僕は、そして僕たちはどう生きるか

著者 :
  • 理論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652079799

感想・レビュー・書評

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  • 名前の由来にもなった「君たちはどう生きるか」の漫画版が本屋に平積みしてあり、表紙の男の子をみて、これがコペル君かとニヤニヤした。
    梨木果歩さんの本にでてくる植物や庭は、どれもすてきだ。この本のユージンの庭の描写もわくわくする。実際、うちの庭で見るとザ・草だったりするのだけれども。
    子供にいつか読んでほしい本リスト入り。うちの子にもノボちゃんみたいな存在ができるといいなあ、私もだれかのノボちゃんになれるといいなあ。

  • 君たちはどう生きるか、という戦時中に書かれた自身の生き方を考えることに主題を置いた名著(ただし、結果として戦争を止めることはできず、それは後世の話かもしれないが)を受けて、その主人公にちなんだコペルと呼ばれる少年が登校拒否の友人であるユージンに会いにいくことに。様々な、もやもやを抱えて生きている少年たち、そのもやもやは言葉で説明できることではまだなくて、そして語彙だけでなく経験からも完全に定義できないものでもあり、そうしたことをより理解しようと近づいていく行為こそが、人生を彩る。ただただ大人になるだけなんて、本当に不幸だ。興味や好奇心とは、人を大きく大きくしてくれる。ゴールがどこにあるかはとにかく、自身の開かれた感性は、決して閉じてはいけない。そんなことを思った。
    出来事は、衝撃のAVに出演してしまい、大きくというか壊滅的に傷つき、墓場というアクチュアルな死に場所にいたいという思いを持ったインジャと呼ばれる女の子との接触から大きく動き始める。コペルは、ユージンたちと一緒に、料理を作ったり、会話をしながら、かれらにとってとびきりの冒険の一日が少しずつ過ぎていく。群れの大切さ、心の拠り所としてのサードプレイスの大切さ、そして自分なりの生き方の定義、強く強く、前に進もうというメッセージ。自分のこととして、生き方を集団の中で、群れの中で感じ、そして希望を持つ子供たちから大人への成長の大きな一歩を描いている。

  • 思索
    文学

  • 苦くて消化しきれない草を飲み込まされたような感じ。
    だけど、それを抱えたまま熱をもって群れて生きていかねばならないと思わされた

  • 最近マンガ化されたりしてリバイバルブームになってた吉野源三郎『君たちはどう生きるか』…は未読なのだけれど、そういえば梨木香歩が現代版みたいなのを書いていたっけとふと思い出して今更読んでみました。

    主人公は元ネタと同じくコペルくん(※ニックネーム)14才。土の中にいる虫を調べたりするのが好き。愛犬はブラキ氏。染色家の叔父さんノボちゃんと一緒に、長らく不登校の幼馴染で親友のユージン(本名は優人)の家に、ヨモギ摘みに訪れ・・・。

    長い長い1日の話だった。ユージンの一つ年上の従姉ショウコの訪問、彼女がこっそり匿っていた「インジャ(隠者)」、そして偶々彼女が連れてきたオーストラリア人マーク、彼らとの会話、交流を通して、コペルくんは「僕は、そして僕たちはどう生きるか」を考え、学んでゆく。

    コペルくんは大変素直で正直な少年だし、とても賢い(お勉強ができるという意味ではなく観察眼の鋭さ、自己分析がとても上手だ)。ユージンはとても繊細で優しく、その分傷つきやすい。ユージンの不登校の理由には、くそ偽善教師め、と、とても憤った。

    彼らは日常的な疑問や悩みはもちろんのこと、ボーイスカウトとヒトラーユーゲント、戦争と徴兵制、良心的兵役拒否、そして自然破壊、環境破壊などについて様々なことを考える。とてもストレートなメッセージが織り込まれているので、正直、道徳の教科書みたいな側面はありつつも、こういう本は是非とも私のようなおばちゃんよりも、コペルくんたちと同世代の悩める少年少女たちに読んで欲しいと思った。

    ただそのメッセージの中に、ひとつ強烈なエピソードが盛り込まれていて、それは「インジャ」という少女が大人たち(というか男たち)にどんな目に合されたかという話なのだけど、ここだけは、避けて通れない問題とはいえ作者の個人的な怒りが強すぎるのか(文章もそこだけゴシック体だったし)作品全体からは少し浮き上がってしまっている印象を受けた。もちろん女性として許せる問題ではないけれど、急に現実にモデルのある件についての生々しい怒りをぶつけられると少し戸惑ってしまう。

    あとは、ユージンたちの祖母、ショウコの母親、コペルくんのお母さんも含め、女性たちがなんというか揶揄的な意味ではなく「問題意識高い系」ばかりなのが、少し鼻についたかな。いや彼女らは間違っていないのだけれど、世の中の子供の大半は、このような正しく強い親に育てられるわけではないからなあ、と少し皮肉な気持ちに。

  • 主人公は中学生だけれど複数の重いテーマが詰まっていて…野草の採取やそれを使った料理と言ったほのぼのな話の中にハードなテーマが突然圧し掛かる勢いに圧倒されながら読みました。
    集団心理、多勢に流される怖さ、命の重さ、戦争等々…自分がその立場ならどう行動してしまうのだろうか?と思いながら読みました。読み手によって色々な読み方ができる本ですが重かったです。

  • 中学校でブックトーク。地味に見える本なので、なかなか手にとってもらえないけど、西の魔女…といっしょに紹介した。/辻塚

  • ものすごく、重たいテーマの話でした。

    私も、「軍隊で生きていける」「愛すべきやつ」の一人なのだろう。
    少しの違和感があっても、社会的な、そして多数決の持つ正義という「正しさ」の前に、自分を誤魔化し、守り、「正しさ」を刷り込んで、卑怯に、あたかも善人の様に生きていくのだろう。

    心が痛すぎる、一生気づかない方が完全な利己主義な考え方として、幸せなのではないかと思うエピソードがいくつかあり、本当に難しいし、入り込んでいて、答えは無いと思う。

    でも、考え続ける事が、ちゃんと向き合って、見ないふりをせずに、考え続ける事が何よりも大切なのだ。

    僕は、そして僕たちはどう生きるか

    すごいテーマであり、全部読み終わったあと、この本を一番表している題名だと思いました。

  • とってもメッセージ性の強い一冊だった。鶏の解体の場面はこっちまでむずむずなるような、納得のいかない気持ちが大きくなった。普段いろんな人の意見に流されている自分にとっては、考えさせられる作品だった。

  • p.35 今日はまた、その森全体がモコモコとしてなんだか笑いたいのを我慢できずに体を揺すってるみたいだった
    p.128 そういう庭園の中に隠者って言うのがいたら完璧、と思った貴族がいたんだな。それで当時の新聞に隠者募集の広告を出したんだ
    p.241戦時中ナチスに逆らってユダヤ人たちをかくまった人々や、彼らを逃した人々〜当然自分もそういう人間の1人だと無意識に思っていた。でも僕にはもう、そういう無邪気な確信が持てない
    p.242 ロシアの時代僕がドイツに生まれたドイツ人だったら隠れているユダヤ人を見つけて通報する位したかもしれない。そんな適応力が僕には確かにある。それが「正しいこと」だと自分自身に言い聞かせてあれば。

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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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