韓国ワーキングプア 88万ウォン世代

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著者 : 禹〓熏 朴権一
  • 明石書店 (2009年1月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (321ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750329239

韓国ワーキングプア 88万ウォン世代の感想・レビュー・書評

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  • 韓国の全体の非正規職の平均賃金(月給)は約119万ウォンである。ここに全体賃金と20代の賃金比率である74パーセントを掛けて数字を出すと、偶然の結果だが、ちょうど88万ウォンになった。もちろんこれは、「税抜き前」賃金だ。実際20代の平均賃金は正規職として就職に成功した場合はるかに高く、ここに大学生など経済活動人口に算入されない割合を考慮しなければないであろう。だが、800万人程度の非正規職人口を考慮すると、税金を除いて平均的に手に入る賃金はだいたいこの数値から外れないであろう。(p28)

    激烈な競争の中で20代がぶつかる根本的な問題は同期同士の競争ではない。彼ら自身はこの争いを自分たちの間の競争、すなわち「世代内競争」と認識しているが、実際彼らの争いは競争の範囲とルールが存在しない無限大の競争、すなわち「世代間競争」に組み込まれている。代理になることを希望している平社員が課長や部長あるいは局長や長官と競争を行うのが可能なのか?ところがそのような競争が実際に繰り広げられており、これが2007年版勝者独占ゲームの特徴である。勝者独占ゲームの特徴は、勝てばよいということである。だが青二才の20代が貫禄のかたまりである40代と50代にどんな技で勝てるのか?それも非正規職がほとんどなのがわかりきった状況で…。(p29)

    エンゲルスの『家族・私有財産・国家の起源』は、今でも経済誌の分野で、まず初めに読むべき基本的な教科書のような本とされており、経済人類学の分野で揺るぎない地位を誇る古典として位置づけられている。(p36)

    韓国の場合、20歳で自分の愛する人と一緒に暮らしたいと考えた瞬間、地獄が目の前に広がることになる。独立など絶対に認められもしないし、独立できる経済的秩序と制度を作ろうともしない韓国型若者システムの中では、金持ちの親をもつ少数の若者を除いた残りの人が独立などしようものなら、普通の市民になることは困難だ。中等教育とされる高校での教育まで終えた10代たちを待ちうけるのは、愛する人との生活あるいは自分だけの生活といった独立ではなく、絶望と挫折しかないのである。(p52)

    p63
    『アリストテレスの経済学』というタイトルがつけられた1冊の本が経済学界で議論になったことがある。

    この本にはアリストテレス時代の奴隷の扱い方と奴隷の活用の仕方が詳しく記録されているのだが、今風に表現するのなら、工場で使用する作業用機会の寿命と最大活用法といったところだろうか。この本によれば、奴隷を最も効率的に使うことができる期間は三年ほどである。十分に気をつければ八年まで使用可能であるが、この場合には食事と住居のために費用がかかりすぎて、また病気にかかれば八年も使うことはできないから、高い労働強度を維持することも困難になる。また酷使しすぎれば奴隷は数ヶ月で死んでしまう。したがって、この費用をすべて計算すると、三年ほどの寿命で使用するのが最高に効率がよいと、この無名のギリシャの著者は書いてる。

    韓国で最も悪質で低級でありながらシステムに対して長期的かつ致命的な害を与えるものを二つだけ挙げてみよと言われれば、私は「1318マーケティング」と「マルチ商法」と答えたい。実際、人々の生を観察すると、1990年代以降、韓国人の生を支配したものはこの二つだといえる。もしこの二つがなかったなら、韓国の人々の表情はるかに明るかっただろうし、社会ももっと朗らかだっただろう。この二つは両方ともIMF以降に急成長した産業である。(p74)

    韓国の10代たちは教育装置によって完璧に統制されており、マーケティング装置によって極端に搾取される集団だといえる。この状況は単に10代のたちの問題ではなく、そういった消費を維持し続けてやらねばならない親世代の苦痛にもつながっていく。この点で、韓国の資本主義は本当に恐ろしい。(p78)

    「百家戦争」の時代といえた「韓国式栄光の30年」が終わり、企業集団と呼ばれる財閥の時代もまた、IMF経済危機と共に少し退行することになる。反面、商品別、部門別独占化・寡占化が強く進んだ。2~3の主要生産業者が売上あるいは収益のほとんどを占めるようになり、トップの一つの会社が残りの2・3位の会社を合わせたものと同じくらいか、あるはそれより若干大きな規模を持つ、「1:2法則」が生まれた。(p86)

    この10年間の変化を最も総合的で理解しやすいかたちで表現する言葉は、「勝者独占(Winner-Takes-All)」である。(p91)

    今の30代半ばの世代は、IMF経済危機直後とても短い期間ではあるが、ベンチャー創業に対する国家的な支援のおかげで、20代で社会にデビューし経済的に独立するチャンスを持てた。このいくつかの流れは、時代が作った「脱出口」のようなものであるといえる。だが今の20代、特に20代初めから半ばの世代には前の世代が持っていたチャンスの門がほとんど開かれていない。(p95)

    三星の20代に対する認識は二つに要約される。「よくわからない」と「でも重要だ」である。それ時代に特別なものはないが、右記の試みは三星が20代を「サポート」するための活動を始めつつ、いつか20代もまた重要なサポーターになるよう確保しておくべきだという大枠の戦略程度に理解できるであろう。三星のこのような動きから読み取らねばならない特異な点はずばり一つである。20代を一つのグループあるいは分析が必要な集団として見たほぼ唯一の企業集団が、まさしく三星だということである。(p98)

