トルコを知るための53章 (エリア・スタディーズ)

制作 : 大村 幸弘  永田 雄三  内藤 正典 
  • 明石書店
3.43
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本棚登録 : 81
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750335711

作品紹介・あらすじ

ヒッタイト誕生からアレクサンドロスの東征、イスラム圏の浸透、オスマン帝国の興亡、共和国による世俗主義の選択、EUとアジアをつなぐ現在まで、アナトリアの歴史は波乱に富みながらも多彩な文化をたたえてきた。その歴史と文化、政治、経済を1冊に凝縮。

感想・レビュー・書評

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  • 文明の十字路、トルコ。近隣諸国と絶えず緊張関係のもとで生きてきたトルコの人たち。そもそも国境すら時々で大きく変わってきた…。アジア大陸の東端、日本。西端に位置するトルコ。言葉、民族、宗教、文化、習俗、領土、いずれも乱暴に言えば均一の日本人に、トルコの歴史の層の厚さからくる“いま”は到底理解できないか。頭で考えても仕方ないので現地に行ってせめて数千年の歴史の一端に触れてこよう。

  • トルコにおける世俗主義とイスラームの関係が本当に興味深かったです。かつては欧州に近づこうとしましたが、度重なる拒否にトルコ側もいよいよしびれを切らしてイスラームを元に欧州との対等の関係を求めつつも独自路線を歩んでいくことを決めた現在のエルドアン大統領、前任のギュル大統領の英断だったと思います(日本ではいまだに欧米の後追いという現実・・・)。欧州の域内では自由や民主主義を掲げる一方で域外ではそれを平気で踏みにじるダブルスタンダードという欺瞞を世界で一番理解しているのはトルコではないかと思いますから。
    その他古代トルコやオスマン帝国の歴史の概要や現在のトルコの文化・風習が理解できる内容盛りだくさんの一冊です。ぜひ日本語と同じ語族で覚えやすいとされるトルコ語にも挑戦したいと思います笑
    トルコはどうしても欧州目線になりがちな日本のメディアに「ちょっと待った」と一石を投じ、ますます今日のグローバリズムを担う重要なプレイヤーとなっていきますね。

  • トルコの歴史・文化・政治についてオムニバス形式で色んな人が書いている。

    地理・気候
    アナトリア高原と南東ヨーロッパのトラキアからなる。アナトリア高原は短い夏は暑いが、冬は零下20度にもなるところがある。小麦が取れる。沿岸部は地中海性気候。

    歴史
    古代ではヒッタイトが有名。製鉄を最初に始めたとも言われる。その後、アレクサンドロス大王が通過していったり、ヘレニズム諸王朝やローマ帝国の支配下でギリシア化が進んだ。ローマ帝国とビザンツ帝国の時代にキリスト教化される。11世紀にトルコ系遊牧民のセルジューク朝が入ってきて急速にイスラム化が進んだが、土着の信仰の影響も残った(神秘的傾向のあるスーフィー)。その後、オスマン帝国を経て現代へ。

    オスマン帝国
    1453年にメフメト2世がコンスタンティノープルを陥落させる。スレイマン1世の16世紀に全盛期を迎える。西はバルカン半島でハプスブルクと対峙し(フランスとは敵の敵的同盟関係であることが多かった)、東はイランのサファヴィー朝がライバル。しかし文化的には詩歌などイランへの憧れがあった。キリスト教の礼拝堂であったアヤ・ソフィアをそのままモスクとするなど、ビザンツの文化も一部取り込んだ。コーヒーハウスはイスタンブールから欧州へ広まった。

    アタテュルク
    軍人としてWW?で活躍。トルコをギリシアなどの外国軍から守ってスルタンを廃し共和国を建国、国父となった。この独立時の経緯により、トルコ憲法には厳格な政教分離である世俗主義と、領土の不可分が、改正発議すらできない条文とされている。


    ケバブが有名だが魚も食べる。ヨーグルトはソースとして多用し、甘くして食べるなんてオエッとなる。酒もワイン、ラクなど普通に飲まれる。ケバブ屋では普通酒は供されないが、高級居酒屋的業態がある。ピザの原型と言われるピデも。

