僕は、そして僕たちはどう生きるか

著者 :
  • 理論社
4.03
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感想 : 296
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  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652079799

感想・レビュー・書評

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  • 梨木香歩、素晴らしいです。この現実ではまどろっこしい人間のやりとりを的確に、明晰に描き出すその力。そして考え抜かれ、選ばれただろうと思わせるテーマたち。読み進めながら、「残りのページ数でこれだけの素材が消化出来るのか!」と思いましたが、心の底から満足な読書体験でした。

  • いろんなことを考えさせられる作品。


    14歳が語っているから、難しくもない。


    私は、そして私たちはどう生きるか。


    どう生きていけばいいのか。


    中学生に読んで欲しいと思った。

  • 中学生に随分難しいことを云わせたり考えさせたりしていて無理があるけど,やっぱり中学生じゃなければ駄目なのだ~僕にコペルという名を付けたのは叔父さんのノボちゃんだ。小学校入学後に両親の口調を真似して「世界って,そもそも物に名前を付けようとしたから」と云ったのを「コペルニクス的『反』展開だ」と評価したことから始まった。母は大学教員,父は専業主夫だが取材と称してどこかへ出掛けている。小学校では語録を先生達が作っていたらしいが,大きくなると発言には気をつけるようになった。唯一の友達とも云えるのが古い大きな敷地を持つ家に住むユージンだったが,小学校6年からポツポツ休み始め,中学校には全く来ていない。彼は両親が離婚し,母が妹を連れて出て行き,自然保護の活動をしていたお祖母ちゃんが亡くなって,父親が仕事でドバイに行ってから一人暮らしだ。僕も日帰りできない距離ではない場所に母の勤務地が変わってから,14歳にしてブラキ氏というゴールデンリトレーバーと暮らしている。今日は連休初日,染織家のノボちゃんが山小屋に籠もるお供にブラキ氏を連れて行って,散歩の必要もない。簡単な朝食を終え,自転車に乗って,土中生物の観察に出掛けたが,出掛けた筈のノボちゃんが,イタドリは手に入ったが,良いヨモギの生えている場所はないかと聞きに来た。僕が思い出したのはユージンの家の庭,ノボちゃんも虫取りに一緒に出掛けた事を覚えている。電話を掛けて門を開け,池の方から玄関のチャイムを押すとユージンが出てきた。ヨモギの場所まで案内して,刈り取ると,従姉のショウコが来るという。ヨモギ団子パーティーの事を思い出し,沼地で長靴が填ってしまい,ショウコに負ぶって貰ったことも思い出した。イタドリを置いたら迎えに来るとノボちゃんは車で立ち去り,さて腹が減ったので何か作って食べようと相談がまとまり,何を作るか考えているとショウコが登場し,ユージンの家の屋根裏の古い本に,食べられる草の載っている雑誌があるに違いないと気が付いた。ウコギの葉っぱご飯を作ろう,5合炊くのはショウコのアイデアだ。おかずはスベリヒユだ。味噌和えではなく,油炒めにする。裏の水道で洗おうとするとショウコは慌てて,その役を買って出た。洗い終わって帰ってくると,ユージンにも内緒で,この庭にインジャを住まわせているという。女の子らしいが,壁のある家にはいられないそうだ。ガールスカウトの友人だという彼女にも葉っぱご飯とスベリヒユの炒め物を持っていき,礼を言われたと話す。さて,食べようと云うタイミングで,ノボちゃんが届いたばかりの鰹のタタキを持って現れた。僕がインフルエンザで高熱に魘されていた時に,開発前の谷間のイワナ屋で上手いイワナの塩焼きを食べたこと,ユージンが行方不明になって直ぐにイワナ屋の主人が洞窟だろうと当てたこと。その洞窟には兵役を拒否した人物が隠れ住んでいたことなど思い出が蘇っているようだ。ショウコは駅までオーストラリア人を迎えに行かなくてはならないのを思い出し,運転手はノボちゃん。僕とユージンだけの時間がやってきた。思い切って学校に来なくなったわけを訊くと,両親の離婚が決まって,卵から孵した雄の鶏を学校に預けることになった時に,担任が『命の繋がり』の授業をやると云って,鶏の首を絞め,毛を毟って,様々な鶏料理にしてしまった。ユージンは周りの雰囲気に圧されて断ることができなかったのだ。それを漸く思い出した僕は何と鈍いのだろう。立ち直れない状態の中で,テンションの高いオーストラリア人マークは,ユージンの庭を褒め,焚き火でダンパーを作ると宣言する。立ち直りのきっかけを与えてくれたインジャを森の妖精に見立てて話をすると,マークもノボちゃんも自然に迎え入れていた~ 「やあ。よかったら,ここにおいでよ。気に入ったら,ここが君の席だよ。」最近の梨木さんは説教臭くて,植物に対する思い入れが強すぎて,うんざりさせられるんだけど,自分の本を読んでみたいと思う人に,強烈なメッセージを送る機会は,この先,多くはないのだろうから,仕方ない。もう50を過ぎてチャンスは多くない。インジャの語る「泣いたらだめだ。考え続けられなくなるから」も一面の真理を突いている。藪蔭からも,こうして語りかけてくれる相手がいると良いなあとは思うよね。それも純粋さを多少残してる中学時代に周囲にいたら,生涯に亘って心強いだろう。その中学生だって,否応なく,世間に放り出されるのだから