    「同期間競争」を最後まで押し付けていったのが日本社会だ。東京大学を中心に作られた日本型システムを韓国がそのまま受け入れ、ソウル大学を中心としたシステムを持つようになったのは周知のことである。もちろん外国にも良い大学があるが、特定の大学を中心に社会秩序を作り、そのようにして世代内エリートを再生産するシステムを持ったのは、OECD加盟国の中では日本と韓国くらいである。だが日本のシステムでは年功序列制が補助的に共に動くことによって,世代内競争は世代間競争というコントロール不可能な破局状態にまでは至らなかった。(p106)

    金大中政権時代に、クレジットカードを発給することで消費能力を高めるという異常な政策が敷かれたことがあるが、この政策の最も大きな犠牲者になった世代が、まさにIMF経済危機以前、韓国の多様性第一世代になるだろうと多くの人が希望を持って注目していたX世代であった。(p180)

    維新世代と386世代はこのような自営業型の小さな店を現在の20代より好む傾向があり、源氏アの20代とは文化的に行為パターンいが少し異なる。40代と50代は、同じ金を支出するにしても、自分が知っている人がいるところに行く。そして、「あの人たちも食べていかなくちゃ」という、地域共同体が生きていた時代に学んだとおり、小さな店の常連になるのを好む傾向がある。しかし、現在の20代は象徴的に表現すれば、知っている人が経営する地位なカフェより、スターバックスを好む人々だといえるだろう。まさにこのような文化的装置を通じ、20代が20代を阻害するということが広がる。大企業やいわゆる有名メーカーを好む20代の消費パターンでは、いざ同じ20代が新しいことを始めたり、小さな何かを始めた場合、あまり助けはしない。(p191)

    世代内競争で、最も不利な集団を二つ選ぶなら、果たしてどの集団だろうか?基準によって異なるだろうが、高卒以下の集団と女性だろう。高卒で女性ならほとんど絶望的な状況であるといえる。彼(女)らは、青年失業、または高学歴失業というような話題の背後に隠れ、ほとんど社会的なイシューにもなれない不幸な集団でもある。(p192)

    マーケティングは利潤と販売の法則によって動くので、ラグジュアリー・マーケティングとショーヴィニズム・マーケティングは現在の流通資本が20代を攻略するための非常に効率的な手段になる。(p203)

    政府が語る科学技術開発による生産性の拡大が韓国でなぜ起こらないのかを証明するのも、非常に簡単である。発明家と呼ばれる人や中小企業で新しい技術を開発する人は特許を申請することになるのだが、これを代行してくれる人を弁理士という。ところが、多くの弁理士は昔から大企業とつながっている。新しい技術について、待っていろといっておき、大企業に連絡して先に特許申請をさせる、ということがよく起こる。(p242)

    問題は、韓国社会に希望がないからではない。私が考えるに、むしろ希望が余りにも過度だからだ。IMFによる救済金融以降、わずか10年間で、韓国は急激な社会経済的変化を経験した。安定した職業の数が恐ろしいほどに減り、非正規職は記録的に増え、「勝者独占」「選択と集中」が当然視される社会になった。特に過去の韓国資本主義の「良き時代」を経験できなかった若い世代に、勝者独占の論理はほぼ生存本能と言ってもいいほど自然になった。最後に生き残る一人だけがすべてを独占するというこの哲学は、希望を絶望に変えるというより、希望を「販売」するように仕向ける。書店でもテレビ放送でもそれが確認できる。「成功した20代の話」「1318世代、成功したければこのようにしろ」「20代の財テクへの希望探し」……。すなわち、「希望の過剰状態」だ。逆説的だが、希望を実現させる確率が減るほど、希望という単語の使用頻度と誘引効果はどんどん大きくなる。これこそまさに希望が「拷問」に変わるメカニズムである。(p299)

    「韓国型勝者独占ゲーム」で勝利した「2パーセントの若者」たちは、いつでも存在するだろう。ここから三星グループの李健煕会長の「天才経営論」を思い出すとよい。2パーセントのほとんどが両親から引き継ぐ物的資本と象徴資本を持った者であろうし、まれに超人に近い能力と幸運を持つ者たちも混ざっているはずだ。残りの98パーセントは、彼らだけで集まり、再びゲームを始めなければならない。誰がまず犠牲になるかを決めるゲームだ。譬えるならば、誰が蟻地獄の巣の最底辺に押し込まれて、蟻地獄にまず最初に食われるのかを決めるのである。(p307)

  • 2010/07/05

  • 文中に日本の非正規労働者は 満足度が高い と書いてあったのですが日本の非正規労働者って きっと大部分が なんだかんだ言って 主婦パートとか 学生アルバイトなんじゃないのかな。。それで 満足度が高いだけなんじゃ。。と 

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韓国ワーキングプア 88万ウォン世代の作品紹介

超就職難と非正規職化に喘ぐ韓国の若者。88万ウォンは20代非正規職の平均月収。——気鋭の経済学者と記者が、広がる若者ワーキングプアの実態を描いた韓国空前のベストセラー。次世代を搾取しない社会をどうやってつくるか、その処方を軽快に説く。

韓国ワーキングプア 88万ウォン世代はこんな本です

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