欧米社会の集団妄想とカルト症候群――少年十字軍、千年王国、魔女狩り、KKK、人種主義の生成と連鎖

  • 明石書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750342436

作品紹介・あらすじ

現代の問題とも深く関わる集団妄想やカルトは、過去の欧米諸国において、どのようなものが生まれ、猛威を振るったのか。その生成のメカニズムを、異端狩り、魔女狩り、人種差別ほかの豊富な事例を通史的に展望しながら宗教・社会史的な視点から考察する。

感想・レビュー・書評

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  • 欧米社会において集団的熱狂がどのような悲劇をもたらしてきたかをまとめた良書。現代の日本や世界で起きている差別問題の多くが、集団的熱狂、著者の浜本先生がおっしゃるところの集団妄想とカルト症候群が原因なのかもしれない。

  • 前々から読みたいリストには入っていたんだけど、某事件で興味をもって買った人がいたのか近所の古本屋で安く買えた。で、中世とかヒトラーの話が多いのでそういう人が読んで手元に残さず売ったのもなんとなくわかる(笑)
    一つのトピックを深く扱うより概要をたくさん並べるような構成なので、物足りない気がする。ヒトラー・ユーゲントの章等は「洗脳」という言葉を安易に使っているように感じて好きではなかった。本当にその関係はそこまで一方的なものだったのか、参加者らはもともとどのように思っていて、どう反応していたのかという視点がない。
    あとがきでも現代の人種差別を「洗脳」「カルト」と結び付けて異常性へと隔離しようとしているような記述があるが、差別ってそもそもそんなに異常な反応ではないと思うし、全体的にカルトは異常、おかしなもの、批判しなければいけないものという規範的な前提が強く、内実に迫ろうという姿勢があまりないように思ってちょっと残念だった。

  • 十字軍、魔女狩り、マリアの降臨、KKK、骨相学、ナチスと、歴史の順を追って、カルトと集団妄想を分析、説明する書。
    扱うのは近代までなのが残念。現代のカルトや国家・政治の症例や関係性が読みたかった。

    人種論の嚆矢カンパーの「さまざまな地方と…」は、解剖学や優勢論ではなく、古代ギリシャ人、白人、黒人、猿の描き分けを分析する絵画論だった。後にこの人種論はナチスのホロコーストに行き着く246

    戦後ユネスコは「人種」という概念は存在しないと宣言266

    KKKは当初、道端で人を驚かす「いたずら団」だった。あの衣装もそのため270

    KKKが慈善活動を行っていたという研究が最近されている。火災の黒人家族にギフトしたり、黒人教会の修繕ボランティアをしたり、果ては関東大震災の時、日本人団体に寄付をしたり。しかしそれは非常に小規模で、白人の優位性の誇示が目的だとされる289

    ヒトラーユーゲントは、スポーツを重視した。これは身体能力や団結だけでなく、「攻撃性」を身に付けさせるため。とりわけ人気の「野外ゲーム」は血まみれの掴み合いになる、さながら軍事演習の子ども版303

    エーデルワイス海賊団 ヒトラーユーゲントに反発し、ブント化して彼らを攻撃した少年団307

    1957年から続くドイツの歴史小説シリーズ『兵士』は大戦中のドイツ軍兵士が主人公の疑似ドキュメンタリー。血湧き肉踊る冒険小説で全盛期には一ヶ月50万部売り上げた。が2013年、「ナチズムの橋渡しとなる麻薬」として廃刊に追い込まれた。批判に対し「表現の自由」だと反論して、第三者機関の調査でもそれを認められたが、結局自主廃刊。「表現の自由には限度がある」という現実にぶつかった315

    「プロパガンダは大衆的であるべき。その中で最も頭の悪い者の理解力に合わせるべき」"わが闘争"320

    「大衆は、どうにかお願いいたしますと下手に出て頼まれるよりも、こうしろと命令され、支配されるのを好む」ヒトラー321

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著者プロフィール

1944年香川県生まれ。現在、関西大学名誉教授、ワイマル古典文学研究所、ジーゲン大学留学。ドイツ文化論、比較文化論専攻。
主要著作
『魔女とカルトのドイツ史』(講談社現代新書)、『ナチスと隕石仏像』(集英社新書)、『「笛吹き男」の正体』(筑摩選書)、『図説 ヨーロッパの装飾文様』(河出書房新社)、『現代ドイツを知るための67章』(明石書店、編著)、『ポスト・コロナの文明論』(明石書店)など多数。

「2023年 『ベルリンを知るための52章』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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