朝鮮戦争論――忘れられたジェノサイド (世界歴史叢書)

  • 明石書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750339887

作品紹介・あらすじ

アメリカによる第二次世界大戦後の武力干渉のなかで、「最も」破壊的であった朝鮮戦争。この戦争はアメリカが世界の警察官へと変貌するきっかけとなった。アメリカ政界の事情や朝鮮半島の政治状況の経緯を凝縮して語り、「忘れられた戦争」の真実を抉り出す。

感想・レビュー・書評

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  •  訳者曰く、本書は「朝鮮戦争の起源」の一部にその後の政治状況の進展を踏まえて加筆し、幅広い層の読者のためにコンパクトにまとめた一冊、とのことである。本書で大部の「~起源」のエッセンスはつかめるだろうか。
     戦争の発端については、金日成が南侵の支持を取り付けようとして中ソを訪れていたことに触れ、38度線付近で双方からの小競り合いはあったにせよ全面侵攻したのは北だとは書いている。しかし同時に、日本統治期の不平等や抗日・対日協力等が「朝鮮の内戦を引き起こした社会的、政治的な力」であった、「北朝鮮が南を攻撃したのは、アメリカの当時の政策変更によって、日本がその産業経済を復活させ、朝鮮においてかつて占めていた地位を取り戻すことを恐れたから」ともしている。また、戦争前夜には南の李承晩政権側も好戦的であったことも書いている。その結果、「誰がこの戦争を始めたか」に関心を集中させることはあまり意味がない、と主張したいようである。
     また本書では、米国人の朝鮮半島又は南北朝鮮人への無理解や、戦争前又は戦争中の米韓による暴動鎮圧・民間人に対するものも含めた大量殺害に非常に多くの頁を割いている。事実認定含め異論もあるだろうが、米韓国内で本書のような論調がどう受け取られているかを知りたいところである。
     筆者は最終章で、近年の韓国で米韓による当時の残虐行為がしばしば提起されていることを取り上げ、「真理の刃」をもって正義と寛容と和解を究極の目的として「秩序づけ罰する」ことができた、自国の歴史と他国との対立を完全に、慎重に、真正面から分析してきたのは韓国だけ、と述べている。しかしこれはやや過大評価にすぎないか。韓国内でも議論は噴出しているし、結局のところ過去の行為への評価は現在のイデオロギーと完全に無縁ではいられず、「真理」「正義」などとは軽々に言えないのではないかと考える。

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著者プロフィール

1943年生まれ。コロンビア大学で政治学を学び、同大学よりPh.D.取得。シアトルのワシントン大学国際関係学部助教授を経て1987年からシカゴ大学歴史学部教授。2014年現在同大学スウィフト冠教授。代表的な著作はThe Origins of the Korean War, vol. 1, 1981〔『朝鮮戦争の起源 1』明石書店、2012年〕、The Origins of the Korean War, vol. 2, 1990〔『朝鮮戦争の起源 2・上/下』明石書店、2012年〕、Korea: The Unknown War, 1988〔『朝鮮戦争――内戦と干渉』岩波書店、1990年。ジョン・ハリデイとの共著〕、War and Television, 1992〔『戦争とテレビ』みすず書房、2004年〕、Korea's Place in the Sun, 1997〔『現代朝鮮の歴史』明石書店、2003年〕、Parallax Visions, 1999、North Korea: Another Country, 2004〔『北朝鮮とアメリカ――確執の半世紀』明石書店、2004年〕、Dominion from Sea to Sea, 2009, 〔『アメリカ西漸史』東洋書林、2013年〕。

「2014年 『朝鮮戦争論 忘れられたジェノサイド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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