハコンソン家にたどりついたものの、復讐できずアウネソン家のアウドの世話になる。伝説の勇者たちもトローも否定するアウドとともに、ケルンを越えてトローがいないことを確かめようとするが・・・?!

    バーティミアスの著者だが、あまりにも期待外れと言わざるを得ない。私にとってはホントにあの作者?と思うくらいの出来ばえでがっかり。毎章スヴェンの伝説が語られるのだが、まずもってこの彼があまり魅力的でない気がする。復讐のために人を殺せなかったハリの方がよっぽどカッコよい。前半は話がなかなか進まずイライラしたが、後半はアウドの活躍もあって生き生きしていたと思う。ラストの中途半端な締めがなければ、多分もっとおもしろく感じたのになあと残念。

  • ケルトな感じの物語でした。

    主人公がものすごく毒を吐く子で・・・(;x△x)彼自身も日常的に不細工とか呪われてるとか、けっこう散々な言われようで、ちょっと気が重く・・・。
    そんなこんなでストーリーもけっこう重く、次々に悪いことが起こるので安心できない感じでしたw

    主人公の母親で、主人公の一族の「法を司る者」アストリッドの凛とした感じが好きでした。
    主人公の兄リーンは描かれ方がけっこう散々でしたが、母親をとても大切にしていて、それがすごく自然で、息子としてはすごいかっこいいし、
    姉のグドニーも意外と(?)人をきちんと観察していておおっと思ったり。
    そんな脇役がけっこう好きでした。

    とりあえず表紙折り返しの部分の紹介文・・・・・・( °Д°)なんかちがくない? ジャンプの予告級だよ・・・

  • 「バーティミアス」のJ.ストラウドの新刊。なんとなくケルンの境の秘密ってM.ナイト・シャマラン監督の「ヴィレッジ」みたい。不細工でチビで短足のハリはどうしようもない悪戯もの。しかし一族を救うために立ち上がる。

  • 分かりやすく、読みやすい。1巻で完結するからこその、読者の感情を揺さぶるような展開。

  • バーティミアスシリーズが好きなので借りてみました。

    序盤から何と言うのか……無骨な雰囲気とでも言うんでしょうか。大昔の、機械のない時代の、言い伝えやしきたりがあれこれ力を持つ集落の話、と言ったにおいが漂ってくるような世界観。

    主人公が醜い容姿で手のつけられない悪戯者、と言うのがなかなか移入できなくて、読み進めるのに時間がかかってしまいました。主人公に愛着がなかなか持てない。これは私が日本人だからなのか、主人公は一見地味で普通、とかの方が入りやすいような気がします。その方が共感しやすいからかな?

    そう言えばバーティミアスでもロックウッドでも、主人公は性格に難ありでしたね。語り部が中和役で。その方が物語を展開させやすいのかも。筆者が。主人公の問題行動があるからこそ事件が起こるわけですものね。

    主人公が憧れる英雄譚の英雄も、無骨で乱暴者過ぎて、そこもまた共感できないポイント。少年向けの作品、と言ったら性差別的過ぎるか。男性ホルモン濃いめ、としておきましょう。むさ苦しい? 汗臭い? 英雄譚なのです。

    そして周りの大人たちの物言いがまた辛辣。愛情があったとしても、ブラックジョークっぽさがあります。シニカル。

    家族の悪口は自分のことを言われるより頭にきますよね。経験あります。しかし、アエギルはきちんと謝罪したのでしょうか。喧嘩の後、親友になるのは良いですが、そこのところはきちんとして欲しい私です。モヤモヤ。

    ブローディアはスティーブ・ブシェミのイメージです。台詞も吹替版をよく担当されている青山穣さんの声で脳内再生されてます。

    宴の準備を台無しにしたのが長の息子二人と言うのはあまりにも恥ずかしいですね。大惨事過ぎて、途中から想像するのをやめました。それはさておき、ブローディアが何をしたのかが気になります。