  • 2011年31冊目。
    275頁。

    書店で購入。






    ≪本文引用≫
    p.8
     「世界って、そもそも物に名前を付けようとしたことから始まるんじゃないか・・・・・・でもその前からも、名前なんて関係なしに世界はあったはずだよなあ」

    p.21
     「自分が本当に怖がっているものが何なのか、きちんとそれを把握する。そしたらもうその恐怖からは半分以上解放されている」

    p.32
     不思議な感じだ。自分の生まれる前にも世界はあって、それぞれ「譲れぬ一線」を抱えた人たちが皆それぞれの「前線」で闘い、その言わば「夢の跡」が、今、僕らの生きる世界なんだ。考えてみれば当たり前のことなわけだけれど。

    p.143
     人は、人を「実験」してはいけないんだ。

    p.187
     人生って、そういうことなのか。
     いくらいろいろ計画したって待ったなしなんだ。いつまでもあるもんじゃないんだ。
     僕はそんな当たり前のことが、なんかこのときものすごくリアルに感じられた。

    p.191
     「でも、それって安定した生活には結びつかないんじゃないかなあ」
     「好きなことをやってるんだから、それは覚悟の上さ。精神が安定していることの方が、いいんだ」

    p.223
     僕は軍隊でも生きていけるだろう。それは、「鈍い」からでも「健康的」だからでもない。自分の意識すら誤魔化すほど、ずる賢いからだ。

    p.226
     あのとき、僕らが「つぶした」のは、単なるニワトリ一羽だけじゃない。ユージンの「心」もいっしょに「つぶした」-これは、ショウコのお母さんが言っていた、「魂の殺人」とほとんど同じじゃないのか。

  • 梨木さんにガツンとやられました。

    読み終えるまでに少し時間がかかったのは、本を閉じて考える時間が必要だったから。
    読んでいる最中に、今までの自分の振る舞いを振り返ること、しばしばでした。
    まさにタイトル通りの問いを読者に投げかけてくる1冊です。

    14歳の少年・コぺル君。
    彼が綴った「僕の人生に重大な影響を与えたと確信している出来事」を、読者は読み進めることになります。
    分かりやすい文章だからこそ、メッセージが直に伝わってきて、頭に胸にぐわぁんと響くのです。

    一対多。個と群れ。「自分を保つ」とは?

    ヤングアダルト向けの本ですが、大人の方にも読んでもらいたい本です。
    あくせくした時代の流れの中で、立ち止まって考えてみてください。
    「僕は、そして僕たちはどう生きるか」

  • 伝えたい部分のわかりやすさは、十代の少年・少女にも十分伝わる丁寧な書き込み。自分の頭で考えて判断・選択することの意味がどれだけ重要なことかを伝えるため、小説というツールを使って教材用に書かれたよう。一方で、日常、無難・追従という枠に収まることで自己肯定しているいっぱしの大人達への警鐘でもある。

  • 今、この時期にたくさんの方に読んでいただきたいと思います。
    自分の思考をあいまいにせず。出会う出来事に対してどう対応していくか。自分がマイノリティな立場になってしまった時も、信念を持って生きていく強さを持つ事の大切さ等。登場人物のエピソードを通じて10代の頃の自分を思い出しながら読みました。西の魔女~もとても良い本ですが、もう一歩進んで世界を捉えていこうとする10代の方たちに手にとってもらえたらいいなあ。私もその頃に読んでみたかった。全員ではないだろうけど、少し大きく呼吸が出来る様になる人もいるはずです。

  • 救われた

    毎日這うように、生きていて、
    どう生きたらいいんだろう、どうして僕が生きているだろう
    なんて
    どこにも行き着かない、気持ちばかりぐるぐる、抱えて。

    今も、それは変わらないけれど

    どっか、救われた。
    生きなくちゃ。
    これから何度も、この本に向き合うだろう。
    できるなら今よりほんの少し、ましな自分になれるよう
    生きていたい

  • 十四歳のコペルは叔父のノボちゃんとよヨモギ探すために学校に来なくなった友人の古い屋敷をたずねる、そこで起こった一日の出来事の物語。
    ユージンの家の屋根裏で古い本をいっぱい読んだこと、ユージンのいとこのショウコとヨモギ団子を作ったこと、インジャの身の上に起こったこと、兵役を拒否して洞穴に隠れてた男のこと。そして友達だったユージンが学校にこなくなった本当の理由とは?
    人は群れから離れて生きていけるのか?コペルはいろんなことを考える。
    ゆるやかな群れの必要性を感じながら考え続けて生きていく。
    「やあ。よかったら、ここにおいでよ」
    青少年向きと言ってもいいような内容ながらすごく哲学的でいろんな問題を提起させていく。まったく関連性はないんだけど川上美映子さんの「ヘヴン」を読んだときのような衝撃感があった。
    読み終わったあと、いろんなことを考えさせられ深いものが心の奥にずっしりと残る、そんな作品でした。

  • 難しいテーマを扱っているのですが、分かりやすく美しい文章で描かれています。中学生の男の子の一人称で話は進みます。これが非常にテンポがよくて心地良い。たった一日の出来事で成長する心。コッコちゃんのあたりは本当に切なかった…。梨木さんらしい物語。

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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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