    文化
    オルハン・パムクはノーベル賞で有名。かつては寸劇、影絵芝居などが盛んだったがテレビにおされて姿を消しつつある。音楽は、微小音程を使う民謡がある。西洋音楽ではピアニストのファズル・サイが有名。

    政治
    クルド、アルメニアなど少数民族を国内に抱える。世俗主義により公的な場での女性のスカーフは禁じられてきたが、スカーフをかぶる女性が近年増えてきた。ただ宗教的な意味合いの有無などいくつかの種類がある。
    2002年以来、親イスラムの公正・発展党が与党。野党は共和人民党(アタテュルクの流れを汲む世俗主義)、民族主義者行動党(極右)、クルド系政党。90年代まで政権を担った中道右派は消えてしまった。
    EU加盟はいまは様子見状態。キプロス問題も微妙にネックに。

    経済
    80年代に経済自由化し、90年代は高インフレにも苦しんだが、21世紀にはいって比較的順調に成長している。新興国らしく消費が盛ん。自動車、白物家電については、OEMだが、EU向けの輸出が盛ん。

  • 昔のトルコから、近代までよく網羅してある本。
    財閥としては、コチ、サバンジュが1920年代に産声を上げた。
    AKBANK AKSigorta ENERJISA,BRISA,CarefourSA, TEMSA、ドウシュ、ドアン、エンカ、

  • 【配置場所】工大選書フェア【請求記号】302.274||O【資料ID】91132568

  • 前半の方は、著者個人の属人的な内容で薄いが、後半はなかなか今日のトルコを知る上で役に立つ事が書かれている
    巻末近くの、在日トルコ人の方々による、震災後の支援活動はとても胸を打つのでぜひ一読なされますように

  • 「知るための」シリーズのトルコ版。半分以上前近代で占められていて、後半は現代トルコに関する内容。

    在日トルコ社会についても述べられていて興味深い。あとトルコがアフガニスタン、パキスタンと深い関係にあるのは初めて知った。

  •  トルコの歴史から現代社会、文化までこの一冊で網羅している。
    僕が特に興味深く感じたのは「スカーフ論争」。イスラムの女性はスカーフで肌を隠すというイメージがあるが、トルコは世俗主義(政教分離)を強く推し進めた歴史があるため、「スカーフ」は宗教の象徴として公の場(大学など)では禁止されていた。「スカーフ」はイスラムの象徴であり、「イスラム主義」を政治の持ち込むという意思表示であるとみなされる場合もあるからだ。
    2012年7月にトルコを訪れたとき、多くの女性がスカーフを身に着けていたが、スカーフをめぐってそのような論争が繰り広げられていたとはそらなかった。大変勉強になった。

  • トルコ人は人なつこく、自尊心が高く、日本人に友好的。イスラム的な家族観があり、家族の絆が強く個人主義的な部分は弱い。弱者は放っておかない社会的な雰囲気がある。
    ギリシャを退けオスマン帝国に変わって建国されたトルコはヨーロッパ的な世俗国家を目指していたが、奔放な恋愛・性交渉、厳格な個人主義などの文化にはなじめず、近年ではイスラム主義が隆盛し支持を集めている。しかし世俗国家としての原則は微妙なバランスの上に守られている。

    まるごと一冊で概ねトルコの初歩的なことを理解できると思う。Wikipediaなどでは難しい、情報の横の繋がりが理解の助けになっている。

  • 【新刊情報】トルコを知るための53章 302.2/オ http://tinyurl.com/89ycgj5 トルコを知るための53のキーワードを、「古代トルコ」「オスマン帝国の興隆」「帝国の改革と社会の変容」「生活と文化、多彩な系譜」など5つのテーマに分けて解説する。 #安城

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著者プロフィール

中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所所長。早稲田大学第一文学部西洋史科卒業後、トルコ政府給費留学生としてアンカラ大学言語・歴史・地理学部ヒッタイト学科に留学。中近東考古学科博士課程修了。留学中からトルコ国内の発掘調査に参加。帰国後、中近東文化センター勤務。1985年よりトルコのカマン・カレホユック遺跡の発掘調査に従事。著作に『鉄を生みだした帝国――ヒッタイト発掘』(日本放送出版協会、1981)、『アナトリア発掘記――カマン・カレホユック遺跡の二十年』(日本放送出版協会、2004)など。

「2012年 『トルコを知るための53章』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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