    各章冒頭のスヴェンの英雄譚。
    異文化、人種などを認めない狭量さが出ているエピソード。読者にそこを読み取って欲しいのでしょうけれども。

    悪さをした子ども。厳しい罰を与えて躾けようとしても、より一層反発して、反抗的になるだけ、と言う例ですね。反省するよりも、不当な扱いを受けたと言う怒りが先にくる。拗ねる。

    バーティミアスでもそうでしたが、紅一点の登場で一気に作品が華やぎますね。アウド。子役時代のエマ・ワトソン、もしくはエル・ファニングのイメージですかね。今ならマッケナ・グレイスでも良いかも。クロエ・モレッツはちょっと違うかな。知的で独特のユーモアがあり皮肉屋、勝気、かつ美しいのでしょう。

    やたら壮大な“用をたす”描写。
    ブローディアとハコンソン家の間に過去、何があったのか気になります。
    ハリの容姿はカジモド系なんでしょうかね。

    スノーリ。スヴェンの伝説に登場する世捨て人とかけているのでしょう。初めて遭遇するタイプですから、ムッとすることはあっても、ハリの性根は腐っておらず、首をとる程傲慢でもなさそうです。旅の始まりから、世間知らずなハリにかなり冷や冷やさせられますね。

    ビョルンはジェームズ・コーデンで脳内再生。
    突然胴着がはだけるとか、ラッキースケベ的唐突さでちょっとおかしかったです。

    ハリの旅路。案の定しんどいものとなりましたが、後半はサラッと書かれていたので嫌になってしまう、と言うこともなく。サクサク読み進めることがでにました。井の中の蛙が外の世界を目の当たりに。己のこれまでの世界の狭さ、ちっぽけさを知る。

    ううむ。
    領主とその一族を知れば知るほど、誰にも好感が持てなくなっていきますね。ケルンの内側に信のおける誠実な人物はいないのだろうか。

    スヴェンの嫁取り。三女への評価。なるほど。
    第三部の冒頭の話もそうですが、スヴェンは人の話を全く聞いていないようですね。逆にこれらの伝説を聞いていてそれに憧憬の気持ちを抱ける子孫や民に疑問しかないわけですが。

    作者が男性だと、男性はリアルに、女性はファンタジーに書かれることが多いのでしょうか。つまり、理想的な女性に。逆に女性作家の作品では男性が美化されるのかも知れません。とにかく、やはり本作ではアウドが魅力的に書かれています。

    ハリの家族は誰も彼を愛していないのだろうか。カトラだけが唯一の味方だったのかも知れないけれど、失望から心は離れてしまった。読者としては逆にスヴェンソン家に失望ですが。

    アウドは母親から病を受け継いでいるのかな?
    血友病だとしたら、女性であるアウドには遺伝しないはずですが。それに類じる何か?

    スノーリ皮肉がきいてますね。

    リーフも最終的に母には弱いと言うことで、そこは好感が持てます。男の子だ。

    ハリの成長が嬉しい。

    エイナーはどことなくザッカリー・リーヴァイ版の『マイティソー』ファンドラルのようなイメージ。もしくはハリポタのロックハートを演じた時のケネス・ブラナー。

    結局これは、トローじゃなかったんですかね。
    トロー=亡者ではなく。エピローグを先に読んだもので、トローを手懐けるのかと思ってたのですが、登場なく終わりましたね。

    そう簡単に世の中変わらないけど、子孫たちへの布石にはなった、と言う解釈にしておきます。

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著者プロフィール

イギリス、ベッドフォード生まれ。7歳から物語を書き始める。子どもの本の編集者をしながら自分でも執筆。「バーティミアス」三部作は世界的なベストセラーになる。著書に『勇者の谷』(理論社)、「ロックウッド除霊探偵局」シリーズ(小学館)などがある。現在は家族とともにハードフォードシャーに暮らしている。

「2021年 『スカーレットとブラウン あぶないダークヒーロー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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